(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第9章 大腿骨頚部/転子部骨折のリハビリテーション
■ Clinical Question 2
リハビリテーションにおけるクリニカルパスの意義
推奨
【Grade B】
クリニカルパスは受傷前ADLが高い症例に対しては入院期間の短縮と術後合併症の防止に有効である.
解説
クリニカルパスとは,治療の標準化であり,リハビリテーションに関しては早期リハビリテーションのゴール設定,術後24時間以内の運動療法開始,身体自立性訓練の強化,退院に向けての詳細なプランニングなどを指す.
これらは各医療機関ごとに独自のクリニカルパスが作成されて実施されていることが多い.
クリニカルパスに基づいて全症例に加速的リハビリテーションを行っても,有効ではなかったとする,中等度レベルのエビデンスがあり,加速的リハビリテーションは全症例に行うことは勧めない.
これらは各医療機関ごとに独自のクリニカルパスが作成されて実施されていることが多い.
クリニカルパスに基づいて全症例に加速的リハビリテーションを行っても,有効ではなかったとする,中等度レベルのエビデンスがあり,加速的リハビリテーションは全症例に行うことは勧めない.
サイエンティフィックステートメント
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クリニカルパスに基づいた加速的リハビリテーションは一部の症例(受傷前ADLが高い症例)では入院期間の短縮をもたらすが,全症例では一般のリハビリテーションと差がないとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-1). |
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クリニカルパスを導入することにより術後リハビリテーションと退院計画の標準化が達成され,術後合併症の発生を抑制する(EV level II-2)が,入院中死亡率および入院期間,入院費用に対する効果は一定していない(EV level II-2,EV level III-1). |
エビデンス
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50歳以上の患者252例について,通常のリハビリテーションプログラムを行った.対照群と加速的リハビリテーションプログラムを行った介入群の2群を比較した.加速的リハビリテーションを行っても症例全体の医療コストは変化しなかったが,受傷前ADLが高く術後の結果が良好な一部の症例について,入院期間の短縮と受傷後4ヵ月間の医療コストの削減があった.しかし4ヵ月後の身体自立度に差がなかった(F1F04104, EV level II-1)(F1F10043, EV level II-1). |
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わが国における検討で,平均83歳の患者244例に対する従来の8週間リハビリテーションプログラムとクリニカルパスによる短期4週間リハビリテーションプログラムの効果の比較において,短期プログラム群で入院期間の短縮,術後合併症,入院医療費の減少効果があった.しかし歩行獲得率には差はなかった(F1F00800, EV level II-2). |
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65歳以上の1,065例の患者のクリニカルパスの導入前後の比較を行った(導入前318例,導入後663例).急性期病院での入院期間は短縮し,入院中死亡率,1年後の死亡率が有意に低下した(F2F01007, EV level II-2). |
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65歳以上の1,341例の患者についてクリニカルパスの導入前後の比較を行った(導入前678例,導入後747例).術後合併症が減少したが,入院中死亡率および入院期間,入院費用は差はなかった(F2F03401, EV level II-2). |
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65歳以上の919例の患者について,クリニカルパス導入による標準化リハビリテーションと退院プランニングの介入についてのコホート研究を施行した.パスの導入前後の比較で一部社会的支援の少ない群で術後身体機能が高く施設入所の必要度が減少したが,入院期間に影響はなかった(F2F00613, EV level II-2). |
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クリニカルパスの導入後(48時間以内のmobilization開始など)は導入前に比べて急性期病院での入院期間は短縮したが,受傷4ヵ月後の死亡率,退院後の居住状況に有意な差はみられなかった(F1F01318, EV level III-1). |
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50歳以上の患者178例にクリニカルパスによるリハビリテーション(術後1日目からの運動療法など)を行った結果,入院期間短縮,活動性向上の効果があった(F1F03511, EV level III-1). |
文献