(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

 
 
第X章 急性胆嚢炎 -基本的治療-


2. 細菌学的検索と抗菌薬
[重症度別にみた抗菌薬使用例]
軽症例
大腸菌などの腸内細菌の単一菌感染が原因であることが多く,以下の抗菌薬を単剤で与する。 起炎菌が同定されない状態で使用されることが多いため,予想される菌をカバーする感受性を持つ抗菌薬を使用することを原則とする52)
ペニシリン系やセファゾリンは腸内細菌に対し耐性が生じている可能性もあり(レベル5)53),ラクタマーゼ阻害剤との合剤であるタゾバクタム/ピペラシリン(タゾシン®57) やアンピシリン/スルバクタム(ユナシン-S®)論文の使用も推奨される。 タゾバクタム/ピペラシリンは胆嚢壁への移行も良好である36)。 ただし,セフォチアムヘキセチル,タゾシン・ユナシン-Sのいずれも胆嚢炎に対しての保険適応がない。
ただし,腹痛が比較的軽度で,発熱などの炎症所見に乏しく,画像上の変化もわずかであり,胆石疝痛発作と区別がつかないような胆嚢炎症例では,上記のような経口抗菌薬を投与する。 この場合も注射薬同様漫然と長期間投与することは避け,定期的に抗菌薬の効果を検定する。 使用した抗菌薬が無効であれば変更する。
症例によっては抗菌薬を投与せずに経過観察してもよい。
[使用例]
経口ニューキノロン系薬
    レボフロキサシン(クラビット®
    シプロフロキサシン(シプロキサン®
経口セフェム系薬
    セフォチアムヘキセチル(パンスポリンT®
    セフカベンピボキシル(フロモックス®
第一世代セフェム系薬
    セファゾリン(セファメジン®
広域ペニシリン系薬
    アンピシリン(ビクシリン®
    ピペラシリン(ペントシリン®

中等症,重症例(「第IX章/1./2)急性胆嚢炎の重症度判定基準」参照)
中等症例は,第1選択として,上記広域ペニシリン系薬や第二世代セフェム系薬が推奨される。 ただし,急激に重症化する症例もあるため,適宜,重症度判定とともに抗菌薬の効果判定を行い,適切な抗菌薬投与を行うように努めるべきである。
重症例は複合菌・耐性菌感染の可能性が高く(レベル2b®3b)54,55,56),第一選択として,幅広い抗菌スペクトルを持つ第三,四世代セフェム系薬が推奨される。 第一選択薬が無効の場合は第二選択薬としてニューキノロン系薬,カルバペネム系薬が,グラム陰性菌が検出された場合はモノバクタム系薬が選択される。 しかしカルバペネム系薬以外の抗菌薬は,単独では嫌気性菌に対する抗菌力はほとんど期待できず,嫌気性菌にスペクトルを有するクリンダマイシンの併用が推奨される。 一方,メロペネムやイミペネム/シラスタチン,パニペネム/ベタミプロンなどのカルバペネム系薬は嫌気性菌に対する抗菌力も有しており,単独投与が可能である。
第三,四世代セフェム系薬やカルバペネム系薬の頻用は耐性菌の発生を招くリスクが高いことに注意し,長期にわたり漫然と投与することは避けるべきである。
[使用例]
中等症第一選択薬
    第二世代セフェム系薬
        セフメタゾール(セフメタゾン®
        フロモキセフ(フルマリン®
        セフォチアム(パンスポリン®
重症第一選択薬
    第三,四世代セフェム系薬
        セフォペラゾン/スルバクタム(スルペラゾン®
        セフトリアキソン(ロセフィン®
        セフタジジム(モダシン®
        セフォゾプラン(ファーストシン®
        セフピロム(ブロアクト®
グラム陰性菌が検出された場合
    モノバクタム系薬
        アズトレオナム(アザクタム®
重症第二選択薬
    ニューキノロン系薬
        シプロフロキサシン(シプロキサン®
        パズフロキサシン(パシル®
    嫌気性菌が検出あるいは併存が予想される場合
        上記のうち一剤+クリンダマイシン(ダラシン-S®
    カルバペネム系薬
        メロペネム(メロペン®
        イミペネム/シラスタチン(チエナム®
        パニペネム/ベタミプロン(カルベニン®



 

 
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