(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
第2章 血圧測定と臨床評価


2)血圧値の分類と危険因子の評価

c 予後評価のためのリスクの層別化

血圧値のほかに、血圧以外の危険因子(喫煙、糖尿病、高コレステロール血症などの脂質代謝異常、肥満、尿中微量アルブミン、高齢、若年発症の心血管病の家族歴など)、高血圧性臓器障害、心血管病の有無を評価する。また、低、中等リスクを有するものでも追跡期間の延長により脳・心血管疾患の危険度が高くなることから、高血圧の罹病期間にも注意せねばならない76)。危険因子の中でも糖尿病を伴う場合は特にリスクが高く、積極的な降圧治療がJNC729)、2003 ESH-ESCガイドライン43)で推奨されている。久山町研究においても糖尿病が脳梗塞および虚血性心疾患の主要な危険因子であることが示されており77)、また、本邦では、近年、糖尿病性腎症から慢性腎不全に至る例も著増している78)。糖尿病を合併する高血圧患者では、厳重な降圧治療で予後の改善することが示されている79,80,81)。また、糖尿病性腎症を含めた腎障害の進展抑制に高血圧の治療が重要であることも示されている82,83,84)ので、糖尿病や腎障害を合併する場合には特に積極的な高血圧の管理が重要である。1999 WHO/ISHガイドライン44)では、Framingham研究に基づく45〜80歳(平均60歳)の追跡期間10年間での心血管病発症の絶対リスクに基づいて、高血圧を4段階のリスクに分類している(低、中、高、超高リスク)。またJNC7ではpopulation strategyの立場をとり、血圧レベルに最も注目しているが、過去のJNC VIでは高血圧患者を危険因子に応じて3群に層別化して治療方針を決定している。一方、1999 WHO/ISHガイドラインと2003 ESH-ESCガイドラインでは危険因子に応じて4群に層別化しているが、治療方針に関しては高リスクと超高リスクは同じ扱いとなっている。本邦においては、population strategyとともにhigh risk strategyも極めて有効と考えられることから、本ガイドラインにおいては高血圧患者を表2-4のごとく血圧分類、主要な危険因子(糖尿病およびその他の危険因子)、高血圧性臓器障害、心血管病の有無により低リスク、中等リスク、高リスクの3群に層別化する。なお本ガイドラインでは、130〜139/80〜89mmHgの血圧値を有するものにおいても、糖尿病、慢性腎疾患のある場合は降圧治療の開始を考慮し、至適血圧レベルを維持することを推奨する。


表2-4 高血圧患者のリスクの層別化
血圧以外のリスク要因 血圧分類
軽症高血圧
140〜159/90〜99mmHg
中等症高血圧
160〜179/100〜109mmHg
重症高血圧
≧180/≧110mmHg
危険因子なし 低リスク 中等リスク 高リスク
糖尿病以外の1〜2個の危険因子あり 中等リスク 中等リスク 高リスク
糖尿病、臓器障害、心血管病、3個以上の危険因子、のいずれかがある。 高リスク 高リスク 高リスク
 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す