(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第7章 他疾患を合併する高血圧 |
2)高脂血症
高コレステロール血症と高血圧の合併では、動脈硬化のリスクが増大することが本邦のJ-LIT研究313)からも明らかであるが、そのような患者には、両疾患に対する積極的な管理が必要である。ASCOT-LLA314)など最近の臨床試験の結果、高血圧合併高コレステロール血症患者では、積極的な血清コレステロール低下療法は虚血性心疾患や脳卒中の発生や再発を予防することができるとされており、本邦における高脂血症診療ガイドラインにおいても高血圧など危険因子合併時のコレステロール管理をより厳しくすることが提唱されている。血清コレステロールレベルと血圧がともに上昇した患者に対しては、第一に生活習慣の修正、すなわち肥満の是正、飽和脂肪酸、コレステロール、アルコールの摂取抑制、運動量の増加を強く指導する。一般療法で高コレステロール血症が改善しないときには、HMG-CoA還元酵素阻害薬を中心に薬物療法を併用する。高血圧と高コレステロール血症を有する患者については生活習慣修正と高脂血症治療薬を用いて、高コレステロール血症を適切な治療目的に到達させる。高中性脂肪血症や低HDLコレステロール血症を合併する場合には、インスリン抵抗性-メタボリックシンドロームの存在を考慮すべきであり、その場合の高脂血症には、生活習慣の修正とフィブラート系薬剤などで改善を図る。
高脂血症患者における降圧薬の選択に関しては、各種降圧薬の脂質代謝に及ぼす影響を考慮しなければならない。高用量のサイアザイド系利尿薬やループ利尿薬は、血清総コレステロール、中性脂肪およびLDLコレステロールを上昇させることが知られているが、低用量のサイアザイド系利尿薬ではこれら脂質の上昇作用は明らかではない。β遮断薬では、血清中性脂肪上昇作用や、HDLコレステロール低下作用が指摘されている。α遮断薬は、血清コレステロールを減少させ、HDLコレステロールを上昇させる。ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬および中枢性交感神経抑制薬は、血清脂質に影響しない。
高脂血症を合併する高血圧患者の降圧薬選択には、脂質代謝の面からはα遮断薬やACE阻害薬、Ca拮抗薬、ARBのような脂質代謝改善効果を有するもの、あるいは増悪作用のない薬剤が好ましい。