(旧版)高血圧治療ガイドライン2004

 
刊行によせて

 
高血圧は日常の診療で最も多く遭遇する病気であり、現在約3500万人もいると言われ、国民の4人に1人が高血圧に罹患していることになる。いわゆる“common disease”の一つであり、生活習慣の歪がその発症に大きく関与している。また、加齢によって増加する特徴がある。現在、わが国は生活習慣の欧米化が進み、また世界に類を見ないスピードで高齢化社会を迎えようとしていることから、高血圧の対策と予防は益々重要な今日的課題となっている。
日常診療において医療の客観性と質の向上を目的として、Evidence-based Medicineの重要性が叫ばれている。Evidence-based Medicineの実践にはガイドラインに基づいた診療が必要となることから、日本高血圧学会では2000年に高血圧治療ガイドライン(JSH2000)を発表した。これによって、それまで治療基準が確立していなかった高血圧治療の指針がわが国の診療の場に広く浸透し、多くの実地医家に利用され、高血圧治療の重要性を啓発することができた。しかし、その後、降圧薬を用いた大規模臨床試験が多数報告され、それに基づいて2003年には、米国のガイドライン(米国合同委員会指針第7次改訂版、JNC7)が、また新しい欧州のガイドライン、欧州高血圧学会-欧州心臓病学会(ESH-ESC)ガイドラインが相次いで発表された。このような状況において日本高血圧学会では、JSH2000を改訂することを計画し、ガイドライン作成委員会(委員長 猿田享男理事)を組織して検討してきた。
高血圧という病気は一つであるが、各国のガイドラインは異なる。人種、生活習慣、医療経済事情、医療保険制度の違いによって、各国のガイドラインが異なるのは当然である。本ガイドラインの作成にあたって、日本人特有の生活習慣と心血管病に照準を合わせた治療を心がけ、医療経済にも配慮した。できるだけ日本人を対象とした臨床試験を入れることにしたが、実際にはわが国の大規模臨床試験はいまだ少なく、主として欧米で行われた試験結果に頼らざるを得なかった。しかし現在、わが国でも臨床試験が着実に進行しているので、次回改訂においてはその結果が活かされるものと思う。
猿田委員長をはじめガイドライン作成委員の先生方の並々ならぬ努力によって、エビデンスに基づいた現時点におけるわが国のスタンダードな治療指針を作成することができた。さらに、2004年10月に開催された第27回日本高血圧学会のシンポジウム「2004年高血圧治療ガイドライン」において発表し、その際会員から寄せられた意見も参考にさせていただいたことによって、実地診療に役立つガイドラインになったと自負している。しかし、ガイドラインとは絶対的な原理ではなく、これに準じて診療すれば大きな間違いはないという性質のものであることを認識したうえで、個々の症例には種々のファクターを考慮してきめ細かい診療を行っていただきたい。本ガイドラインが日常診療における高血圧治療と予防医学の向上に役立てば幸いである。

日本高血圧学会
理事長 藤田敏郎


 

 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す