(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
18.糖尿病における急性代謝失調
ステートメント
1.糖尿病ケトアシドーシス
(1)診断 

インスリンの極端な欠乏とインスリン拮抗ホルモン(グルカゴン,コルチゾ-ル,アドレナリンなど)の増加により,高血糖(≧250mg/dL),高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加),アシドーシス(pH≦7.30,重炭酸塩濃度<18mEq/L)をきたした状態が糖尿病ケトアシドーシスであり,緊急の対応が必要であるa),b).
(2)治療
治療のポイントは,十分な輸液と電解質の補充,インスリンの適切な投与である.


脳浮腫,高Cl性代謝性アシドーシス,低カリウム血症を合併することがあるので,治療中には意識状態,バイタルサイン,電解質の経時的なモニターを行う.


インスリンの極端な欠乏とインスリン拮抗ホルモン(グルカゴン,コルチゾ-ル,アドレナリンなど)の増加により,高血糖(≧250mg/dL),高ケトン血症(β-ヒドロキシ酪酸の増加),アシドーシス(pH≦7.30,重炭酸塩濃度<18mEq/L)をきたした状態が糖尿病ケトアシドーシスであり,緊急の対応が必要であるa),b).
(2)治療
治療のポイントは,十分な輸液と電解質の補充,インスリンの適切な投与である.
- 輸液
生理食塩水を中心とした輸液で,水分とナトリウムを補充する.
また,適切にカリウムを補給することは重要である.レベル2-
アシドーシスの補正は原則として行わない.レベル2-
- インスリンの少量持続投与
速効型インスリンの点滴静注を行う.


脳浮腫,高Cl性代謝性アシドーシス,低カリウム血症を合併することがあるので,治療中には意識状態,バイタルサイン,電解質の経時的なモニターを行う.
2.高血糖高浸透圧症候群
(1)診断 

高齢の2型糖尿病患者が,感染症,脳血管障害,手術,高カロリー輸液,利尿薬やステロイドホルモンの不適切な投与によって高血糖をきたした場合に発症しやすい.高齢者に多くみられる.
さまざまな程度の意識障害と脱水に基づく多飲,多尿,全身倦怠感などの症状をきたすが,糖尿病ケトアシドーシスよりゆっくり発症し,発症までの期間は数日から週の単位である.
高血糖(≧600mg/dL),高浸透圧血症(≧320mOsm/L)をきたすが,アシドーシスは認めず,pH>7.30,HCO3>18~20mEq/Lである.
(2)治療
治療のポイントは,十分な輸液と電解質の補充,インスリンの適切な投与である.
(3)合併症

脳浮腫,肺炎,消化管出血,腎不全,脳血管障害,肺動脈血栓症,低カリウム血症などを合併することがあるので,治療中には意識状態,バイタルサイン,電解質の経時的なモニターを行う.


高齢の2型糖尿病患者が,感染症,脳血管障害,手術,高カロリー輸液,利尿薬やステロイドホルモンの不適切な投与によって高血糖をきたした場合に発症しやすい.高齢者に多くみられる.
さまざまな程度の意識障害と脱水に基づく多飲,多尿,全身倦怠感などの症状をきたすが,糖尿病ケトアシドーシスよりゆっくり発症し,発症までの期間は数日から週の単位である.
高血糖(≧600mg/dL),高浸透圧血症(≧320mOsm/L)をきたすが,アシドーシスは認めず,pH>7.30,HCO3>18~20mEq/Lである.
(2)治療
治療のポイントは,十分な輸液と電解質の補充,インスリンの適切な投与である.
(3)合併症


脳浮腫,肺炎,消化管出血,腎不全,脳血管障害,肺動脈血栓症,低カリウム血症などを合併することがあるので,治療中には意識状態,バイタルサイン,電解質の経時的なモニターを行う.
3.低血糖
(1)低血糖の予防 

低血糖は糖尿病治療における大きな障害であり,その予防や対策は良好な血糖コントロールを実現するうえで重要である.そのための手段として患者教育や血糖自己測定の修得が勧められる.
(2)低血糖の診断と対応

動悸,発汗,脱力,意識レベルの低下などの低血糖症状があり,少なくとも血糖値が60mg/dL以下の場合,低血糖と診断し対応する.
可能であれば,まず血糖自己測定器などで血糖値を確認する.低血糖の際は速やかにブドウ糖を中心とした糖質の経口摂取,またはグルコースの静脈内投与を行う.また,重症な低血糖ではいったん症状が回復しても再発や遷延が起きることもあるため,再発予防のために注意深い経過観察と処置が必要である.
(3)無自覚低血糖

血糖コントロール不良の患者では低血糖症状発症の閾値が変化する.特に低血糖を頻繁に起こす患者ではインスリン拮抗ホルモン分泌反応が遅れ,いわゆる無自覚低血糖の状態となることがある.この回避のためには低血糖を避け,良好なコントロールに保つことが重要である.
(4)薬剤の選択
経口薬では,特に長時間作用型のスルホニル尿素薬で低血糖を起こしやすい傾向がある.

インスリンでは,超速効型および持効溶解型インスリンアナログにおいて,従来のインスリンより低血糖の頻度が少ないとされている.
レベル2+
(5)1型糖尿病と強化インスリン療法
レベル1
1型糖尿病では,厳格な血糖コントロールのための強化インスリン療法の施行により,重症低血糖の頻度は従来療法に比べ約2~6倍に増加することが示されているが,心理学的およびQOLの評価では特に両者の間に差は認めず,合併症発症予防および進展抑制のためにその施行が勧められる.


低血糖は糖尿病治療における大きな障害であり,その予防や対策は良好な血糖コントロールを実現するうえで重要である.そのための手段として患者教育や血糖自己測定の修得が勧められる.
(2)低血糖の診断と対応


動悸,発汗,脱力,意識レベルの低下などの低血糖症状があり,少なくとも血糖値が60mg/dL以下の場合,低血糖と診断し対応する.
可能であれば,まず血糖自己測定器などで血糖値を確認する.低血糖の際は速やかにブドウ糖を中心とした糖質の経口摂取,またはグルコースの静脈内投与を行う.また,重症な低血糖ではいったん症状が回復しても再発や遷延が起きることもあるため,再発予防のために注意深い経過観察と処置が必要である.
(3)無自覚低血糖


血糖コントロール不良の患者では低血糖症状発症の閾値が変化する.特に低血糖を頻繁に起こす患者ではインスリン拮抗ホルモン分泌反応が遅れ,いわゆる無自覚低血糖の状態となることがある.この回避のためには低血糖を避け,良好なコントロールに保つことが重要である.
(4)薬剤の選択
経口薬では,特に長時間作用型のスルホニル尿素薬で低血糖を起こしやすい傾向がある.


インスリンでは,超速効型および持効溶解型インスリンアナログにおいて,従来のインスリンより低血糖の頻度が少ないとされている.

(5)1型糖尿病と強化インスリン療法

1型糖尿病では,厳格な血糖コントロールのための強化インスリン療法の施行により,重症低血糖の頻度は従来療法に比べ約2~6倍に増加することが示されているが,心理学的およびQOLの評価では特に両者の間に差は認めず,合併症発症予防および進展抑制のためにその施行が勧められる.