(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第1章 大腿骨近位部骨折の分類
■ Clinical Question 2
大腿骨頚部骨折の分類
解説
大腿骨頚部骨折の分類には,現在,Garden stageを用いるのが一般的である.Gardenは大腿骨頚部骨折を転位の程度によりstage I~IVの4段階に分類した.
stage Iは不完全骨折であり,骨頭は外反位をとり骨折線の上部では陥入し,内側頚部骨皮質に骨折線はみられず,若木骨折型を呈する.骨幹部はほぼ内外旋中間位である.
stage IIは完全骨折であるが転位はなく,遠位骨片と近位骨片の主圧縮骨梁の方向性に乱れがない.
stage IIIは転位のある完全骨折であり,エックス線単純写真正面像では近位骨片は内反して主圧縮骨梁は水平化し,臼蓋,骨頭,および遠位骨片内側の主圧縮骨梁の方向が一致していない.Garden stageは正面像による分類であるが,軸写像では骨頭の主圧縮骨梁が正常の正面像のごとくに観察できる.これは骨頭が後方へ大きく回旋転位しているためで,損傷のないWeitbrecht支帯の牽引の効果によるといわれている.
stage IVは転位高度の完全骨折であり,エックス線単純写真正面像でのstage IIIとの違いは臼蓋,骨頭,遠位骨片内側の主圧縮骨梁の方向が一致して,正常の方向を向いている点である.これはWeitbrecht支帯が損傷されることによって,骨頭が後方への回旋転位を示さないためであるといわれている.
この4段階は検者間での分類判定の一致率が低い.そこで上記のうち,stage IとIIとを非転位型,stage IIIとIVとを転位型として2つに分類するのが,治療法の選択と予後予測との面で間違いが少ないという考え方が主流である.
図2 大腿骨頚部骨折の分類(Garden stage)
stage Iは不完全骨折であり,骨頭は外反位をとり骨折線の上部では陥入し,内側頚部骨皮質に骨折線はみられず,若木骨折型を呈する.骨幹部はほぼ内外旋中間位である.
stage IIは完全骨折であるが転位はなく,遠位骨片と近位骨片の主圧縮骨梁の方向性に乱れがない.
stage IIIは転位のある完全骨折であり,エックス線単純写真正面像では近位骨片は内反して主圧縮骨梁は水平化し,臼蓋,骨頭,および遠位骨片内側の主圧縮骨梁の方向が一致していない.Garden stageは正面像による分類であるが,軸写像では骨頭の主圧縮骨梁が正常の正面像のごとくに観察できる.これは骨頭が後方へ大きく回旋転位しているためで,損傷のないWeitbrecht支帯の牽引の効果によるといわれている.
stage IVは転位高度の完全骨折であり,エックス線単純写真正面像でのstage IIIとの違いは臼蓋,骨頭,遠位骨片内側の主圧縮骨梁の方向が一致して,正常の方向を向いている点である.これはWeitbrecht支帯が損傷されることによって,骨頭が後方への回旋転位を示さないためであるといわれている.
この4段階は検者間での分類判定の一致率が低い.そこで上記のうち,stage IとIIとを非転位型,stage IIIとIVとを転位型として2つに分類するのが,治療法の選択と予後予測との面で間違いが少ないという考え方が主流である.

図2 大腿骨頚部骨折の分類(Garden stage)
エビデンス
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大腿骨頚部骨折は非転位型(Garden stage IとII)と転位型(Garden stage IIIとIV)の2つに分類するのが治療法の選択と予後予測の面で間違いが少ない(F1F04452, EV level II-2). |
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Gardenのstage IとIIはほとんどすべて骨癒合し,stage Iの60%は6ヵ月以内に癒合した.stage ⅢとⅣのおおよそ3分の2は癒合したが,stage Iよりも骨癒合は遅く,女性では,stage IIIの17%とstage IVの12%のみが6ヵ月以内に癒合した.late segmental collapseはstage Iでは16%に,stage IIIとIVでは27.6%にみられた(F1F10002, EV level II-2). |
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Pauwels角は転位しやすさの目安にはなるが,骨癒合の成否の目安にはならない(F1F02223, EV level III-2). |
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AO分類のintra- and inter-observer reliabilityは非常に悪いが,undisplaced,displaced,basalと分類を3つに単純化するとその価値は評価できる(F1F02310, EV level C-Ib). |
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近位骨片の転位のないもの(stage IとII)と転位のあるもの(stage IIIとIV)の2群に分類すれば,臨床的使用にはおそらく十分であろう(F1F06009, EV level IV). |
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6人の整形外科医によるエックス線単純写真読影診断の一致率をKappa valueでみると,Garden stageは0.4で,Gardenのstage I,IIとIII,IVに分けた場合には0.6であった(F1F00004, EV level C-II). |
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側面像を追加して判断した場合のGarden stageの6人の観察者間の一致率は,転位のないもの(I+II)と転位のあるもの(III+IV)に分けると著しく上昇する(F1F03190, EV level C-II). |
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Knowles pinによる内固定で,Garden stage I,IIでは全例骨癒合し,III,IVでは14%が偽関節となった.骨頭無腐性壊死はI,II群で5.9%,III,IV群で34.5%であった(F1F05135, EV level IV). |
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術前の状態をundisplaced(Garden stage I,II)とdisplaced(Garden stage III,IV)とに分けると,後者で偽関節は有意に多く,骨頭壊死は有意差はないが多かった(F1F05359, EV level III-1). |
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予後の判定には,整復位,骨折型,内固定材料の位置が重要であったが,骨癒合過程で合併症を生じたのは,Garden stage Iの24例中3例,Garden stage IIの13例中1例,Garden stage IIIの24例中9例,Garden stage IVの40例中21例であった(F1F05467, EV level III-1). |
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大腿骨頚部骨折に骨接合を行い,骨癒合率は97.7%であった.late segmental collapse(LSC)の発生はGarden stage I,IIでは36例中1例(2.8%)で,stage III,IVでは50例中11例(22.0%)であった(F1J01084, EV level IV). |
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大腿骨骨頭下骨折の摘出骨頭50個の微小血管造影を行い,Garden stageは転位(-)群と転位(+)群に分けるのが簡便,かつ合理的であるとした(F1J00482, EV level IV). |
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頚部被膜の連続性の有無がGarden stageの根拠となっているが,調査結果からは再検討が必要である(F1J00479, EV level IV). |
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大腿骨頚部骨折のcompression hip screw(CHS)固定例の骨癒合,骨頭壊死,LSCの発生率はstage Iが100%,16.7%,0%;stage IIが94.4%,21.1%,7.1%;stage IIIが96.8%,43.8%,25.0%;stage IVが88.9%,57.1%,41.2%であった(F1J00312, EV level IV). |
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dynamic MRIによる血流評価とGarden stageおよびその修正分類(山本,南澤)との関係を評価した.修正分類のほうが有効と思われるが,細かい予後の判定には限界がある(F1J00087, EV level C-II). |
文献