EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン

 
III 尿失禁診療ガイドライン
高齢者尿失禁ガイドライン

2. 診断
(2) 評価

2) 診断のアルゴリズム
尿失禁の多くは蓄尿障害に基づくものであるが、根底に尿排出障害があり、失禁が生じている場合がある。前立腺肥大症、膀胱頸部硬化症などの膀胱出口閉塞の患者では、尿意切迫感、夜間頻尿、切迫性尿失禁を認めることも多い。膀胱排尿筋の無抑制収縮がありながら、収縮力低下を示す病態(detrusor hyperactivity with impaired contractile function  ; DHIC)は高齢者によくみられるといわれており、このような患者に不用意に抗コリン薬を投与すると残尿増加や尿閉、溢流性尿失禁を引き起こすことがある。出口閉塞に起因する切迫性尿失禁や溢流性尿失禁の治療法は、通常の切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁の治療法とはまったく異なるため、失禁が尿排出障害に起因するかどうかは最初に鑑別しなければならない点である。
的確に治療を行うためには、尿失禁が切迫性、腹圧性、反射性、 溢流性、機能性のいずれであるか、あるいは複数の要素が絡んでいるか見極める必要がある。高齢者では、複数の要素が関わっていることが多い。
基本的な評価により、一過性あるいは可逆性と考えられる場合にはすぐに治療を開始してよい(表1)。また、以下に示すような患者の精密検査は不要で、早急に治療を開始する。
● 残尿が50mL未満の腹圧性尿失禁患者
● 残尿が50mL未満の切迫性尿失禁患者
● 残尿が50mL未満の腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が混合した尿失禁患者で、行動療法ないしは薬物治療が適当と思われる患者

図1に、診断に至るためのアルゴリズムを示す。

図1 尿失禁診断アルゴリズム
図1 尿失禁診断アルゴリズム
 
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