(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
20.糖尿病の療養指導・患者教育
解説
6.自己管理能力の向上とエンパワーメント法
知識があっても自己管理の向上がない場合,情報(information)の意味が理解されないことから知能(intelligence)となっていないか,あるいは患者の「知識」と医療チームが患者にとって必要と考えている「知識」とが異なるためかである.したがって,生活習慣に介入する場合,目標を定めて,実生活における不適切な生活習慣の改善に役立つ実務的な技能指導を含むプログラムでなければならない10),21).
治療の効率と安全性のために,患者と医療関係者の緊密なコミュニケーションによる迅速で適切な治療法の選択が望まれる22),23).チームの共同作業は患者も含め,治療の選択に関する情報および治療による転帰情報を患者と共有しなければならない24).そのためには専門職種の協調性が保たれるチームの機能が重要視される.患者に療養指導をしたことが実行されない場合,指導側の機能と機構に問題はないか,患者が実施できない生活面での問題がないか否かを明らかにする必要がある.
近年,情報共有参加型教育が提唱されており,治療の選択を患者の判断を求める場面が多くなった.エンパワーメントの原義は権限を付与することであるが,最近の医療における考え方は患者が判断力を持つ知能を持って自己管理にあたることができるように患者それぞれの能力を最大限に引き出すよう指導することを,エンパワーメント法と呼んでいる.それには,療養指導に携わるスタッフは患者の生活,糖尿病の診断時,治療方針の変更の際などにおける心理的軌跡を十分理解する必要がある.エンパワーするための基本は心理的アプローチにあり,情報共有参加型の療養指導の根底に患者と医療側の人間関係が重要である.心理的要素を無視したエンパワーメントの失敗により教育の基本姿勢が問われるような変化を示す症例があり,アプローチには主治医とコメディカルは統一見解をもってあたる必要がある25),26).
エンパワーメント法は療養指導の最終目標を達成するための方法論であるが,プロセスが大切であり,個々の患者への対策(指導介入)により結果がついてくる.まず,患者は積極的に,情報に基づいて受診するようになる.従来は抽象的であった愁訴が,患者からのより具体的な情報提供となる.一方,医療側からの情報の提供と療養指導により,治療の結果のみを重視するより,選択能力を持つようになる.したがって,指導は「何を話すか」ということより「どのように説明するか」といった指導者側の患者に対するコンプライアンスが求められるようになる.ただし,急性期,緊急事態で他に選択の余地がない時はこの限りではない.
治療の効率と安全性のために,患者と医療関係者の緊密なコミュニケーションによる迅速で適切な治療法の選択が望まれる22),23).チームの共同作業は患者も含め,治療の選択に関する情報および治療による転帰情報を患者と共有しなければならない24).そのためには専門職種の協調性が保たれるチームの機能が重要視される.患者に療養指導をしたことが実行されない場合,指導側の機能と機構に問題はないか,患者が実施できない生活面での問題がないか否かを明らかにする必要がある.
近年,情報共有参加型教育が提唱されており,治療の選択を患者の判断を求める場面が多くなった.エンパワーメントの原義は権限を付与することであるが,最近の医療における考え方は患者が判断力を持つ知能を持って自己管理にあたることができるように患者それぞれの能力を最大限に引き出すよう指導することを,エンパワーメント法と呼んでいる.それには,療養指導に携わるスタッフは患者の生活,糖尿病の診断時,治療方針の変更の際などにおける心理的軌跡を十分理解する必要がある.エンパワーするための基本は心理的アプローチにあり,情報共有参加型の療養指導の根底に患者と医療側の人間関係が重要である.心理的要素を無視したエンパワーメントの失敗により教育の基本姿勢が問われるような変化を示す症例があり,アプローチには主治医とコメディカルは統一見解をもってあたる必要がある25),26).
エンパワーメント法は療養指導の最終目標を達成するための方法論であるが,プロセスが大切であり,個々の患者への対策(指導介入)により結果がついてくる.まず,患者は積極的に,情報に基づいて受診するようになる.従来は抽象的であった愁訴が,患者からのより具体的な情報提供となる.一方,医療側からの情報の提供と療養指導により,治療の結果のみを重視するより,選択能力を持つようになる.したがって,指導は「何を話すか」ということより「どのように説明するか」といった指導者側の患者に対するコンプライアンスが求められるようになる.ただし,急性期,緊急事態で他に選択の余地がない時はこの限りではない.