(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第5章 予後
■ Clinical Question 5
再手術率と再発率はどの程度か
要約
【Grade B】
ヘルニア摘出術後の再手術率は5年後で4〜15%である.
【Grade C】
同一椎間での再手術例を再発ヘルニアとすると,再発率は術後1年で約1%,5年で約5%である.
背景・目的
腰椎椎間板ヘルニア摘出手術は根治的な治療法ではないため,再発の可能性を常に有している.再発ヘルニアの頻度や再手術にいたる頻度を知ることは,術前の情報として重要である.
解説
腰椎椎間板ヘルニアの再発を厳密に定義するとすれば,手術後ないしは保存経過中に症状の改善と画像上のヘルニアの消失ないしは縮小が確認された後で症状が再発し,同一椎間に新たな椎間板の突出が画像で確認されるか,再手術でヘルニア塊が確認できた場合ということになる.しかし,この定義どおりの報告は少なく,多くは再手術を行った症例で同一椎間罹患であったかどうかが記載されているにすぎない.
他の再手術の理由として脊柱管狭窄の発生,神経根周囲の癒着や線維化など多様であり,これらすべてを含めた再手術例の長期的アウトカムは不良とされている[(DF00098,EV level 5),(D2F01932,EV level 5),(DF01343,EV level 7),(D2F00612,EV level 5)].一方,同一椎間発生の真の再発ヘルニアに対する手術成績は初回手術と同等とする報告が多い[(DF00253,EV level 7),(DF00803,EV level 6),(D2F01964,EV level 6),(D2F00815,EV level 6)].1988〜1999年に手術された163例の術後8年間の長期経過観察(DF00098,EV level 5)によれば再手術は39例(23.9%)で施行されており,これらのうち,術中に再発ヘルニアを確認できた真の再発ヘルニアは14例(8.6%)であり,確認できなかった症例より成績良好であった.再手術の術前診断では再発ヘルニアの有無を見極めることが重要となる.
1966年から1991年までに発刊された腰椎椎間板ヘルニアに関連した論文(症例数30以上,平均年齢30歳以上,follow-up率75%以上,最短follow-up期間1年以上,平均follow-up期間2年以上)のシステマティックレビュー(DF01998,EV level 1)によれば,腰椎椎間板ヘルニア摘出術後の平均6年前後で4〜14%が再手術を要したと報告している.しかし,渉猟された報告の多くは症例数が少なく経過観察期間の短いコホートであり,また再手術までの平均期間が述べられているにすぎない.
そのためlife table formatに基づく以下の報告は意義が大きい.再手術率に関するICD(international classification of diseases)などの患者登録制度を利用した調査は複数報告されている.カナダの調査では術後4年で9.4%(D2F02302,EV level 5),米国ワシントン州の調査では術後5年で15%(D2F02303,EV level 5),65歳以上を対象とする米国Medicareの調査では4年後で10.2%(D2F02301,EV level 5),スウェーデンの調査では1年後で5%,10年後で10%(D2F00822,EV level 5),フィンランドの調査では9年後で18.9%であったと報告している(D2F02304,EV level 5).これらの患者登録制度の調査は手術件数に関しては正確であるが,術前病名としてのヘルニアの定義がなく,また再手術の理由が不明であり,さらには1990年代以降増加しつつある日帰り手術が対象に含まれていないことが調査の限界となっている.
ミネソタ州の1地域で1950年から30年間のヘルニア摘出術の大規模住民調査では術中にヘルニア塊が確認された症例を検証している(D2F02300,EV level 5).801例にヘルニア摘出術が施行されており,同一高位の再発と新規他椎間発生ヘルニアを含めた再手術率は術後5年で5%,10年で7%,15年と20年ではともに8%あった.この頻度は非手術例で新規に発生するリスクの10倍と指摘している.しかしnegative disc explorationが12%存在しており,診断精度は現代とは大きく異なっている.
