(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
11.糖尿病大血管症


アブストラクトテーブル

論文コード 対象 方法 結果
1)Tominaga M et al (Funagata Study), 1999
コホート研究
レベル3
1990~1992年に山形県舟形町で実施された糖尿病有病率試験対象者コホート.正常耐糖能群2,016人,IGT(impaired glucose tolerance)群382人,糖尿病群253人 心血管イベントによる累積生存率をCox比例ハザードモデルで解析 IGTは心血管疾患のリスクファクターであるが,IFG(impaired fasting glucose)はリスクファクターではない
2)Fujishima M et al (Hisayama Study), 1996
コホート研究
レベル3
1988年,福岡県久山町に住む40~79歳の住民2,427人に75g経口ブドウ糖負荷試験を行い,5年間追跡.男性では,糖尿病13%,IGT 20%.女性では,糖尿病9%,IGT 19% 耐糖能別の心血管イベント発症率 性と年齢を補正した脳梗塞と心筋梗塞の1,000人年あたりの発症率は,DMでそれぞれ6.5と5.0,正常耐糖能で1.9と1.6.正常耐糖能に対する心血管疾患の相対リスクは,IGTで1.9,DMで3.0
3)Lee WL et al, 2000
コホート研究(メタ解析)
レベル3
男性と女性の両者について冠動脈疾患の発症頻度を検討している10の前向き研究 糖尿病が冠動脈疾患の発症に与える影響が男女で異なるかどうかを検討 糖尿病を合併すると,冠動脈疾患の相対危険度は,女性で2.58,男性で1.85と有意に女性で高かった
4)Nesto RW et al, 1988
コホート研究
レベル3
運動負荷タリウム・シンチグラフィー陽性の労作時狭心症患者.糖尿病合併連続50人,糖尿病非合併連続50人 運動負荷時の狭心痛出現と糖尿病合併との関連を検討 糖尿病患者の14人,非糖尿病患者の34人が狭心痛を訴えた
5)Haffner SM et al, 1998
コホート研究
レベル3
フィンランド人1,373人の非糖尿病者と1,059人の糖尿病患者 7年間の(致死的および非致死的)心筋梗塞および脳卒中,心血管死の発症率 開始時に心筋梗塞の既往がある/ない者の心血管イベントの発症率は,(1)心筋梗塞で,非DMで18.8%/3.5%,DMで45.0%/20.2%,(2)脳卒中は,非DMで7.2%/7.9%,DMで19.5%/10.3%,(3)心血管死は,非DMで15.9%/2.1%,DMで42.0%/15.4%であった
6)Hu FB et al (Nurses' Health Study), 2001
コホート研究
レベル3
30~55歳の米国人女性看護師.DM(-)and CHD(-)109,231人,DM(+)and CHD(-)3,705人,DM(-)and CHD(+)1,302人,DM(+)and CHD(-)234人 2型DMとCHDの既往が,総死亡およびCHD死に与える影響について検討.1976年から1996年まで20年間追跡 追跡期間中8,464人が死亡(CHD死が1,239人).ベースライン時にDMとCHDがない群と比較し,総死亡の年齢補正相対危険度は,DM(+)CHD(-)3.39,DM(-)CHD(+)3.00,DM(+)CHD(+)6.84.年齢補正したCHD死の相対危険度は各々,1.0,8.70,10.6,25.8であった.DMの罹病期間が長いほどCHD死のリスクが上昇
7)Lotufo PA et al, 2001
コホート研究
レベル3
40~84歳の男性医師91,285人.ベースライン時の状態で4群に分類:(1)DM(-)CHD(-)82,247人,(2)DM(+)CHD(-)2,317人,(3)DM(-)CHD(+)5,906人,④DM(+)CHD(+)815人 DMとCHDの既往歴が総死亡とCHD死に与える影響を検討.5年間追跡 追跡期間中に3,627人が死亡(CHD死が1,242人).DM(-)CHD(-)と比べた年齢補正相対危険度は,総死亡;DM(+)CHD(-)2.3,DM(-)CHD(+)2.2,DM(+)CHD(+)4.7:CHD死;DM(+)CHD(-)3.3,DM(-)CHD(+)5.6,DM(+)CHD(+)12.0.BMI,喫煙,飲酒,身体活動度で補正しても同様の結果
8)Evans JM et al, 2002
コホート研究
レベル3
横断研究:45~64歳の2型DM患者1,155人,MI既往者1,347人コホート研究:すべての年齢の新規に2型DMと診断された3,477人,心筋梗塞発症患者7,414人 2型DMとCHDが心血管疾患のリスクに与える影響を検討.総死亡と心血管疾患死,心筋梗塞による入院に対するリスク比を年齢と性別で補正したCox回帰分析で検討 DM群に対するMI群のリスク比
横断研究:総死亡2.27(95%CI 1.82~2.83),心筋梗塞による入院1.33(1.14~1.55)
コホート研究:総死亡1.35(1.25~1.44),心血管疾患死2.93(2.54~3.41),心筋梗塞による入院3.10(2.57~3.73)
9)Natarajan S et al, 2005
コホート研究
レベル3
米国NHANES I follow-up study.ベースライン時35~74歳の10,871人 DMの罹病期間とCHD死の関連について検討.RDM群(DM罹病期間<10年),LDM群(10年以上) 1000人年あたりのCHD死(95%CI)
  男性 女性
DM(-)MI(-) 5.5(4.8~6.2) 2.9(2.5~3.3)
MIのみ 15.2(11.6~20.0) 7.3(5.0~10.8)
RDMのみ 13.2(7.9~22.1) 5.2(3.5~7.7)
LDMのみ 11.4(6.4~20.3) 10.7(7.5~15.5)
MI+RDM 36.0(16.7~77.7) 9.3(4.3~19.9)
MI+LDM 35.4(14.0~89.7) 21.6(6.1~76.0)
10)Lee CD et al (ARIC study), 2004
コホート研究
レベル3
45~64歳のアフリカ系米国人および白人13,790人 DMとCHDの既往歴がCHDおよび脳卒中イベント,CVD死に与える影響を検討.9年間追跡 追跡期間中に634人のCHDイベント,312の脳卒中,358のCVD死が発症.ベースラインの年齢,性別,人種,フォローアップ施設で補正したDM(+)MI(-)に対するDM(-)MI(+)における相対リスクは,CHDイベント1.9倍,CVD死1.8倍,脳卒中のリスクは同等
11)Juutilainen A et al, 2005
コホート研究
レベル3
45~65歳のフィンランド人.DM患者1,059人,非DM者1,373人 CHD既往のないDM患者のCHD死のリスクがCHD既往のある非DM者と同等かどうかをCox回帰分析で検討 CHD(+)DM(-)に対するCHD(-)DM(+)のCHD死のリスクは,0.9(0.6~1.5).男性で0.9(0.5~1.4),女性で1.9(0.6~6.1).総死亡とCVD死のリスクも同様
12)Abbott RD et al (Framingham Study), 1988
コホート研究
レベル3
Framingham Studyの34年間の追跡研究 試験開始時に心筋梗塞の既往を有する患者における心筋梗塞の再発と致死的冠動脈疾患の発症に対する糖尿病の影響を調査 非糖尿病者では,致死性心筋梗塞の発症率は,女性は男性の0.6倍.糖尿病を合併すると,心筋梗塞の再発率は,女性は男性の2倍.糖尿病合併の非合併に対する心筋梗塞再発の相対危険度は,男性で1.1,女性で2.1(p<0.01).糖尿病患者における心不全の発症率は,非糖尿病者に比べて,男性で1.5倍,女性で4倍.
