(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第4章 治療
■ Clinical Question 12
腰椎椎間板ヘルニア摘出術における閉創前の硬膜外へのモルヒネの投与は有効か
要約
【Grade B】
閉創前の硬膜外腔へのモルヒネ投与は,術後鎮痛に効果がある.
背景・目的
腰椎椎間板ヘルニア後方手術における術後早期離床,早期社会復帰のために,術後の疼痛緩和や神経根刺激症状緩和対策は重要である.その方法の1つとしてモルヒネの投与が行われているが,その効果と副作用についてはいまだ経験が少なく,標準的な使用法や注意点を明確にする必要がある.
解説
閉創前の硬膜外腔へのモルヒネの投与(10mgあるいは5mg)は術当日の鎮痛薬の使用を著しく減少させたが,術当日の自排尿率は対照群で有意に高かった.モルヒネによる術後疼痛の緩和は良好であり,10mg投与群では術後睡眠障害の緩和にも有効であった(DF01296,EV level 4).モルヒネ5mg+フェンタニル0.1mg,あるいはモルヒネ5mg+ドロペリドール2.5mgの硬膜外投与が対照群の生理食塩水投与群に比べて,術後の疼痛抑制効果が顕著であったと報告されている.フェンタニルの鎮痛に関する相乗効果はなく,ドロペリドールによるモルヒネの副作用である嘔気に対する抑制効果はみられなかった(DF01163,EV level 4).生理食塩水注入を対照群としたcontrolled clinical trialにおいても,硬膜外へのモルヒネ投与により長い術後無痛期間が得られ,鎮痛薬の使用が有意に少量であった(DF02231,EV level 5).
文献