(旧版)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン (改訂第2版)
第4章 治療
■ Clinical Question 8
腰椎椎間板ヘルニアにおける馬尾障害では緊急手術が必要か
推奨
【Grade A】
腰椎椎間板ヘルニアに伴う重症の馬尾症候群では,早期に手術を行うことが望ましい.
背景・目的
馬尾障害が出現した腰椎椎間板ヘルニアの予後は不良とされ,馬尾障害発生時の治療方針決定の際には時間的要素が重要と考えられる.
解説
腰椎椎間板ヘルニアの馬尾症候群はその69%が急性発症であり,排尿障害,直腸障害の予後不良因子の1つは手術までの時間であると考えられている.馬尾症候群発症から48時間以後の手術では,それ以前の手術例に比べ感覚・運動障害や排尿障害はより多い頻度で残存し,48時間以内と以後では膀胱直腸障害,下肢感覚障害,運動障害の回復に有意差がみられたとの報告がある(DF00498,EV level 1).また,14例の手術例の検討では,術後排尿障害のない患者10例中7例が発症後48時間以内に手術が施行され,排尿障害が残存する4例はすべて発症後48時間以後での手術例であったことを報告している(DF02063,EV level 5).
一方で,手術例33例の馬尾障害例の前向き研究では,手術までの期間が発症後24時間以内,24〜48時間,48時間以上の3群間に成績の有意差はなく,手術時の排尿障害の重症度が膀胱機能の回復に関わる因子であることが示されている(D2F00649,EV level 5).また,発症後48時間以内の手術例31例の馬尾障害例(発症から1.1〜3.3日で手術)の検討では,90%の症例で術後正常な運動機能に改善し,膀胱直腸障害の改善はそれに比べやや不良であったことから,麻痺発生後早期の手術を推奨したが,1.1〜3.3日の間での結果には有意差が認められず,6時間以内に改善傾向のある例では手術は避けるべきとも述べている(DF03521,EV level 6).
腰椎椎間板ヘルニアに伴う重症の馬尾症候群では,可及的すみやかに手術を行うことが望まれるが,海外の文献上も馬尾障害に対する手術のタイミングに関しては一定の見解が得られておらず,わが国の医療の現状においても夜間や週末に緊急検査や手術が行える施設は限られており,それぞれの医療現場の置かれた環境のなかで最良の方法を選択すべきであろう.
一方で,手術例33例の馬尾障害例の前向き研究では,手術までの期間が発症後24時間以内,24〜48時間,48時間以上の3群間に成績の有意差はなく,手術時の排尿障害の重症度が膀胱機能の回復に関わる因子であることが示されている(D2F00649,EV level 5).また,発症後48時間以内の手術例31例の馬尾障害例(発症から1.1〜3.3日で手術)の検討では,90%の症例で術後正常な運動機能に改善し,膀胱直腸障害の改善はそれに比べやや不良であったことから,麻痺発生後早期の手術を推奨したが,1.1〜3.3日の間での結果には有意差が認められず,6時間以内に改善傾向のある例では手術は避けるべきとも述べている(DF03521,EV level 6).
腰椎椎間板ヘルニアに伴う重症の馬尾症候群では,可及的すみやかに手術を行うことが望まれるが,海外の文献上も馬尾障害に対する手術のタイミングに関しては一定の見解が得られておらず,わが国の医療の現状においても夜間や週末に緊急検査や手術が行える施設は限られており,それぞれの医療現場の置かれた環境のなかで最良の方法を選択すべきであろう.
文献