13)Tanizaki Y et al (Hisayama Study), 2000
コホート研究
レベル3
40歳以上の脳梗塞の既往のない日本人1,621人(男性707人)を1961年から32年間追跡 脳梗塞のサブタイプの頻度と危険因子について検討.追跡期間中に298の脳卒中が発症し,167がラクナ梗塞,62がアテローム血栓性,56が心原性塞栓,13が不明 年齢補正した1000人年あたりの発症率は,ラクナ梗塞(男性3.8,女性2.0)の頻度がアテローム血栓性梗塞(1.2,0.7)と心原性塞栓(1.3,0.5)に比べて有意に高頻度であった.収縮期血圧と年齢は,男性の心原性塞栓を除くすべてのタイプの脳梗塞の独立した危険因子であった.耐糖能障害の年齢補正相対危険度(RR)は,男性で脳梗塞全体1.8,ラクナ梗塞2.3.女性で脳梗塞全体1.9,ラクナ梗塞2.0.多変量解析では,男性の脳梗塞全体とラクナ梗塞で耐糖能障害は独立した危険因子であった
14)Iso H et al, 2004
コホート研究
レベル3
ベースライン時に脳卒中と冠動脈疾患の既往のない40~69歳の日本人10,582人(男性4,287人) 2型糖尿病と虚血性脳卒中の関連について検討.平均追跡期間16.9年 正常血糖者に比べて糖尿病患者は非塞栓性虚血性脳卒中のリスクが約2倍であった
15)Megherbi S-E et al, 2003
コホート研究
レベル3
初めて脳卒中を発症し入院した4,537人.21%(937人)が糖尿病患者.欧州の7ヵ国の12センター 糖尿病患者の脳卒中の特徴と予後,機能障害について検討 DM患者は非DM患者に比べて肢筋力低下および構音障害,虚血性脳卒中,ラクナ梗塞のリスクが有意に高かった.3ヵ月後の死亡率はDM群で有意な差は認めなかった(p=0.33)が,機能予後はDM群で有意に不良
16)Kimura K et al (J-MUSIC), 2005
コホート研究
レベル3
1999年5月から2000年4月まで日本の156の病院から集められた16,922人の脳梗塞またはTIA患者 脳梗塞もしくはTIAにて入院した患者の退院後1年間の累積死亡率と死因について検討し,その予測因子について検討.15,322人に質問票を郵送.平均271日追跡 10,981人(男性6,945人,平均年齢70歳)が追跡された.1年後の累積死亡率は6.8%(10,234人の脳卒中患者の7.0%と747人のTIA患者の3.5%).死因;脳血管障害24.1%,肺炎22.6%,心疾患18.1%,癌18.1%,その他24.1%.多変量解析では男性,年齢,糖尿病,心房細動,脳卒中の既往歴,ラクナ梗塞以外,機能障害,転院が独立した死亡の予測因子.DMによる総死亡のハザード比は1.42(95%CI 1.17~1.71)
17)Newman AB et al (Cardiovascular Health Study), 1993
ケースコントロール研究
レベル4
65歳以上の5,084人 足関節/上腕血圧比(ankle-arm index:AAI)と心血管疾患発症,合併疾患,危険因子との関連について解析 AAI<0.8の群は,AAI 1.0~1.5の群に比べて,心筋梗塞および狭心症,心不全,脳卒中,一過性脳虚血発作の既往がいずれも2倍以上.心血管疾患を有さない集団では,AAIは高血圧,糖尿病,喫煙,収縮期血圧,クレアチニン濃度,空腹時血糖,空腹時インスリン濃度,呼吸機能,フィブリノーゲンと負の相関を示した.AAI<1.0の危険因子は,喫煙(オッズ比2.55)と糖尿病(3.84),年齢(1.54),白人以外の人種(OR 2.36)
18)Kallio M et al, 2003
コホート研究
レベル3
130人のフィンランド人2型糖尿病患者.平均年齢58歳 末梢動脈閉塞症(PAOD)の頻度とその危険因子,転帰について検討.平均追跡期間11年.ABI<0.9またはTBI<0.64(ABI>1.15の場合)でPAODを診断 ベースライン時21人(16%)がPAODを合併.追跡期間中89人(24%)がPAODを新たに発症.29人が死亡し,21人が心血管疾患死であった.PAOD合併は非合併に比べて死亡率が高かった(58 vs. 16%,p<0.001).ロジット回帰分析では,ベースライン時のPAODの合併は年齢,DM歴,喫煙,尿アルブミン排泄率と関連していた.追跡中にPAODを発症した患者は,PAODを発症しなかった患者よりもLDL-Cが高く,HDL-Cが低値,高齢であった
19)Krolewski AS et al, 1987
コホート研究
レベル3
292人の若年発症1型糖尿病患者を20~40年追跡 若年性冠動脈疾患発症の危険因子について検討 冠動脈疾患死は30歳後半から認められ,以後,急激に増加.冠動脈疾患死に男女差は認められなかったが,腎症合併で高率.55歳までの冠動脈疾患死の累積死亡率は35%で,Framingham studyの非糖尿病者の男性8%,女性4%よりも高率.45~59歳の生存者の33%に冠動脈疾患が合併.糖尿病の発症年齢や眼合併症の存在は若年性冠動脈疾患のリスクを増加させなかった
20)Fuller JH et al (WHO MSVDD), 2001
コホート研究
レベル3
WHO Multinational Study of Vascular Disease in Diabetesに登録された10センター(ロンドン,スイス,ワルシャワ,ベルリン,ザグレブ,香港,東京,ハバナ,オクラホマ,アリゾナ)の4,743人の糖尿病患者.1型糖尿病は,男性659人,女性601人.2型糖尿病は,男性1,661人,女性1,822人.約12年間追跡 致死性および非致死性心血管疾患の発症率 1型および2型DMの心血管疾患死,心筋梗塞,脳卒中の危険因子は高血圧と高脂血症,蛋白尿.高トリグリセリド血症は,1型DM女性と2型DMにおける心血管死,2型DM女性の脳卒中と関連.空腹時血糖は,2型DMの心血管死,心筋梗塞,脳卒中と関連.2型DMにおいて,空腹時血糖は,2型DMにおける心血管疾患死の独立した危険因子.トリグリセリドは,2型DM男性において心血管疾患死の独立した危険因子.網膜症の存在は,1型および2型DMの心血管疾患死と心筋梗塞,2型DMの脳卒中と関連
21)Borch-Johnsen K et al, 1987
コホート研究
レベル3
1933~1972年の間に31歳以前に診断された2,890人の1型糖尿病患者.糖尿病診断時から1994年1月まで追跡 蛋白尿が1型糖尿病の心血管疾患による死亡率に与える影響を検討 蛋白尿を認める1型糖尿病患者の死亡率は一般人口の37倍で,蛋白尿を認めない場合は4.2倍.一般人口に対する糖尿病患者の相対死亡率は,蛋白尿合併の有無にかかわらず女性で男性の2倍.相対死亡率は,糖尿病罹病期間とは相関しなかった
22)UKPDS 23, 1998
コホート研究
レベル3
UKPDSの患者のうちデータの完備した2,693人 虚血性心疾患の発症リスクをベースラインデータからCox比例ハザードモデルで解析 LDL-C高値,HDL-C低値,高血圧,高血糖,喫煙が2型糖尿病における虚血性心疾患のリスクファクターであった
23)UKPDS 29, 1999
コホート研究
レベル3
UKPDSの患者のうち関連するデータの揃った3,776人 Cox比例ハザードモデルによりハザード比を算出 脳卒中発症のリスクファクターは年齢,男性であること,高血圧,心房細動であった
24)清原裕(久山町研究),2000
コホート研究
レベル3
