(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第4章 生活習慣の修正


2)野菜・果物の積極的摂取およびコレステロール・飽和脂肪酸の摂取制限

最近、アメリカでDASH23,110)という低脂肪乳製品(飽和脂肪酸とコレステロールが少なく、Caが多い)ならびに野菜・果物の多い(K・Mg・食物繊維の多い)食事摂取の臨床試験が行われ、中等度の高血圧患者で11.4/5.5mmHgの有意の降圧が報告された。この成績から、弱い降圧効果を有するK138)、Mg139)、Ca140)を組み合わせ、脂肪制限と同時に行うと降圧が期待できることが示唆され、複合的な食事療法の重要性が証明された。ただし、重篤な腎障害を伴うものでは、腎K排泄の低下のために高K血症をきたす可能性があるので、野菜・果物の積極的摂取は推奨されない。また、果物は糖分が多く、摂取カロリーの増加につながることがあるので、糖尿病患者では果物の積極的摂取は推奨されない。DASH食とINTERMAP(INTERnational study of Macro- and micro-nutrients And blood Pressure)より算出した40〜59歳の日本人男女の代表的食事の栄養成分141)を比較すると(表4-2)、日本食は確かに欧米の食事に比べて脂肪摂取が全体として少なく炭水化物が多く、DASH食にやや近い。しかし、食物繊維、K、Mg、Caは欧米の食事より多いもののDASH食よりはかなり少なく、Naの摂取が欧米の1.5倍とかなり多い。一番問題なのはコレステロール摂取で、これは欧米よりも(この調査では特に男性でかなり)多い。本邦における栄養素摂取の推移をみると脂肪、特に動物性脂肪と動物性蛋白質の摂取が戦後著明に増加し、炭水化物の摂取はやや低下している。特に小児における脂肪摂取の増加は問題である。したがって、本邦においては伝統的な日本食にたちかえるとともに、コレステロールの多い卵などを控え、低脂肪乳製品を補うことによりDASH食に近い食事が達成できるものと考えられる。
なお、高脂血症は虚血性心疾患の主要な危険因子の一つであるので、高血圧患者では高脂血症の合併を防ぐ必要があるという意味でも、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取は控えるべきである。


表4-2 DASH食と日本食の比較
栄養組成 コントロール食
(平均的アメリカ食)1
野菜/果物食1 DASH食1 日本の代表的な食事2
男性 女性
脂肪(%) 37 37 27 23.7 26.1
  飽和脂肪酸 16 16 6 6.1 7.1
  単価不飽和脂肪酸 13 13 13 8.6 9.4
  多価不飽和脂肪酸 8 8 8 6.2 6.6
炭水化物(%) 48 48 55 52.3 56.2
蛋白質(%) 15 15 18 15.8 16.1
コレステロール(mg/日) 300 300 150 446 359
食物繊維(g/日) 9 31 31 15.5 15.8
カリウム(mg/日) 1700 4700 4700 1920 1891
マグネシウム(mg/日) 165 500 500 288 250
カルシウム(mg/日) 450 450 1240 605 607
全ナトリウム(mg/日) 3000 3000 3000 4843 4278
(エネルギーレベル(kcal))3 (2100) (2100) (2100) (2278) (1798)
1文献10。2文献141。3エネルギーレベルはDASH食では2100kcalでまとめられているが、INTERMAP調査ではエネルギー摂取量が(特に女性で大きく)異なつており、その上での計算である。
 
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