(旧版)高血圧治療ガイドライン2004
第2章 血圧測定と臨床評価 |
3)検査と診断
d 高血圧性臓器障害の診断
種々の検査により高血圧患者の標的臓器障害と末梢動脈疾患が診断され、無症候の場合でも疾患発症のリスクを推定できる場合がある。
1)脳:脳MRIもしくはCTで検出される無症候性脳血管障害は、脳卒中発症の強いリスクであることが確認されている。MRIを用いて脳血管を無侵襲的に描出する(MRA)ことも可能である。高齢者の高血圧のリスク層別化に有用である86)。
2)心臓:高血圧による心臓の負荷の定量的評価は心電図よりも心エコーが優れている。本法は心重量とともに心機能の評価も可能であり、高血圧性心不全の診断に役立つ。収縮期の指標が低下していなくても拡張機能障害による心不全も、特に老人の高血圧性心疾患には多い87)。
3)腎臓:クレアチニンクリアランス(血清クレアチニンから算定:「第6章/3)/a)腎機能と血圧患,表6-2」参照)ならびに微量アルブミン尿(24時間アルブミン排泄、アルブミン/クレアチニン比)は心血管疾患発症の強力な予知因子であり、特に糖尿病や腎疾患が存在する場合は必須である88)。
4)血管:頸動脈エコーでの内膜-中膜肥厚(IMT)やプラーク所見は、脳血管疾患に限らず、糖尿病など高リスク患者の予後の判定に有用である89)。上下肢血圧比(Ankle-Brachial Pressure Index;ABI)、動脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity;PWV)、Augmentation Indexなどの動脈波解析は、動脈コンプライアンスの優れた指標で、収縮期血圧・脈圧とともにその有用性が認識されつつある90)。ほかに種々の血管内皮機能検査が注目されているが、現時点では、メタボリックシンドロームや他に危険因子のない心血管疾患患者のリスクの同定に高感度CRPの有用性が最も研究されている91)。