1983〜1992年に同一施設で手術された1,320例の術後1年以内の再発の後ろ向きコホート研究(D2F00815,EV level 6)では再発は14例(1%)であり,すべてが初回と同一高位であり,8例は前回と異なる方向に発生していた.また一施設のコホート調査ではあるが初回手術と同一高位の発生を再発ヘルニアと定義し再発率を求めた報告(D2F00817,EV level 5)では,1990年から10年間に顕微鏡視下椎間板摘出術が行われた患者993例で経過年数ごとに再手術率が上昇し,術後1年で1.1%,5年で5.0%,8年で7.9%であり,life table formatに基づく術後10年での再発率は7.9%であった.これらの報告では人口ベースではなく研究施設での手術・再手術例に限定した解析であるため,他の施設で再手術された症例が計上されておらず,実際の再発率はこの数値を上回るものと考えられる.
他の再手術の理由として脊柱管狭窄の発生,神経根周囲の癒着や線維化など多様であり,これらすべてを含めた再手術例の長期的アウトカムは不良とされている[(DF00098,EV level 5),(D2F01932,EV level 5),(DF01343,EV level 7),(D2F00612,EV level 5)].一方,同一椎間発生の真の再発ヘルニアに対する手術成績は初回手術と同等とする報告が多い[(DF00253,EV level 7),(DF00803,EV level 6),(D2F01964,EV level 6),(D2F00815,EV level 6)].1988〜1999年に手術された163例の術後8年間の長期経過観察(DF00098,EV level 5)によれば再手術は39例(23.9%)で施行されており,これらのうち,術中に再発ヘルニアを確認できた真の再発ヘルニアは14例(8.6%)であり,確認できなかった症例より成績良好であった.再手術の術前診断では再発ヘルニアの有無を見極めることが重要となる.
1966年から1991年までに発刊された腰椎椎間板ヘルニアに関連した論文(症例数30以上,平均年齢30歳以上,follow-up率75%以上,最短follow-up期間1年以上,平均follow-up期間2年以上)のシステマティックレビュー(DF01998,EV level 1)によれば,腰椎椎間板ヘルニア摘出術後の平均6年前後で4〜14%が再手術を要したと報告している.しかし,渉猟された報告の多くは症例数が少なく経過観察期間の短いコホートであり,また再手術までの平均期間が述べられているにすぎない.
そのためlife table formatに基づく以下の報告は意義が大きい.再手術率に関するICD(international classification of diseases)などの患者登録制度を利用した調査は複数報告されている.カナダの調査では術後4年で9.4%(D2F02302,EV level 5),米国ワシントン州の調査では術後5年で15%(D2F02303,EV level 5),65歳以上を対象とする米国Medicareの調査では4年後で10.2%(D2F02301,EV level 5),スウェーデンの調査では1年後で5%,10年後で10%(D2F00822,EV level 5),フィンランドの調査では9年後で18.9%であったと報告している(D2F02304,EV level 5).これらの患者登録制度の調査は手術件数に関しては正確であるが,術前病名としてのヘルニアの定義がなく,また再手術の理由が不明であり,さらには1990年代以降増加しつつある日帰り手術が対象に含まれていないことが調査の限界となっている.
ミネソタ州の1地域で1950年から30年間のヘルニア摘出術の大規模住民調査では術中にヘルニア塊が確認された症例を検証している(D2F02300,EV level 5).801例にヘルニア摘出術が施行されており,同一高位の再発と新規他椎間発生ヘルニアを含めた再手術率は術後5年で5%,10年で7%,15年と20年ではともに8%あった.この頻度は非手術例で新規に発生するリスクの10倍と指摘している.しかしnegative disc explorationが12%存在しており,診断精度は現代とは大きく異なっている.
1983〜1992年に同一施設で手術された1,320例の術後1年以内の再発の後ろ向きコホート研究(D2F00815,EV level 6)では再発は14例(1%)であり,すべてが初回と同一高位であり,8例は前回と異なる方向に発生していた.また一施設のコホート調査ではあるが初回手術と同一高位の発生を再発ヘルニアと定義し再発率を求めた報告(D2F00817,EV level 5)では,1990年から10年間に顕微鏡視下椎間板摘出術が行われた患者993例で経過年数ごとに再手術率が上昇し,術後1年で1.1%,5年で5.0%,8年で7.9%であり,life table formatに基づく術後10年での再発率は7.9%であった.これらの報告では人口ベースではなく研究施設での手術・再手術例に限定した解析であるため,他の施設で再手術された症例が計上されておらず,実際の再発率はこの数値を上回るものと考えられる.
文献