(旧版)科学的根拠に基づく急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン
第V章 急性胆管炎 -診断基準と重症度判定-
1. 診断基準,重症度診断と搬送基準
症 例:入院時経過中にショックとなった急性胆管炎
既往歴 | : | 急性心筋梗塞 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
主 訴 | : | 右季肋下部痛 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
現病歴 | : | 2001年2月2日朝食後から右季肋下部痛が出現。 徐々に痛みが増強してきたため,同日21時当院救急外来を受診,発熱はなかった。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
理学所見 | : | 結膜に軽度の黄疸を認めるも,貧血はなかった。 胸部;異常なし。腹部は平坦,軟で右季肋下部に圧痛を認めるも,腫瘤や肝も触知しなかった。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
検査成績 | : |
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本例は,入院時においては重症急性胆管炎とは診断されなかった。 翌朝(12h後),腹痛は軽快し,発熱もみられず,絶食と補液,抗生剤投与で保存的治療により経過観察となった。 |
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検査成績 | : |
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しかし,同日19時頃(来院24h後)に再び腹痛が増強し,37.6℃ の発熱をきたし,血圧は68/58mmHgと低下してショックとなり緊急にENBDが施行された。 本例は,ENBDによりショック状態,DICから回復,約10日後にはESTを行って原因疾患である総胆管結石を破砕・摘出した。 |
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本症例は,来院時は重症ではなかったが,約24時間後に急変し重症化した。 そこで今回,全身の臓器不全に陥っているような重症ではないが重症化する,危険性がある胆管炎を「中等症」と定義した。 |
緊急内視鏡的ドレナージ(写真1,2) | |
![]() 写真1 乳頭から膿汁が排出されている。 |
![]() 写真2 引き続いてENBDを行った。 |
胆管炎消退後の総胆管結石除去の施行(写真3,4) | |
![]() 写真3 結石を破砕して摘出した。 |
![]() 写真4 総胆管結石は消失し、治療は終了した。 |