(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第8章 大腿骨頚部/転子部骨折の周術期管理
8.6.術後全身管理
8.6.術後全身管理
■ Clinical Question 12
術後合併症とその頻度
解説
術後合併症としては精神障害が最も多い.
術後内科的合併症としては肺炎や心疾患が多い.
わが国においては,入院中の死亡原因となる合併症として肺炎が30〜44%で最も多い.
術後内科的合併症としては肺炎や心疾患が多い.
わが国においては,入院中の死亡原因となる合併症として肺炎が30〜44%で最も多い.
エビデンス
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大腿骨頚部骨折患者(平均年齢81.5歳)525例中何らかの術後合併症を生じた症例は44%で,精神障害が最も多く9.3%,肺炎3.2%,循環器疾患4.4%で,術後1年以内の死亡率は3.6%であった(F1J00577, EV level IV). |
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60歳以上の大腿骨近位部骨折手術症例246例中院内死亡例は16例で,死因は肺炎が7例(44%)で,次いで心不全であった(F1J00968, EV level IV). |
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65歳以上の大腿骨頚部骨折患者92例中死亡例は27例で8例(30%)が肺炎,5例が悪性腫瘍,4例は腎不全が死亡原因であった(F1J01607, EV level IV). |
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65歳以上の大腿骨頚部骨折患者364例中入院後6ヵ月以内の早期死亡例は22例で,13例が肺炎または心不全が死亡原因であった(F1J01830, EV level IV). |
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大腿骨頚部/転子部骨折手術患者180例中60例(33.3%)に合併症が生じた.精神的な合併症が最も多く18人,尿路感染が15人(18.3%),肺炎が9人(5%)に認められた.そのうち死亡例が2例で,原因は肺塞栓症と卒中であった(F2F00417, EV level IV). |
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股関節骨折手術患者8,930例中1,739例(19%)に術後内科学的合併症を認め,心疾患が8%,肺疾患が4%であった.また重篤な心疾患が2%,肺疾患が3%であった.消化管の出血は2%,心肺同時の合併症ならびに静脈血栓症が1%であった.術後30日以内の死亡率は重篤な心疾患合併例では22%,重篤な肺疾患合併例では17%で,術後1年以内の死亡率はそれぞれ36%,44%であった.複数の合併症がある例では,30日で29〜38%,1年で43〜62%と死亡率が高かった(F2F00508, EV level IV). |
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股関節骨折手術患者(4年以上の経過観察の可能)2,806例の死亡率は,全体で30日死亡率9.6%,1年死亡率33%であった.術後に多い合併症は肺炎と心不全であった.心不全を合併した場合の30日死亡率65%,1年死亡率92%と非常に高かった.肺炎を合併した場合,30日死亡率は43%であった(F2F00700, EV level IV). |
文献