1988年に久山町の成人検診を受診した40~79歳の住民2,490人に対して75gOGTTを行った.このうち,脳卒中および心筋梗塞の既往のある者を除いた2,424人を8年間追跡.1998年のWHO新基準によって判定.DMは男性15%,女性10%,IGTは男女とも19% 糖尿病の有無別に循環器疾患(脳梗塞と心筋梗塞)発症とその危険因子の関係を検討.追跡開始時の各危険因子[空腹時血糖値,HbA1c,コレステロール,トリグリセリド(TG),HDL-C,LDL-C,BMI,収縮期および拡張期血圧]のレベル別に循環器疾患発症の相対危険度をCox比例ハザードモデルで解析 非糖尿病者の循環器疾患の危険因子およびその閾値は,LDL-C160mg/dL以上,HDL-C30mg/dL未満,収縮期血圧140mmHg以上,拡張期血圧95mmHg以上であった.糖尿病では,空腹時血糖120mg/dL以上,HbA1c 5.5%以上,総コレステロール220mg/dL以上,BMI23以上,収縮期血圧130mmHg以上
25)曽根博仁ほか(JDCS),2005
コホート研究
レベル3
HbA1cが6.5%以上で45~70歳の日本人2型DM患者2,205人 血糖および脂質,血圧,生活習慣と合併症の発症について検討 8年間の追跡期間中,心血管疾患の発症は175例(重複発症者も含む).1000人年あたりの発症率は,冠動脈疾患8.8(男性10.6,女性6.8),脳卒中7.9(男性8.5,女性7.0).冠動脈疾患の危険因子は,LDL-C,男性,TGであり,脳卒中の危険因子は収縮期血圧
26)Adler AI et al (UKPDS 64), 2003
コホート研究
レベル3
UKPDSに登録した新規発症2型DM患者5,097人 腎症のステージ間の移行と頻度,累積発症率,10年生存率,総死亡または心血管疾患死のリスクについて検討 腎症なしから微量アルブミン尿への移行は2.0%/年,微量アルブミン尿から顕性期腎症への移行は2.8%/年,顕性期腎症から腎不全期への移行は2.3%/年.総死亡は,腎症なしで1.4%/年,微量アルブミン尿3.0%/年,顕性期腎症4.6%/年,腎不全期19.2%/年.心血管疾患死のリスクは,腎症なし0.7%/年,微量アルブミン尿2.0%/年,顕性期腎症3.5%/年,腎不全期12.1%/年と腎症が進行するにつれて増加(p<0.0001)
27)Wachtell K et al, 2003
コホート研究
レベル3
LIFEスタディに登録したステージIIまたはⅢ高血圧患者8,206人.ロサルタン群とアテノロール群にランダム化し39,122人年追跡 尿中アルブミン排泄量と心血管リスクの関連について検討
複合一次エンドポイント;心血管疾患死,非致死的または致死的脳卒中,非致死的または致死的心筋梗塞
非DM者では,複合一次エンドポイントのリスクはアルブミン排泄量が増加するにつれて連続して上昇(p<0.001).イベントのリスク上昇に閾値は認められなかった.アルブミン排泄量が10倍増加するごとに,非DM者のハザード比は以下のように増加;複合一次エンドポイント57%(95%CI 40.6~75.0%),心血管疾患死97.7%(66.5~235%),総死亡75.2%(54.0~99.4%),脳卒中51.0%(28.8~76.9%),心筋梗塞45%(19.9~75.4%)(すべてp<0.001).DM患者でも心筋梗塞の傾向が弱く有意でなかった以外は同様の傾向が認められた
28)Gerstein HC et al, 2001
コホート研究
レベル3
HOPEスタディに登録した55歳以上の患者;心血管疾患の既往者5,545人とDMに1つ以上の心血管危険因子を有する3,498人 微量アルブミン尿と主要心血管イベント(心筋梗塞,脳卒中または心血管疾患死)の関連について検討.平均4.5年間追跡 ベースライン時,DM患者の32.6%,非DM患者の14.8%が微量アルブミン尿が陽性.微量アルブミン尿では,主要心血管イベント(補正RR 1.83),総死亡(2.09),うっ血性心不全による入院(3.23)のリスクが有意に上昇していた.これらのリスクはDMの有無で層別しても同等であった.40mg/gCre上昇するごとに主要心血管イベントのハザード比は5.9%増加する
29)Orchard TJ et al, 2003
コホート研究
レベル3
1950~1980年に18歳以前に診断された1型糖尿病患者を603人.1986~1988年にベースラインの評価を行い,10年間追跡.ベースラインの平均年齢と平均罹病期間は,28歳と19年.明らかな冠動脈疾患を合併している患者は除外 1型糖尿病の初発冠動脈疾患の危険因子について検討 10年間の追跡期間中に108の冠動脈イベントが発症.血圧,脂質値,炎症マーカー,腎症,末梢血管障害は,no CAD,angina,hard CADとなるにつれて増加したが,CADとインスリン感受性,身体活動度には負の関連が認められた.また,うつは狭心症と関連していたが,HbA1cと冠動脈疾患には関連が認められなかった
30)Sone H et al (JDCS), 2005
コホート研究
レベル3
心血管疾患の既往のない日本人2型糖尿病患者1,424人.8年間追跡 診断基準:NCEP ATP III(腹囲は男性≧85cm,女性≧90cmを使用),WHO MetS合併による心血管イベントの発症をCox回帰分析で検討 MetSの頻度は,WHO基準で男性51%,女性53%,NCEP基準で男性45%,女性38%.MetS合併によるCHD発症のHR(95% CI)は,WHO基準で男性1.3(0.7~2.4),女性2.8(1.0~7.9),NCEP基準で男性1.9(1.0~3.6),女性1.7(0.7~4.0).MetS合併による脳卒中発症のHRは,WHO基準で男性2.0(0.9~4.1),女性3.7(1.4~9.9),NCEP基準で男性1.4(0.7~2.8),女性1.3(0.6~2.8).MetS合併によるCVD発症のHRは,WHO基準で男性1.6(1.0~2.6),女性3.2(1.6~6.5),NCEP基準で男性1.8(1.1~3.8),女性1.4(0.8~2.5).MetSの構成要素の合併数のカットオフ値を増やしてもCVDリスクは増加せず,男性ではむしろHRは低下
31)DCCT/EDIC, 2005
コホート研究
レベル3
13~39歳の冠動脈疾患を有さない1型糖尿病患者1,441人.高血圧または高脂血症,肥満の合併は除外.平均6.5年間の試験終了後,従来療法群も強化療法を行った.試験終了後もDCCTコホートは追跡(2005年2月まで追跡) 強化療法群vs.通常療法群.主要評価項目;心血管疾患(非致死的心筋梗塞,脳卒中,心血管疾患死,確定した狭心症,血行再建術).平均17年間追跡 強化療法群と従来療法群のHbA1c は,DCCT開始時9.1%vs.9.1%,DCCT終了時7.4%vs.9.1%,2004年7.9%vs.7.8%であった.追跡期間中に発症した心血管イベントは,強化療法群で31人に46イベント,従来療法群で52人に98イベント.強化療法群のリスク低下は,全心血管イベントで42%(95%CI9~63%,p=0.02),主要心血管イベントで57%(12~79%,p=0.02).DCCT期間中のHbA1cの低下が,強化療法群の心血管疾患のリスク低下の大部分に関与.微量アルブミン尿およびアルブミン尿は心血管疾患のリスクを有意に上昇させるが,これらで補正しても治療群による心血管イベントの差異は有意であった(p≦0.05)
32)UKPDS 33, 1998
RCT
レベル1
