(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第11章 二次性高血圧


まとめ

【腎実質性高血圧】
1) 腎実質性疾患では末期腎不全を予防することが重要であり、早期からの厳重な血圧管理が必要である。
2) 糖尿病性腎症、非糖尿病性腎症に対し、ARBまたはACE阻害薬は蛋白尿を軽減し、腎保護作用が期待できるため、早期より使用すべきである。
3) 厳格な血圧管理には通常多剤併用が必要であり、Ca拮抗薬、利尿薬、β遮断薬、α遮断薬などの降圧薬を必要に応じて併用していく。
4) 多発性嚢胞腎に対してもARBやACE阻害薬が有効である。

【腎血管性高血圧】
1) 腹部血管雑音、腎の左右差、若年者や治療抵抗性、急激に増悪する高血圧などの臨床症状を有する症例では腎血管性高血圧を疑う。
2) スクリーニング検査はカプトプリル試験と腎エコーが有用である。次いで腎シンチ・レノグラム、造影CT、造影MRI検査などで腎動脈狭窄の評価を行い、動脈造影により最終診断を行う。
3) 血行再建が第一義的治療であり、経皮経管的腎動脈形成術(PTRA)をまず試みる。PTRAは線維筋性異形成では有効性が高い。
4) 粥状硬化性狭窄では、ステントを併用しても降圧率に限界があるが、腎機能を改善する可能性がある。次いで、バイパス術や自家腎移植などの外科的血行再建を行う。
5) 薬物療法ではβ遮断薬やARB、ACE阻害薬などのRA系を抑制する降圧薬を選択する。

【内分泌性高血圧】
1) 内分泌性高血圧を疑ったら専門医に紹介する。
2) 副腎皮質腺腫による原発性アルドステロン症やクッシング症候群、下垂体腺腫によるACTH依存性クッシング症候群や異所性ACTH産生腫瘍、副腎髄質由来の褐色細胞腫などでは、腫瘍摘出により高血圧の多くは治癒または軽快する。同様に、原発性副甲状腺機能亢進症の病的副甲状腺、先端肥大症の下垂体腫瘍の場合も腫瘍の摘除により多くの高血圧は改善する。
3) 両側副腎皮質過形成による特発性アルドステロン症では手術適応がなく、スピロノラクトンやCa拮抗薬を中心に降圧薬で治療する。
4) 褐色細胞腫の腫瘍摘出前にはα遮断薬やβ遮断薬を用いてカテコラミン過剰による病態を是正する。
5) 甲状腺機能亢進症および低下症のいずれでも高血圧を合併する。治療により甲状腺機能が正常化すると高血圧はコントロ一ルされる。

【薬剤誘発性高血圧】
1) 非ステロイド性抗炎症薬は血圧を上昇させ、利尿薬、β遮断薬、ACE阻害薬、α遮断薬の降圧効果を減弱させる。その影響は高齢者で著しい傾向がみられる。
2) 甘草の主要薬効成分のグリチルリチンの大量使用で低K血症を伴う高血圧をきたすことがある。中止が困難であれば、アルドステロン拮抗薬を用いる。
3) 糖質コルチコイドも大量で血圧上昇をきたす。服用を中止できなければ、Ca拮抗薬、利尿薬、ARBなどで降圧を図る。
4) シクロスポリン、エリスロポエチン、交感神経刺激作用を有する薬物で血圧上昇をきたす可能性がある。これらの薬剤使用で血圧上昇を認めれば、薬剤による誘発を鑑別する必要がある。
5) β遮断薬とメチルドパ、クロニジン併用による奇異性血圧上昇が知られている。なおクロニジン中断による血圧上昇が報告されている。クロニジンは徐々に減量し、中止することが望ましい。
 
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