(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第7章 大腿骨転子部骨折の治療
7.3.外科的治療の選択
7.3.外科的治療の選択
■ Clinical Question 5
頚基部骨折(分類の章参照)に対する内固定法
推奨
【Grade Ib】
sliding hip screw(CHSタイプ)を使用し,骨頭の回旋防止対策を併用することを推奨する.
解説
頚基部骨折(関節包内外にまたがる骨折:第1章CQ1参照)は,頚部骨折とは異なりmultiple screwでは十分な固定性が得られない.sliding hip screw(CHSタイプ)などの角状安定性のある内固定材料を用いるべきであり,さらにラグスクリュー挿入時には骨頭回旋予防対策を行うことが必要である.
サイエンティフィックステートメント
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頚基部骨折に対しては,sliding hip screw(CHSタイプ)を用いるべきで,同時に近位骨片が回旋しないように,回旋防止スクリューを1本併用すべきであるとする低いレベルのエビデンスがある(EV level V). |
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しかし,この回旋防止スクリューを用いても骨折部のcollapseや機能的結果にはsliding hip screw単独の症例と差がなかったという低いレベルのエビデンスがある(EV level IV). |
エビデンス
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転子間部に近い,低位の大腿骨頚部骨折に対しては,compression screw and slide plateを用いるのが道理に適っている.大きなcompression screwを挿入する際に,大腿骨頚部骨片が回旋しないように,回旋防止スクリューを1本併用すべきである.この部の骨折は,大腿骨頚部骨折よりも転子間骨折に似ているので,運動を制限しない状態に耐える安定性をもたらすには,multiple screwsでは強度が十分でない(F1F02676, EV level V). |
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転子部骨折38例(安定型:21例,不安定型:17例)と頚基部骨折28例を全例 sliding hip screwで治療し,頚基部骨折では9例で回旋防止スクリューを使用した.頚基部骨折で回旋防止スクリューを使用することは,sliding hip screwを挿入する際に骨頭の回旋を防止するという意味で適応はあるものの,骨折部のcollapseや成績には差を認めなかった(F2F03059, EV level IV). |
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頚部基部骨折は骨接合した場合,より近位の関節包内骨折よりも偽関節や阻血性壊死が少ない(F1R00003, EV level V). |
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頚基部骨折はposterior capsular retinaculumより遠位にあるので,より近位の関節包内骨折よりも阻血性壊死は少なく,癒合率は高い.頚基部骨折はスクリューのみの固定では,下位のスクリューに対して頚部内側の骨皮質が固定の支点として働きにくく,スクリューが頚部内側の骨皮質に接していても,頚基部の海綿骨がしっかりしていなければ,固定性の破綻に抵抗できない(F1R00004, EV level V). |
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basicevical fracturesは,定義によれば,転子間部との接合部である大腿骨頚部基部を通る近位大腿骨骨折である.21対の屍体大腿骨を用いて頚基部骨折を作成し,3本の平行な6.5mm径cannulated cancellous screws,4穴のside plate付きの135度sliding hip screw,4穴のside plate付きの135度sliding hip screwとその上方に平行に1本の6.5mm径cannulated cancellous screwを加えたものの,3つの標準的固定法について,安定性と最大強度を比較した.頚基部骨折の治療には, multiple cancellous screwsよりもsliding hip screwの使用が勧められる.sliding hip screwを挿入する際に,上方にcancellous screwを1本入れておくと,骨頭の回旋防止に役立つであろうが,sliding hip screwを設置した後の固定性をさらに高めるわけではない(F1R00005, EV level V). |
文献