新規に診断された2型糖尿病患者3,867人(25~65歳).スルホニル尿素(SU)薬またはインスリンによる強化療法群(2,729人)と食事療法を中心とした通常療法群(1,138人) 通常療法群は食事療法を基本とし,空腹時血糖が15mmol/Lを超える場合または高血糖による症状が認められる場合のみ薬物療法を追加.HbA1cを強化療法群で7.0%(6.2~8.2%),通常療法群で7.9%(6.9~8.8%)にコントロールし,10年間追跡 強化療法群と通常療法群における心筋梗塞および脳卒中,末梢血管障害の発症率は,各々,14.2%vs.16.3%(p=0.052),5.4%vs4.8%(p=0.52),1.1%vs.1.6%(p=0.15)であった
33)Lawson ML et al, 1999
メタアナリシス
レベル2
2年以上の試験期間で,インスリン強化療法と通常療法を比較した6つのランダム化比較試験 インスリン強化療法vs通常療法 強化療法は大血管症(狭心症,心筋梗塞,血管形成術,CABG,脳卒中,間歇性跛行,末梢血管バイパス術)のイベント数を有意に減少させた(OR 0.55)が,大血管症イベントの患者数(OR 0.72,p=0.22)と大血管症による死亡(OR 0.91,p=0.93)には有意差は認められなかった
34)Nakanishi S et al, 2005
コホート研究
レベル3
広島と長崎の被爆者3,710人.平均年齢67.6歳,男性1,142人 ベースライン時のHbA1c値によって5群にグループ化;
正常群:HbA1c<5.5%(n=1,143)
正常高値群;5.5%≦HbA1c<6.0%(n=1,341)
軽度高値群;6.0%≦HbA1c<6.5%(n=589)
高値群;6.5%≦HbA1c(n=259)
既知の2型糖尿病群(n=378)
HbA1cと心血管発症との関連をCox回帰分析で検討.平均8.83年追跡
追跡期間中に754人が死亡.総死亡および心血管疾患死のハザード比は軽度高値群で有意に上昇していた.癌死のハザード比は高値群と糖尿病群で上昇していた
35)UKPDS 35, 2000
コホート研究
レベル3
UKPDSコホート4,585人のうち,3,642人 糖尿病関連合併症と最新のHbA1cとの関連を解析 糖尿病合併症の発症は血糖コントロールと有意に関連.最新HbA1cが1%低下することにより,糖尿病合併症は以下のように減少:すべての糖尿病関連エンドポイント21%,糖尿病関連死21%,心筋梗塞14%,脳卒中12%,閉塞性動脈硬化症による死亡または下肢切断43%,心不全16%,細小血管症37%.すべてのエンドポイントにおいて,合併症の発症にHbA1cの閾値は認められなかった
36)Selvin E et al, 2004
コホート研究(メタアナリシス)
レベル3
1966年から2003年7月までに英文で発表されたグリコヘモグロビン値と心血管イベント発症に関する検討を行った13の前向きコホート研究.3つのスタディは1型DM(n=1,688),10のスタディは2型DM(n=7,435)を対象 DM患者のグリコヘモグロビン値と心血管イベント(冠動脈疾患と脳卒中)との関連について検討 グリコヘモグロビン値1パーセントポイント上昇に対する心血管イベントの発症リスク(95%CI)
  1型DM 2型DM
心血管イベント   1.18(1.10~1.26)
冠動脈疾患 1.15(0.92~1.43) 1.13(1.06~1.20)
脳卒中   1.17(1.09~1.25)
閉塞性動脈硬化症 1.32(1.19~1.45) 1.28(1.18~1.39)
37)Muntner P et al, 2005
横断研究
レベル4
NHANES1999-2002登録者のうち40歳以上の4,526人 ABI<0.9を末梢動脈閉塞症と診断.HbA1c値と閉塞性動脈硬化症の関連について検討 末梢動脈閉塞症の年齢調整有病率は,HbA1c<5.3%,5.3~5.4%,5.5~5.6%,5.7~6.0%で,各々3.1%,4.8%,4.7%,6.4%(p<0.001).DM患者における閉塞性動脈硬化症の有病率は,HbA1c<7%と≧7.5%で,各々7.5%と8.8%であった.多因子補正後の閉塞性動脈硬化症のオッズ比(95%CI)は,HbA1c<5.3%と比べて,HbA1c5.3~5.4%,5.5~5.6%,5.7~6.0%で,各々1.41(0.85~2.32),1.39(0.70~2.75),1.57(1.02~2.47).DMでは,HbA1c<7%と7%以上で,2.33(1.15~4.70)と2.74(1.25~6.02)であった
38)Khaw KT et al (EPIC Norfolk), 2001
コホート研究
レベル3
HbA1cを測定した45~79歳のイギリス人男性4,662人 HbA1cと総死亡,心血管疾患死,冠動脈疾患死,その他の死亡との関連について検討.1995~1997年にベースラインの評価を行い,1999年12月まで追跡 糖尿病を有する男性は,糖尿病のない男性よりも総死亡,心血管死,冠動脈疾患死が有意に高率(年齢と他の危険因子で補正した相対危険度は,各々,2.2,3.3,4.2).すべての住民において,総死亡率,心血管疾患死率,冠動脈疾患死率は,HbA1cと連続的に関連.HbA1c<5%が最低で,HbA1cが1%上昇することに,死亡のリスクは,年齢,血圧,コレステロール値,BMI,喫煙と独立して28%増加
39)Nakagami T (DECODA), 2004
コホート研究
レベル3
日本人およびインド系民族6,817人.5ヵ国の5つの前向き研究;日本人(n=2,154),日系ブラジル人(n=573),日系米国人(n=608),インド系民族(モーリシャスn=2,676,フィジーn=806) FPG,2h-PGおよび確立された危険因子で補正した総死亡および心血管疾患のハザード比をCox回帰分析で検討 FPG 126mg/dLから144mg/dLへ上昇(0.76SD上昇)することによる相対危険度(95%CI)は,総死亡で1.14(1.05~1.25),心血管疾患死で1.24(1.10~1.39).2hPGが162mg/dLから214mg/dLに上昇(0.76SD上昇)することによる相対危険度は,総死亡1.29(1.18~1.14),心血管疾患死1.35(1.19~1.54).FPGに2hPGを加えることにより予測値は改善(p<0.001)するが,2hPGにFPGを加えても予測値に改善は認められない(p>10).2hPGがIGTまたはDMの場合,総死亡のハザード比は正常に比べて1.35(1.03~1.77),3.03(2.18~4.21),心血管疾患死は1.27(0.86~1.88),3.39(2.14~5.37).FPGがIFGまたはDMの場合,総死亡のハザード比は0.94(0.68~1.31),0.88(0.59~1.32),心血管疾患死は1.05(0.67~1.65),0.88(0.51~1.51)
40)Matsumoto K et al, 2001
症例対照研究
レベル4
冠動脈疾患を合併した2型DM患者33人と年齢と性別をマッチさせた冠動脈疾患(CAD)の合併のない2型DM患者33人 日本人2型DM患者のCADの発症にインスリン抵抗性が関与しているかどうかを検討.インスリン抵抗性はインスリン負荷試験(ITT)のKITTで評価 CAD(-)群に比べてCAD(+)群はDMの罹病期間が有意に長く,高血圧の割合およびインスリン治療の割合が有意に高かった.CAD(+)群はインスリン抵抗性(2.40 vs. 3.23%/min)とTG値,Lp(a)値が有意に高く,HDL-C値が有意に低かった.多重ロジスティック分析では,高血圧,インスリン抵抗性,高Lp(a)値,高TG値,低HDL-C値がCADの独立した危険因子であった
