(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第6章 大腿骨頚部骨折の治療
6.3.治療の選択
6.3.2.骨接合術の術式選択と後療法
6.3.治療の選択
6.3.2.骨接合術の術式選択と後療法
■ Clinical Question 12
骨接合術後の早期荷重は推奨できるか
推奨
【Grade C】
非転位型骨折では,早期荷重による合併症は少なく,早期荷重を推奨する.
【Grade C】
転位型骨折でも,固定性が良好であれば,早期荷重を試みても良い.
解説
早期荷重はここでは7日以内と考える.早期荷重のほうが術後成績が良いとする研究はないが,早期に歩行できることは患者の利益であり,早期荷重を推奨する.
サイエンティフィックステートメント
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非転位型骨折では早期荷重が可能であるとする,中等度レベルのエビデンスがある(EV level II-2, EV level IV). | |
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転位型骨折において早期荷重を行っても,偽関節およびLSCの発生率に差がなかったとする低いレベルのエビデンスがある(EV level IV). |
エビデンス
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65歳以上の頚部骨折(内・外側)596例に術直後から全荷重し1年以上観察しえた例の検討.1年以上経過例では,外側208例中6例,内側(multiple pinning, Knowles pinで治療)95例中5例に追加手術を行った.内側で2年以上追跡例74例中4例に壊死発生し,追加手術を行った.転位による有意差は認めなかった.早期荷重を推奨する(F1F03299, EV level II-2). |
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骨接合術後,術後荷重制限なし(早期荷重群)と6週間以上免荷(長期免荷群)の比較.早期荷重群は平均65歳(46〜82歳),Garden stage Iは2例,IIは8例,IIIは1例,IVは1例の計12例で,cannulated cancellous hip screw(CCHS)5例, Hansson pin 7例.長期免荷群は54歳(37〜67歳)でGarden stage Iは2例,IIは2例,IIIは2例,IVは1例の計7例ですべてCCHS固定.両群ともGAI値の変動に差なし.短縮は,早期荷重群のGarden stage IVに12mm,長期荷重群はGarden stage IIIで18mm,23mm生じ,その他は5mm以内であった.骨性支持の保たれている安定型には免荷の必要はない(F1J00082, EV level IV). |
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CCHS固定.1〜2週で部分荷重,3〜4週で全荷重した.Garden stage Iは4例,IIは11例,III16例,IV4例の計35骨折.Garden stage I,IIでは全例骨癒合し壊死は認めなかった.Garden stage IIIは2例が偽関節に,IVは半数が偽関節になった.Garden分類ではI,IIは1週間での部分荷重は可であるが,IIIは整復・固定が十分な例は1週間での部分荷重は可である(F1J00776, EV level IV). |
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経皮的CCHS3本固定した65例の検討.術後ただちに荷重を許可した.3ヵ月後の評価では,Garden stage I,IIの14例全例,III,IVは25/34(74%)に骨癒合を得た.偽関節はIII,IVの5例に,壊死をGarden stage Iは1例,IIは2例,IVは1例に認めた(F1J10001, EV level IV). |
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非転位型,転位型を問わずCCHS3本で内固定を行った骨接合術後,症例をA群(術後1週で部分荷重,術後3週で全荷重),B群(術後3週で部分荷重,術後6週で全荷重)に分けた.その結果,骨癒合までの期間はA群:3.8±0.5ヵ月,B群4.2±0.45ヵ月で有意差を認めた.LSCの発生はA群:33例中3例(9%:非転位型0%,転位型15%),B群:30例中2例(7%:非転位型0%,転位型12%)に認めたが有意差はなかった.偽関節はA群:33例中3例(9%:非転位型0%,転位型15%),B群:30例中3例(10%:非転位型0%,転位型18%)に認めたが有意差はなかった(F2J00548, EV level IV). |
文献