(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
18.糖尿病における急性代謝失調
アブストラクトテーブル
論文コード | 対象 | 方法 | 結果 |
1)Newton CA et al, 2004 コホート研究 レベル4 | 138人の連続した糖尿病ケトアシドーシス患者 | 病型,病態の検討 | 糖尿病ケトアシドーシス患者の21.7%は2型糖尿病であった |
2)Umpierrez GE et al, 2004 RCT レベル2- | 45人の糖尿病ケトアシドーシス患者 | インスリンアスパルトの皮下注射と速効型インスリンの持続静注を比較 | アスパルトの1~2時間毎の皮下注射でも点滴静注とほぼ同等の効果を示した |
3)Umpierrez GE et al, 2004 RCT レベル2- | 40人の糖尿病ケトアシドーシス患者 | 1時間毎のインスリンリスプロの皮下注射と速効型インスリンの持続静注を比較 | インスリンリスプロの皮下注射治療は速効型インスリンの持続静注と同等の効果を示した |
4)Della Manna T et al, 2005 RCT レベル2- | 60人の糖尿病ケトアシドーシス患者 | インスリンリスプロの皮下注射で治療する群と速効型インスリンの持続点滴で治療する群の比較 | インスリンリスプロでも速効型インスリンの持続点滴と同様の治療効果を示した |
5)Wiggam MI et al, 1997 RCT レベル2- | 22人の糖尿病ケトアシドーシス患者 | 血糖が正常化するまでインスリン治療を行い漸減する群と3ヒドロキシ酪酸が正常になるまでグルコースを補充しつつインスリン治療を継続する群の比較 | 3ヒドロキシ酪酸が正常になるまでグルコースを補充しつつインスリンを継続する群後者のほうがケトーシスからの回復が早かった |
6)Gamba G et al, 1991 RCT レベル2- | pH 7.15未満の20人の糖尿病ケトアシドーシス患者 | 重炭酸塩を投与する群としない群を二重盲検にて比較 | 重炭酸塩の投与の有無はアシドーシスの補正に関して何ら影響を及ぼさなかった |
7)Morris LR et al, 1986 RCT レベル2- | pH 6.90~7.14の21人の糖尿病ケトアシドーシス患者 | 重炭酸塩を投与する群としない群とで,血糖の変動,血漿および脳脊髄液のpHの変動を比較 | 重炭酸塩の補充を行っても,血糖,ケトン体,血漿および脳脊髄液のpH変動には何ら影響がなかった |
8)Fisher JN et al, 1983 RCT レベル2- | 30人の糖尿病ケトアシドーシス患者 | 8.5mmoL/h(6g/24h)のリンを投与する群としない群を比較 | リンを投与しても酸素状態や臨床データに違いは認められなかった |
9)MacIsaac RJ et al, 2002 コホート研究 レベル4 | 312人の糖尿病ケトアシドーシス | 高血糖高浸透圧症候群をレトロスペクティブに解析 | 高齢の高血糖高浸透圧症候群患者は予後が悪いことを確認した |
10)DCCT Research Group, 1993 RCT レベル1 | 米国.1型糖尿病(1,441人) | 強化インスリン療法vs.従来インスリン療法(6.5年) | 強化療法は1型糖尿病で慢性細小血管合併症の発症進展に有効であったが低血糖頻度が3倍となった |
11)UKPDS 33, 1998 RCT レベル1 | 英国.2型糖尿病(3,867人) | SU薬投与群vs.インスリン投与群vs.食事療法群(6年) | SU薬やインスリンによる厳格なコントロ-ルで細小血管症のリスクは減少したが,低血糖頻度は増加した |
12)Ohkubo Y et al, 1995 RCT レベル2 | 日本.2型糖尿病(110人) | 強化インスリン療法vs.従来インスリン療法(6年) | 強化療法は2型糖尿病で慢性細小血管合併症の発症進展に有効であったが低血糖頻度が3倍となった |
13)Pieber TR et al, 1995 前後比較試験 レベル4 | 米国.1型糖尿病(205人) | 5日間の教育プログラムを受けた後,平均3年後の患者のコントロールや低血糖頻度の比較 | 血糖コントロールは改善し,重篤な低血糖頻度も減少した |
14)鮴谷佳和ほか,1995 症例研究 レベル4 | 日本.認知症高齢2型糖尿病(10人) | 血糖コントロールと認知症の発症について検討 | 75歳以上の高齢糖尿病患者ではHbA1c 7%未満の厳格なコントロールは低血糖性認知症発症の危険性が大きい |
15)Heller SR et al, 1991 症例研究 レベル6 | 米国.非糖尿病者(9人) | クランプ法により日中に一度低血糖レベルにし,その後血糖を正常に保ち,朝方に再度低血糖レベルにした際の拮抗ホルモンの反応を確認した | 1回の低血糖の発症により以後の低血糖への神経内分泌および症状の発現が抑制される |
16)香野修介ほか,1998 症例研究 レベル4 | 日本.糖尿病(26人),インスリノーマ(1人),健常者(9人) | 人工膵臓を用いて低血糖を惹起した際の各種拮抗ホルモン,低血糖症状の発現を点数化してその閾値を評価する | 低血糖閾値は長時間の持続的高血糖により上昇し,血糖コントロール状態と平行するが,低血糖の既往により低下する |
17)Levy CJ et al, 1998 症例研究 レベル4 | 米国.糖尿病(1型10人,2型11人),コントロール群(18人) | 段階的低血糖高インスリンクランプ試験を行い,血糖低下に伴うインスリン拮抗ホルモンの分泌と症状について分析し,血糖コントロール状態と比較する | 低血糖閾値は血糖コントロールレベルに比例する |
18)Boyle PJ et al, 1995 症例研究 レベル4 | 米国.1型糖尿病(24人)および健常者15人 | 脳のブドウ糖摂取率を血糖値から計算し,血糖の変動による差を調べた | 脳のブドウ糖摂取は血糖レベルが低い例で変化せず,拮抗ホルモンの反応も低下していた |
19)Cranston I et al, 1994 前後比較試験 レベル5 | 米国.1型糖尿病(12人) | 無自覚低血糖の症例に対して低血糖を回避するようにコントロールした前後での症状や拮抗ホルモンの反応を確認 | 平均4.1ヵ月後の経過で拮抗ホルモンの反応は改善し,低血糖症状の自覚も回復した |
20)Anderson J et al, 2000 RCT クロスオーバー試験 レベル1 | 日本を含む16ヵ国.2型糖尿病(722人) | 速効型ヒトインスリン使用vs.超速効型(リスプロ)インスリン使用(6ヵ月) | 食後血糖値は超速効型で有意に低下し,低血糖発現頻度も有意に低かった |
21)Anderson J et al, 2000 RCT レベル1 | 日本を含む16ヵ国.1型糖尿病(1,008人) | 速効型ヒトインスリン使用群vs.超速効型(リスプロ)インスリン使用群 | 食後血糖値は超速効型で有意に低下し,低血糖発現頻度も有意に低かった.特に夜間低血糖の相対的な改善が認められた |
22)Rosenstock J et al, 2005 メタアナリシス レベル1+ | 4つのRCTのメタアナリシス | HbA1c<7%を達成した際のインスリングラルギンとヒトNPHインスリンの比較 | 低血糖頻度はグラルギン群で有意に低下していた |
23)DCCT Research Group, 1996 RCT レベル1 | 米国.1型糖尿病(1,441人) | 試験実施後,2,5,7年目および終了時に神経精神的なアセスメントテストを実施した | 強化療法群と従来療法群に有意な差は認めず,低血糖のリスクとの関連も認めなかった |