41)Matsumoto K et al, 1999
症例対照研究
レベル4
2型DM患者にMRIとMRアンギオグラフィーを行い,正常であった群(NOR;n=30),ラクナ梗塞群(LAC;n=28),アテローム血栓性脳梗塞(ATI;n=22),脳動脈硬化(LAA;n=14)に分類 インスリン抵抗性をインスリン負荷試験によるK値(KITT)で評価 LACおよびATI,LAA患者はNOR患者に比べて高齢で血圧が高値.NORに比べてLAC,ATI,LAAは有意にインスリン抵抗性が高値.年齢,性別,BMI,DMの罹病期間で補正しても結果に影響なし.多重ロジスティック回帰分析では,インスリン抵抗性は2型糖尿病のすべてのタイプの虚血性脳卒中の独立した危険因子であった.また,脈圧の上昇はLACの,食後血清CPR高値はATIの,DM罹病期間はLAAの独立した危険因子であった
42)UKPDS 34, 1998
RCT
レベル1
UKPDSの患者4,075人中,肥満2型糖尿病患者(標準体重の120%以上)1,704人 通常療法群411人,強化療法群:メトホルミン群342人,クロルプロパミド群265人,グリベンクラミド群277人,インスリン群409人を10.7年間(中央値)追跡 10年間のHbA1c(中央値)は通常療法群8.0%,メトホルミン群7.4%.SU剤およびインスリン治療群でもメトホルミン群と同等のHbA1c値.従来療法群に比べてメトホルミン群では,糖尿病関連エンドポイントおよび糖尿病関連死,総死亡が,各々,32%,42%,36%低下.強化療法群では,SU剤およびインスリン群に比べてメトホルミン群で糖尿病関連エンドポイントおよび総死亡,脳卒中で有意に低下していた
43)Dormandy JA et al (PROactive), 2005
RCT
レベル1
心血管疾患を合併する2型糖尿病患者5,238人(男性3,463人,白人5,164人).平均年齢61.8歳,2型糖尿病の平均罹病期間8年.試験開始前に62%がメトホルミンを内服し,62%がSU薬を内服,30%以上がインスリン治療.合併する心血管疾患は,冠動脈疾患患者患者48%,脳卒中19%,症状を有する閉塞性動脈硬化症20%.2つ以上の心血管疾患を合併する患者も約半数 ピオグリタゾン群(15~45mg/日)とプラセボ群に無作為に割付.HbA1c<6.5%を目標に血糖コントロール.抗血小板薬および高脂血症治療薬,降圧薬を至適用量となるよう投与.一次エンドポイント;総死亡+非致死的心筋梗塞(無痛性心筋梗塞を含む)+急性冠症候群+冠動脈または下肢動脈に対する血行再建術+足関節以上の足切断.主要二次エンドポイント;総死亡+非致死的心筋梗塞+脳卒中.平均34.5ヵ月追跡 ピオグリタゾン群の514人,プラセボ群の572人に少なくとも1回以上の複合一次エンドポイントが発症(HR0.90,95%CI0.80~1.72,p=0.095).主要二次エンドポイントの発症は,ピオグリタゾン群301人,プラセボ群358人(0.84,0.72~0.98,p=0.027).ピオグリタゾン群の6%,プラセボ群の4%が心不全で入院した(p=0.003)
44)Chiasson JL et al (STOPNIDDM), 2003
RCT(サブ解析)
レベル1
1,368人のIGT患者(男性49%,白人98%,平均年齢54.5歳,平均BMI 30.9) アカルボース300mg/日vs.プラセボ.主要観察項目;主要心血管イベント(CHD,CVD死,うっ血性心不全,脳血管障害,閉塞性動脈硬化症)と高血圧(≧140/90).平均追跡期間3.3年 アカルボース群211人,プラセボ群130人が脱落したが,試験終了時まで追跡しintention-to-treatで解析.主要心血管イベントの発症はアカルボース群で有意に低値(HR 0.51,95%CI 0.28~0.95,絶対リスク低下2.5%).心血管イベントのうち心筋梗塞の発症抑制が主であった(HR 0.09,0.01~0.72).高血圧発症もアカルボース群で有意に低値(HR 0.66,0.49~0.89,絶対リスク低下5.3%).アカルボースによる心血管イベントおよび高血圧の発症抑制は,主要な危険因子で補正しても有意であった
45)Hanefeld M et al, 2004
メタアナリシス
レベル2
52週間以上の試験期間がある2型DMを対象としたアカルボースの7つのRCT アカルボース(n=1248)vs.プラセボ(n=932).主要観察項目;心血管イベント発症までの期間 アカルボース群では,HbA1c,FPG,1hPPG,2hPPG,TG,体重,BMI,収縮期血圧のすべてがプラセボ群に比べて有意に低下した.アカルボース群はプラセボ群に比べて心筋梗塞(HR 0.36,95%CI0.16~0.80)と全心血管イベント(HR 0.65,0.48~0.88)が有意に低下
46)UKPDS 38, 1998
RCT
レベル1
UKPDSの2型糖尿病患者のうち高血圧を合併する1,148人(平均年齢56歳,エントリー時の平均血圧160/94mmHg) ACE阻害薬もしくはβ遮断薬を中心とし,目標血圧を<150/85mmHgとする厳格コントロール群758人と<180/105mmHgとする非厳格群390人に無作為に割り付け,8.4年(中央値)追跡 平均血圧は,厳格コントロール群で有意に低下(144/82mmHgvs.154/87mmHg).厳格コントロール群では非厳格コントロール群と比べて,糖尿病関連エンドポイントは24%,糖尿病関連死は32%,脳卒中は44%減少
47)Schrier RW et al (normotensive ABCD study), 2002
RCT
レベル1
拡張期血圧が80~89mmHgで,40~72歳の2型糖尿病患者480人 厳格コントロール群(ニソルジピンまたはエナラプリル)はベースラインの拡張期血圧よりも10mmHg低下を目標に降圧薬を増量.中等度コントロール群(プラセボ)は80~89mmHgを目標とし,収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧90mmHgでニソルジピンまたはエナラプリルを追加.平均5.3年間追跡 平均血圧は,厳格コントロール群で128/75mmHg,中等度コントロール群で137/81mmHg.両群間でクレアチニン・クリアランスに差は認められなかったが,厳格コントロール群で正常アルブミン尿から微量アルブミン尿への進展および微量アルブミン尿から顕性アルブミン尿への進展を有意に抑制.また,厳格コントロール群では,網膜症の進展と脳卒中の発症が抑制.心筋梗塞の発症は両群間で有意差なし.ニソルジピンとエナラプリルの効果に有意差はなし
48)HOT Study Group, 1998
RCT(サブ解析)
レベル1
拡張期血圧が100~115mmHgで50~80歳(平均61.5歳)の高血圧患者18,790人.1,501人の糖尿病患者を含む フェロジピンを基礎薬として目標血圧≦90mmHg(6,264人),≦85mmHg(6,264人),≦80mmHg(6,262人)となるよう降圧.アスピリン75mg/日(9,399人)とプラセボ(9,391人)をランダムに割付.平均3.8年追跡 拡張期血圧は,≦90mmHg群,≦85mmHg群,≦80mHg群で,それぞれ,20.3mmHg,22.3mmHg,24.3mmHg低下.3群間で心血管イベントの発症に差は認められなかった.糖尿病群における主要心血管イベントは,≦90mmHg群に比べて≦80mmHg群で51%減少した.アスピリンの投与は,心血管イベントを15%,心筋梗塞を36%抑制した.非致死性の出血の副作用は,アスピリン群で2倍に増加したが,致死性の出血の副作用には差が認められなかった
