EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン

 
III 尿失禁診療ガイドライン
高齢者尿失禁ガイドライン

2. 診断
(2) 評価

尿失禁を有する高齢者の多くは仕方がないこととすでにあきらめており、他疾患で医療機関を受診しても、尿失禁について相談することは少ない。医療側から、定期的に尿失禁の有無について質問していく姿勢が重要である。
これまで、尿失禁に関しては主に泌尿器科や婦人科が取り扱ってきたが、高齢者が急増している現況を考えれば、一般内科医や看護師が尿失禁の評価・治療に積極的に関わっていくのが望ましい。
基本的な評価の目的は、(1) 尿失禁の有無を確認すること、(2) 尿失禁の病態を把握すること、(3) 尿失禁の要因(表1)を取り除くことにより容易に改善するかどうか見極めること、(4) 治療を開始する前にさらなる評価が必要な患者を見極めること、(5) 可能なら診断を確定することにある。

表1 尿失禁の要因と対処
 要 因治 療
膀胱、前立腺、尿道尿路感染症(頻尿,排尿痛,尿意切迫を伴ったもの)
萎縮性膣炎・尿道炎
前立腺手術後
便秘・糞詰まり
抗生剤治療

経口・経膣的エストロゲン
下部尿路リハビリテーション(骨盤底筋訓練法)
摘便、緩下剤、運動、食物繊維、水分摂取中止、減量
薬剤または嗜好品の副作用利尿薬(多尿、頻尿、尿意切迫の原因)
カフェイン
抗コリン薬(尿閉、溢流性尿失禁、便秘の原因)
向精神薬
  抗うつ薬
  抗精神病薬
  鎮静薬
麻薬性鎮痛薬(尿閉、便秘、鎮静、譫妄の原因)
α交感神経遮断薬(尿道の緊張低下)
α交感神経刺激薬(尿閉、溢流性尿失禁 : 多くのかぜ薬に含まれている)
β交感神経刺激薬(尿閉、溢流性尿失禁の原因)
抗不整脈薬(リスモダン(R)など : 尿閉、溢流性尿失禁の原因)
カルシウム拮抗薬(尿閉、溢流性尿失禁の原因)
アルコール(多尿、頻尿、尿意切迫、鎮静、譫妄の原因)
多尿糖尿病性
飲水過多
糖尿病の治療
飲水の制限(1日尿量1,600〜1,800mLを目安に)
浮腫静脈還流異常
心不全
ストッキング、Na制限、利尿薬
心不全の治療
意欲、動作機能の低下譫妄
慢性病、骨折など
精神病
原疾患の治療
 
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