(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
12.糖尿病に合併した肥満
アブストラクトテーブル
論文コード | 対象 | 方法 | 結果 |
1)吉池信男ほか,2000 コホート研究 レベル3 | 人間ドック受診者(約15万人).日本人を対象 | BMIと,循環器疾患の危険因子である高血圧,高脂血症,高血糖との関係をみた | BMI 24以上で左記の危険因子が増加 |
2)Butler AE et al, 2003 症例対症研究 レベル4 | 124人の剖検成績,BMI 27以上の肥満者91人(2型糖尿病:41人),BMI 25未満の非肥満者33人(2型糖尿病:16人).98%が北欧起源のコーカサス人種 | β細胞容積,アポトーシスの頻度,膵外分泌腺からの新生を検討 | 肥満者のβ細胞のアポトーシスは2型糖尿病で非糖尿病患者の3倍,非肥満者でも2型糖尿病では10倍増加.β細胞容積は2型糖尿病で減少.新生は糖尿病,非糖尿病で同程度 |
3)Finer N et al, 2000 RCT レベル2 | BMI 26以上の肥満2型糖尿病(91人).英国の診療所,医療センター | 500kcal/日+シブトラミン(15mg/日)群vs.500kcal/日only群[12週] | 体重減少により血糖コントロールを改善 |
4)Eriksson J et al, 1999 RCT レベル2 | 過体重でIGT(impaired glucose tolerance)の者(523人).フィンランドの多施設共同研究 | 生活習慣の変更(体重減少,飽和脂肪酸摂取減少,食物繊維の摂取,適度の運動)による介入群122人vs.対照群100人[1年間] | 介入群では約5kgの体重減少と空腹時血糖,OGTT 2時間値の低下,血圧の低下,血清脂質の改善がみられ,生活習慣介入プログラムが糖尿病予防に有効であった |
5)Chow CC et al, 1997 RCT レベル2 | 肥満NIDDM(32人).中国系アジア人を対象とした研究 | diet±スルホニル尿素薬に加えてデキスフェンフルラミン群vs.プラセボ群[3ヵ月] | 体重減少により空腹時血糖,HbA1cを改善.デキスフェンフルラミンの中止により体重がベースラインに戻ると同時に血糖コントロール指標もベースラインに悪化 |
6)Smith DE et al, 1997 RCT レベル2 | 肥満糖尿病女性(22人).アラバマ大学医学部の研究 | 動機づけインタビュー群vs.コントロール群[16週] | 動機づけ群では食事日記,血糖記録をより積極的に行い,血糖コントロールも有意に改善 |
7)Yki-Järvinen H et al, 1997 RCT レベル2 | NIDDM(100人).フィンランドの多施設共同研究 | 肥満,非肥満者におけるスルホニル尿素薬(±メトホルミン)+インスリン(併用)群vs.インスリン単独群 | 肥満者では併用群,単独群とも初期には血糖コントロールは改善するが,体重増加とともに徐々に血糖コントロールは悪化し,インスリン必要量が増加する |
8)UKPDS 24, 1998 RCT レベル2 | 2型糖尿病(4,075人).英国の多施設共同研究 | 食事療法単独,スルホニル尿素薬,インスリン,メトホルミン群[9年] | 大部分の症例では単独治療では目標の血糖コントロールには到達せず,併用が必要であった.特に肥満者では目標に到達しにくい |
9)Avilés-Santa L et al, 1999 RCT レベル2 | インスリン治療中のコントロール不良の2型糖尿病(43人).テキサス大学南西部医療センターの外来患者 | メトホルミン群(21人)vs.コントロール群(22人)[24週] | メトホルミン群では体重増加なく血糖コントロールが改善しインスリン需要量も29%減少した |
10)熊原雄一ほか,1985 RCT レベル2 | 肥満者(228人).日本人を対象 | マジンドール群(114人)vs.コントロール群(114人) | マジンドール群では14週間の使用により体重減少は平均4.5kg,肥満度の減少は9.2%であった |
11)Isomaa B et al, 2001 コホート研究 レベル3 | 家系に2型糖尿病患者のいるNGT,IFG/IGT,type2 DM(4,483人).フィンランドおよびスウェーデンのボツニアスタディに参加した患者 | メタボリックシンドロームの罹患率,追跡期間中央値6.9年間の心血管疾患死亡率の検討 | メタボリックシンドロームの罹患率は,NGT(女性10%,男性15%),IFG/IGT(女性42%,男性64%),type2 DM(女性78%,男性84%),メタボリックシンドロームでの心血管死亡率は12.0%(対照2.2%) |
12)Kawamoto R et al, 2005 症例対照研究 レベル4 | 553人.19人の脳梗塞患者,35人の対照患者.日本人を対象 | メタボリックシンドロームおよび個々のリスクと脳梗塞との関連の検討 | メタボリックシンドロームはatherothromboticな脳梗塞と有意の関連を認めた(オッズ比3.08) |