49)Tuomilehto J et al (Syst-Eur), 1999
RCT(サブ解析)
レベル1
収縮期血圧160~219mmHgで拡張期血圧が95mmHg未満の60歳以上の高血圧患者4,695人.うち,糖尿病患者492人 ニトレンジピンvs.プラセボ.追跡期間(中央値)2年間 プラセボ群と実薬群の収縮期血圧と拡張期血圧の差は,糖尿病群で8.6mmHgと3.9mmHg,非糖尿病群で10.3mmHgと4.5mmHg.糖尿病群では,プラセボ群に比べて実薬群で,総死亡55%(p=0.04),心血管疾患死76%(p=0.02),心血管イベント69%(p=0.01),脳卒中73%(p=0.13),心イベント63%(p=0.12)減少.非糖尿病患者群では,心血管イベントが26%,脳卒中が38%低下.実薬群では,非糖尿病群に比べて糖尿病群のほうが,総死亡,心血管疾患死,心血管イベントの低下率が有意に大きかった
50)Curb JD et al (SHEP), 1996
RCT(サブ解析)
レベル1
60歳以上の収縮期高血圧患者(収縮期血圧≧160mmHg,拡張期血圧<90mmHg)4,736人.583人が2型糖尿病,4,149人が非糖尿病 クロルタリドンvs.プラセボ.5年間追跡 非糖尿病患者群と糖尿病患者群ともに,実薬群で有意に血圧は低下.非糖尿病患者群と糖尿病患者群ともに,実薬群で主要心血管イベントは34%低下.糖尿病患者群における絶対リスク低下は,非糖尿病患者群の約2倍であった
51)Berthet K et al (PROGRESS), 2004
RCT(サブ解析)
レベル1
脳梗塞またはTIAの既往のある6,105人を対象としたPRGRESSトライアルの761人のDM患者を対象としたサブスタディ.平均年齢64歳,女性28%,アジア人(日本および中国)41% ペリンドプリル±インダバミドvs.プラセボ.平均追跡期間3.9年.一次エンドポイント;脳卒中 DMの合併は脳卒中の再発リスクが35%(95%CI 8~58%)上昇し,大部分は虚血性脳卒中.実薬により,DM群で血圧が9.5/4.6mmHg,非DM群で8.9/3.9mmHg低下.脳卒中のリスク低下は,DM群で38%(95%CI 8~58%),非DM群で28%(16~39%)であり,DM群と非DM群で治療効果に有意差なし.DM群におけるペリンドプリル群の5年間における脳卒中予防のNNTは16(95%CI 9~111)
52)UKPDS36, 2000
コホート研究
レベル3
UKPDSの患者4,801人のうちデータの完備した3,642人 糖尿病の合併症と最新の収縮期血圧値との関連をCox比例ハザードモデルで解析 白内障以外の合併症の発症は収縮期血圧と有意に関連していた.最新の平均収縮期血圧が10mmHg低下するごとに,合併症のリスクは以下のように減少:糖尿病関連合併症12%,糖尿病関連死15%,心筋梗塞12%,細小血管症13%,脳卒中19%,閉塞性動脈硬化症による下肢切断16%
53)Yui Y et al (JMIC-B), 2004
オープンラベル試験(サブ解析)
レベル2
冠動脈疾患を合併した日本人高血圧患者1,650人 徐放性ニフェジピン製剤vs.ACE阻害薬(エナラプリルまたはイミダプリル,リシノプリル).一次エンドポイント;全心イベント(心臓死または突然死,心筋梗塞,狭心症または心不全による入院,重症不整脈,冠動脈インターベンション).二次エンドポイント;脳血管障害と腎機能悪化,非心血管イベント,総死亡 DM群において,ニフェジピン群(n=199)とACE阻害薬群(n=173)には,一次エンドポイント発症に有意な差は認められなかった(15.08%vs.15.03%;RR1.06,p=0.838).非DM群においてもニフェジピン群(n=629)とACE阻害薬群(n=649)で一次エンドポイントに有意差は認められなかった(13.67% vs 12.33%,RR 1.04,p=0.792).DM群,非DM群ともに二次エンドポイントにも有意差は認められなかった
54)Kostis JB et al (SHEP), 2005
レトロスペクティブ研究
レベル4
60歳以上の収縮期高血圧患者(収縮期血圧≧160mmHg,拡張期血圧<90mmHg)4,736人.SHEP(平均4.3年間追跡)終了後も追跡 クロルタリドンvsプラセボ.14.3年間追跡.プラセボ群を基準としてCox比例ハザードモデルで解析 心血管疾患死はクロルタリドン群で有意に低下していた(19% vs. 22%;補正HR 0.854,95%CI 0.751~0.972).ベースライン時にDMを発症していた群(n= 799)は,心血管疾患死(補正HR1.659,95%CI1.413~1.949)と総死亡(1.510,1.347~1.693)が有意に増加していた.プラセボ群で試験期間中にDMを発症した群(n=169)は,心血管疾患死(1.562,1.117~2.184)および総死亡(1.348,1.051~1.727)が増加していた.しかし,クロルタリドン群でDMを発症した群(n=258)では,心血管疾患死(1.043,0.745~1.459)と総死亡(1.151,0.925~1.433)に有意な関連が認められなかった.クロルタリドン群のDM患者の心血管死(0.688,0.526~0.848)と総死亡(0.805,0.680~0.952)は有意に低下していた
55)Berl T et al (IDNT), 2003
RCT(サブ解析)
レベル1
30~70歳の糖尿病性腎症と高血圧を合併する2型糖尿病患者1,715人.血清クレアチニン値が女性1.0~3.0mg/dL,男性1.2~3.0mg/dLで900mg/日以上の蛋白尿を有する イルベサルタンvs.アムロジピンvs.プラセボ.複合エンドポイント:心血管疾患死,心筋梗塞,心不全,脳卒中,および冠動脈の血行再建術.平均追跡期間2.6年 複合心血管イベントには3群間で有意差は認められなかった.アムロジピン群はプラセボ群と比較して,脳卒中(HR 0.65;95%CI 0.35~1.22)で低下傾向が,心筋梗塞(0.58;0.37~0.92)で有意に低下した.一方,イルベサルタン群は,心不全の発症率がプラセボ群(0.72;0.52~1.00),アムロジピン群(0.65;0.48~0.87)に比べて有意に低下していた.しかし,心筋梗塞の発症は,アムロジピン群に比べてイルベサルタン群で高い傾向にあった(1.54,0.97~2.45)
56)Turnbull F et al, 2005
メタアナリシス
レベル1
2003年までに行われた27の降圧治療に関するRCT(n=158,709).DM患者を33,395人を含む 様々な降圧治療の心血管疾患イベントおよび心血管疾患死に対する効果をDM合併の有無で比較主要評価項目;(1)非致死的脳卒中または脳血管障害による死亡,(2)非致死的心筋梗塞または突然死を含む冠動脈疾患死,(3)心不全による死亡または入院,(4)主要心血管イベント(脳卒中,冠動脈イベント,心不全,その他の心血管疾患死),(5)総心血管疾患死,(6)総死亡 降圧薬の種類(ACE阻害薬,Ca拮抗薬,ARB,利尿薬+β遮断薬)にかかわらず,DM群,非DM群ともに同等の主要心血管イベント抑制効果が認められた.DM患者では非DM患者に比べて,主要心血管イベントおよび心血管疾患死で厳格な血圧コントロールのほうが良好なリスクの低下が認められた
