(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第8章 大腿骨頚部/転子部骨折の周術期管理
8.1.麻酔方法
8.1.麻酔方法
■ Clinical Question 1
全身麻酔と局所麻酔(脊椎・硬膜外麻酔)のどちらが良いか
推奨
【Grade A】
高齢者の大腿骨頚部/転子部骨折の麻酔法において,全身麻酔と局所麻酔(脊椎・硬膜外麻酔)では合併症および死亡率に明らかな差がなく,いずれの方法も推奨される.
サイエンティフィックステートメント
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全身麻酔と局所麻酔(脊髄・硬膜外麻酔)の間に,合併症および死亡率にほぼ差がないとする高いレベルのエビデンスがある(EV level I-2). |
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局所麻酔(脊髄・硬膜外麻酔)は全身麻酔に比較して,手術後のdeep vein thrombosis(DVT)の発生率は低いが,死亡率には差がないとする高いレベルのエビデンスがある(EV level I-2). |
エビデンス
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8つの臨床試験をまとめた結果では,局所麻酔は術後1ヵ月での死亡率を有意に低下させるが(RR 0.69,95%CI 0.50〜0.95),その差はわずかだった[56/811(6.9%):86/857(10.0%)].6つの臨床試験をまとめた術後3ヵ月での死亡率は,両群間で有意な差は示さなかった[86/726(11.8%):98/765(12.8%),RR 0.92,95%CI 0.71〜1.21].術後1年までフォローアップされた患者数が少ないため,麻酔法が術後1年の死亡率に与える影響は,2つの臨床試験のみからの結果になってしまうが,長期予後に関しては両群間に全く差はないといえる(F2F01120, EV level I-2). |
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死亡率とDVTの発生率を評価する13の臨床研究をもとに分析した結果では,全身麻酔による手術後のDVTの発生率は局所麻酔に比べて有意に高かった(probability difference 31.3%,95%CI 16.7〜44.6%,odds ratio 4).大腿骨頚部骨折に対する手術時の局所麻酔と全身麻酔の死亡率に有意差はなかった(F1F04709, EV level I-2). |
文献