(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第11章 二次性高血圧 |
6)薬剤誘発性高血圧
b 甘草(グリチルリチン)
甘草は肝疾患治療薬、消化器疾患治療薬、多数の漢方薬に含まれる。その薬理作用の大部分はグリチルリチンによる内因性ステロイドの作用の増強、グリチルリチン自身のステロイド作用による。内因性ステロイドの作用の増強に関しては、グリチルリチンが11β-HSD(水酸化ステロイド脱水素酵素)を阻害し、コルチゾールよりコルチゾンへの代謝を阻害し、コルチゾールの半減期を延長させる。コルチゾールはアルドステロン受容体にアルドステロンと同様に親和性をもち結合し、Naおよび水を保留させ、K低下をきたす(偽性アルドステロン症)。甘草50〜200g/日摂取(2〜4週)により収縮期血圧は3.1〜14.4mmHg上昇した495)。大量、長期にグリチルリチンを服用しなければ、高血圧が問題となることは少ない。なお、本態性高血圧患者では甘草による血圧上昇反応は正常血圧者より大であったとされている496)。
診断は、高血圧と同時に低K血症を認め、低レニン活性、血漿アルドステロンが低値であれば(偽性アルドステロン症)、本症を疑う。臨床的には数週間(最大4カ月)の甘草の中断で改善する。中止が困難であれば、アルドステロン拮抗薬を用いる。