57)UKPDS 39, 1998
RCT
レベル1
1,148人の高血圧合併2型DM患者.平均年齢56歳,平均の血圧値160/94mmHg.英国,スコットランド,北アイルランド カプトプリルn=400 vs.アテノロールn=358 vs.コントロール(<180/<105mmHgを目標に降圧)n=390.降圧目標<150/<80mmHg.一次エンドポイント;(1)糖尿病関連エンドポイント,(2)糖尿病関連死,(3)総死亡10年間追跡 治療後の血圧は,カプトプリル群144/83mmHg,アテノロール群143/81mmHgで両群に有意差なし.降圧に3剤以上必要とした患者の割合もカプトプリル群27%,アテノロール群31%で有意差なし.アテノロール群の78%,カプトプリル群の65%が最終診察日に試験薬を内服(p<0.0001).カプトプリル群とアテノロール群の大血管エンドポイントの予防効果は同等であった.糖尿病関連エンドポイントHR 1.10(95%CI 0.86~1.41),糖尿病関連死1.27(0.82~1.97),総死亡1.14(0.81~1.61),心筋梗塞1.20(0.82~1.76),脳卒中1.12(0.59~2.12),閉塞性動脈硬化症1.48(0.35~6.19)
58)CAPPP Study Group, 2001
RCT(サブ解析)
レベル1
10,985人のCAPPP登録患者(25~66歳,拡張期血圧≧100mmHg)のうち,試験開始時に糖尿病を合併していた572人 カプトプリルvs.従来治療(利尿薬and/or β遮断薬).目標血圧:拡張期血圧≦90mmHg.平均6.1年間追跡 一次エンドポイント(致死性および非致死性心筋梗塞と脳卒中)はカプトプリル群で有意に低かった(相対危険度0.59,p=0.018).心筋梗塞と総死亡,総心イベントはカプトプリル群で有意に低かった.脳卒中には差がなかった
59)LIFE Study Group, 2002
RCT(サブ解析)
レベル1
LIFE studyにエントリーした患者のうち,糖尿病を合併している1,195人.平均年齢67歳,試験開始前の平均血圧177/96mmHg ロサルタンvs.アテノロール.降圧目標は140/90mmHg.平均追跡期間4.8年.複合一次エンドポイント:死亡,または,心筋梗塞,脳卒中 治療後の平均血圧は,ロサルタン群で146/79mmHg,アテノロール群で148/79mmHg.アテノロール群に対するロサルタン群でのエンドポイント発生の相対危険度は,複合一次エンドポイント0.76(p=0.031),心血管死0.63(p=0.028),脳卒中0.79(p=0.204),心筋梗塞0.81(p=0.373),総死亡0.61(p=0.002)であった
60)Estacio RO et al (hypertensive ABCD trial), 1998
RCT(サブ解析)
レベル1
拡張期血圧が90mmHg以上で,40~72歳の2型糖尿病患者470人 ニソルジピン(235人)vs.エナラプリル(235人).平均5年間追跡 ニソルジピン群は,致死性および非致死性心筋梗塞の頻度がエナラプリル群に比べて有意に多かった(リスク比7.0)
61)Tatti P et al (FACET), 1998
RCT
レベル2
高血圧合併2型糖尿病患者380人 フォシノプリル(189人)vs.アムロジピン(191人).追跡期間は2.5~3.5年 フォシノプリル群で,心筋梗塞または脳卒中,入院を要する狭心症の発症が有意に低下していた(14/189 vs. 27/191,ハザード比=0.49)
62)Whelton PK et al (ALLHAT), 2005
RCT(サブ解析)
レベル1
1つ以上の冠動脈疾患リスクファクターを有する55歳以上の高血圧患者33,357人.空腹時血糖がADAのDM(n=13,101),IFG(n=1,399),NG(n=17,012)に層別して解析 クロルタリドンvs.アムロジピンorリシノプリル.<140/90mmHgが降圧目標.平均追跡期間4.9年.一次エンドポイント;致死的冠動脈疾患または,非致死的心筋梗塞 一次エンドポイントの発症
DM
アムロジピンvsクロルタリドンRR 0.97(0.86~1.10)
リシノプリルvsクロルタリドンRR 0.97(0.85~1.10)
IFG
アムロジピンvsクロルタリドンRR 1.73(1.10~2.72)
リシノプリルvsクロルタリドンRR 1.16(0.71~1.89)
NG
アムロジピンvsクロルタリドンRR 0.94(0.82~1.07)
リシノプリルvsクロルタリドンRR 1.02(0.89~1.16)
63)Dahlöf B et al (ASCOTBPLA), 2005
RCT(サブ解析)
レベル1
高血圧以外に3つ以上の心血管系危険因子を有する40~79歳の高血圧患者19,257人.男性77%,白人95% アムロジピン・ベース群(アムロジピン5~10mgに必要に応じてペリンドプリル4~8mg追加)vs.アテノロール・ベース群(アテノロール50~100mgに必要に応じてベンドロフルメチアジド1.25~2.5mgを追加).降圧目標値<140/90mmHg(DM合併では<130/80mmHg).一次エンドポイント;非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を含む)と致死的冠動脈疾患.追跡期間中央値5.5年 アムロジピン・ベース群では,アテノロール・ベース群に比べて,有意ではないものの一次エンドポイントの減少が認められた(未補正HR 0.90,95%CI 0.79~1.02).しかし,致死的および非致死的脳卒中(0.77,0.66~0.89),全心血管イベントおよび血行再建術(0.84,0.78~0.90),総死亡(0.89,0.81~0.99)でアムロジピンベース群に有意な低下が認められた.全心血管イベントおよび血行再建術について層別解析した結果では,DM合併高血圧患者でもアムロジピン・ベース群で有意な低下が認められた.新規DM発症もアムロジピンベース群で有意に少なかった(0.70,0.63~0.78)
64)Daly CA et al (PERSUADE), 2005
RCT(サブ解析)
レベル1
EUROPA(European trial on Reduction Of cardiac events with Periindopril in stable coronary Artery disease)に登録した12,218人のサブスタディ(PERindopril Substudy in Coronary Artery Disease and DiabEtes:PERSUADE).心不全の既往がない冠動脈疾患を合併したDM患者1,502人 ペリンドプリル8mg/日vs.プラセボ.平均追跡期間4.3年.一次エンドポイント;心血管疾患死と非致死的心筋梗塞,心肺蘇生が必要な心停止 追跡期間中のペリンドプリル群とプラセボ群の血圧差は,4.6/1.8mmHg.一次エンドポイントの発症はペリンドプリル群で低下傾向(12.6% vs. 15.5%,リスク低下19%;95%CI -7~38%,p=0.13).これは,EUROPA全体で認められた-20%のリスク低下と同程度
65)Schrader J et al (MOSES), 2005
オープンラベル試験(PROBE法)
