(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン

 
 
第V章 急性胆管炎 -診断基準と重症度判定-


1. 診断基準,重症度診断と搬送基準
症 例:入院時経過中にショックとなった急性胆管炎

既往歴 急性心筋梗塞
主 訴 右季肋下部痛
現病歴 2001年2月2日朝食後から右季肋下部痛が出現。 徐々に痛みが増強してきたため,同日21時当院救急外来を受診,発熱はなかった。
理学所見 結膜に軽度の黄疸を認めるも,貧血はなかった。 胸部;異常なし。腹部は平坦,軟で右季肋下部に圧痛を認めるも,腫瘤や肝も触知しなかった。
検査成績
白血球数 8,700/mm3 AST 402IU/l
赤血球数 403×104/mm3 ALT 308IU/l
Hb 12.8g/dl 総ビリルビン 3.9mg/dl
Ht 36.3% ALP 432IU/l
血小板数 11.3×104/mm3 LDH 1,041IU/l
TP 6.0g/dl    
クレアチニン 0.5mg/dl Alb 3.6g/dl
尿素窒素 17.5mg/dl CRP 1.62mg/dl

本例は,入院時においては重症急性胆管炎とは診断されなかった。
翌朝(12h後),腹痛は軽快し,発熱もみられず,絶食と補液,抗生剤投与で保存的治療により経過観察となった。

検査成績
白血球数 12,100/mm3 AST 245IU/l
赤血球数 384×104/mm3 ALT 270IU/l
Hb 12.2g/dl 総ビリルビン 5.0mg/dl
Ht 36.3% ALP 384IU/l
血小板数 8.0×104 /mm3 LDH 1,041IU/l

しかし,同日19時頃(来院24h後)に再び腹痛が増強し,37.6℃ の発熱をきたし,血圧は68/58mmHgと低下してショックとなり緊急にENBDが施行された。
本例は,ENBDによりショック状態,DICから回復,約10日後にはESTを行って原因疾患である総胆管結石を破砕・摘出した。

本症例は,来院時は重症ではなかったが,約24時間後に急変し重症化した。  そこで今回,全身の臓器不全に陥っているような重症ではないが重症化する,危険性がある胆管炎を「中等症」と定義した。


緊急内視鏡的ドレナージ(写真1,2)

写真1 乳頭から膿汁が排出されている。

写真2 引き続いてENBDを行った。


胆管炎消退後の総胆管結石除去の施行(写真3,4)

写真3 結石を破砕して摘出した。

写真4 総胆管結石は消失し、治療は終了した。

 

 
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