EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン
III 尿失禁診療ガイドライン |
2. 腹圧性尿失禁の治療
(2) 薬物治療
<3> βアドレナリン受容体刺激薬
βアドレナリン受容体刺激薬の塩酸クレンブテロールは、喘息治療薬として長く使用されてきた薬剤であるが、現在では腹圧性尿失禁について保険適応をもっている。βアドレナリン受容体刺激薬は骨盤底の横紋筋群の筋緊張を高めることにより膀胱頸部の流出抵抗を上昇させる効果を呈するとされている。塩酸クレンブテロール20〜40μg/日を腹圧性尿失禁を有する患者32人に2週間投与したところ、尿漏れの回数と尿漏れの量に関する効果は著明改善と中等度改善を合わせて75%であり、振戦や動悸などの副作用は32%に観察された36)。その他2つの調査において、塩酸クレンブテロール20〜40μg/日の経口投与により尿漏れの回数と量の減少が報告されている37,38)。塩酸クレンブテロールは血圧を上昇させ血糖値を高める作用をもつので、高血圧症もしくは糖尿病のある患者には適していない。