(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第7章 大腿骨転子部骨折の治療
7.4.術後早期荷重
7.4.術後早期荷重
■ Clinical Question 8
術後早期荷重は可能か(早期荷重が可能な条件)
推奨
【Grade C】
整復・内固定が良好であれば,早期荷重は可能である.
解説
内固定に関してはラグスクリューの位置と深さとが早期荷重の可否において重要である(7章-CQ10参照).
サイエンティフィックステートメント
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早期荷重を行った場合のラグスクリューのカットアウトは骨折型によらず3%程度であるとする低いレベルのエビデンスがある(EV level IV). |
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早期荷重を比較検討したものはない.整復不良,ラグスクリューの位置不良,ラグスクリューの刺入不足などがある場合に早期荷重を行うと固定の破綻が生じるという低いレベルのエビデンスがある(EV level IV). |
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整復が良好で,ラグスクリューの位置が良ければ早期全荷重歩行が可能であるとする低いレベルのエビデンスがある(EV level IV). |
エビデンス
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277例の大腿骨転子部骨折術後患者にsliding hip screwを行い,術直後からの制限なし荷重を行った.最低1年の追跡調査が可能であった208例中6例(2.9%)にリビジョン施行.全例ラグスクリューのカットアウトが原因であった.安定型・不安定型骨折の間でリビジョン率に有意差はなかった.高齢者の大腿骨頚部骨折における制限なし荷重を推奨する(F1F03299, EV level IV). |
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大腿骨転子間骨折188例に対してGammaネイルを施行.手術は受傷後平均3.3日で施行.全身状態が許せば骨折型によらず術後1週間以内歩行を行い,約87.6%の症例でこれが可能であった.術後合併症は近位へのスクリュー移動7例(3.7%),大腿骨骨幹部骨折6例,ネイル破損1例であった.骨癒合が得られなかったのは1例のみであった.骨折治療失敗の原因の多くは拙劣な手術手技によるものである(F1F02149, EV level IV). |
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高齢者(60歳以上,平均77歳)の大腿骨転子部骨折110例に対してCHS法を行い,早期(1週間以内)に制限なく荷重歩行練習を開始した.骨折型はEvansの分類によると安定型,不安定型が半々であった.3ヵ月以上の経過観察で,術中骨頭穿孔1例,ラグスクリューのカットアウト2例,内反5例または後捻変形6例などが生じたが,その原因はすべてテクニカルエラーであり,手術時の注意で回避可能なものであった.末梢骨片内方移動は17%にみられたが,歩行能力に対する悪影響は必ずしも強くなかった.CHS法手術後は整復が良好で,ラグスクリューの位置が良ければ早期全荷重歩行が可能である(F1J01420, EV level IV). |
文献