(サブ解析)
レベル2
脳血管障害の既往のある高血圧患者1,405人.糖尿病患者を498人含む.ドイツおよびオーストリアで実施 エプロサルタンvsニトレンジピン.複合一次エンドポイント;総死亡とすべての心血管および脳血管イベント(イベントの再発も含む).平均追跡期間2.5年 エプロサルタン群とニトレンジピン群でベースライン時の血圧および降圧に有意な差は認められなかった.エプロサルタン群の75.5%,ニトレンジピン群の77.7%が<140/90mmHgを達成した.一次エンドポイントの発生は,エプロサルタン群で有意に低下(RR 0.79).心血管エンドポイントはRR 0.75(0.55~1.02)とエプロサルタン群で低下傾向,脳血管イベントはエプロサルタン群で有意に低下した
66)Pepine CJ et al (INVEST), 2003
オープンラベル試験(PROBE法)
(サブ解析)
レベル2
50歳以上の冠動脈疾患を有する高血圧患者22,576人.14ヵ国で行われ,アジア人149人,白人10,925人,黒人3,029人,ヒスパニック8,045人,その他328人 Ca拮抗薬群(ベラパミル徐放錠240mg/日.必要に応じてトランドラプリル,ヒドロクロロチアジド,その他の順に降圧薬を追加)vs.β遮断薬群(アテノロール50mg/日.必要に応じてヒドロクロロチアジド,トランドラプリル,その他の順に降圧薬を追加).DM,腎障害,心不全を合併する患者は,治療群にかかわらずトランドラプリル2mg/日を内服.降圧目標は<140/90mmHg(DMまたは腎障害の場合は<130/85).一次エンドポイント;死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中.平均追跡期間2.7年 24か月後,Ca拮抗薬群の降圧薬使用率は,ベラパミル81.5%,トランドラプリル62.9%,ヒドロクロロチアジド43.7%であり,β遮断薬群では,アテノロール77.5%,ヒドロクロロチアジド60.3%,トランドラプリル52.4%であった.2年間の降圧度,降圧目標達成率は,両群で同等.一次エンドポイントの発症は,Ca拮抗薬群とβ遮断薬群に有意な差は認められなかった(9.93% vs. 10.17%,RR 0.98;95%CI 0.90~1.06)
67)Julius S et al (VALUE), 2004
RCT(サブ解析)
レベル1
50歳以上の既治療または未治療心血管疾患ハイリスク高血圧患者15,245人.白人が13,617人,アジア人533人 バルサルタンvs.アムロジピン.一次エンドポイント;心イベント(心血管疾患死,入院治療を要する心不全,非致死的心筋梗塞,心筋梗塞予防のための緊急処置).平均追跡期間4.2年 降圧効果はアムロジピン群で著明で,特に投与開始後早期で顕著であった(両群の血圧の差は,1ヵ月後4.0/2.1mmHg;1年後1.5/1.3mmHg;p<0.001).複合一次エンドポイントの発症はバルサルタン群とアムロジピン群で有意差なし.非致死的および致死的心筋梗塞の発症はアムロジピン群で有意に低下(HR 1.19).心不全発症はバルサルタン群で低下傾向.糖尿病新規発症はバルサルタン群で有意に低下(オッズ比0.77)
68)Vijan S et al, 2004
メタアナリシス
レベル1
2002年9月までに発表された脂質低下療法による臨床的転帰を評価したRCTのうち,DM患者を含んでいるRCT.一次予防6つ,二次予防8つ 薬物による脂質低下療法が2型DM患者のアウトカムに与える影響について検討.一次予防と二次予防にゲムフィブロジルを用いたRCTを1つずつ含む以外は,すべてスタチンを用いたRCT 一次予防:脂質低下療法により,平均4.3年の追跡期間中に心血管イベントのリスクは有意に減少(RR 0.78;ARR 0.03;NNT 34~35)
二次予防:平均4.9年間の追跡期間中に心血管イベントのリスクは有意に減少(RR 0.76;ARR 0.07;NNT 13~14)
69)Collins R et al (HPS), 2003
RCT
レベル1
40~80歳の英国人DM患者5,963人と動脈硬化性疾患の既往のある非DM患者14,573人 シンバスタチン40mg/日vs.プラセボ.平均追跡期間4.8年.一次エンドポイント;主要血管イベント(主要冠動脈イベントまたは,脳卒中,血行再建術)の初回発症 追跡期間中の両群間のLDL-C値の差は39mg/dLであった.DM群における一次エンドポイントの発症は,シンバスタチン群601(20.2%),プラセボ群748(25.1%)で,リスク低下は22%(95%CI 13~30).冠動脈イベント,脳卒中,血行再建術を個別にみても,シンバスタチン群で有意にリスクの低下が認められた.一次エンドポイントの発症は,心血管疾患の既往の有無,年齢,性別,腎機能,降圧治療,BMI,腹囲,DMの罹病期間,DMのタイプ,HbA1C値にかかわらず,シンバスタチン群でリスクの低下が認められた
70)Colhoun HM et al (CARDS), 2004
RCT
レベル1
40~75歳の心血管疾患の既往がなく,LDL-C≦160mg/dL,TG≦600mg/dL,少なくとも網膜症または微量アルブミン尿,喫煙,高血圧の1つ以上を有する2型DM患者2,838人.英国とアイルランドで施行 アトルバスタチン10mg/日vs.プラセボ.平均追跡期間;3.9年(予定よりも2年早く終了).一次エンドポイント;急性冠動脈疾患イベント(無痛性心筋梗塞を含む心筋梗塞,不安定狭心症,急性の冠動脈疾患死,心肺蘇生術を必要とする心停止),血行再建術または脳卒中の初回発症までの期間 治療前後の平均LDL-C値は,プラセボ群117mg/dL→121mg/dL,アトルバスタチン群118mg/dL→82mg/dL.一次エンドポイントの発症はプラセボ群127(9.0%),アトルバスタチン群83(5.8%),HR 0.63(0.48~0.83:p=0.001).これは,4年間の治療で1000人あたり37のイベント予防に相当.アトルバスタチン群のリスク低下率を一次エンドポイントを個別に解析すると,急性冠動脈疾患イベント36%(95%CI -55~-9),冠動脈血行再建術31%(-59~16),脳卒中48%(-69~-11).アトルバスタチン群は死亡率を27%(-48~1,p=0.059)低下させた
71)Sever PS et al (ASCOT-LLA), 2005
RCT(サブ解析)
レベル1
高血圧以外に3つ以上の心血管危険因子を有する冠動脈疾患の合併のない高血圧患者10,305人のうち,2型DM患者2,532人(白人が2,294人)を対象としたサブ解析 アトルバスタチン10mg vs.プラセボ.3.3年間(中央値)追跡.一次エンドポイント;総心血管イベント及び処置 追跡期間中のアトルバスタチン群のTCとLDL-Cは,プラセボ群に比べて~40mg/dL低値であった.一次エンドポイントの発症は,プラセボ群に比べてアトルバスタチン群で23%減少(p=0.036)
72)Arampatzis CA et al (LIPS), 2005
RCT(サブ解析)
レベル1
TC 135~270mg/dL,TG<400mg/dLのPCI後の患者.202人のDM患者と1,475人の非DM患者 フルバスタチン80mg/日vs.プラセボ.3~4年間追跡.一次エンドポイント;主要冠動脈イベント(心臓死と非致死的心筋梗塞,血行再建術) DM群では,フルバスタチン投与はプラセボ投与に比べて51%(95%CI 16~71%)の一次エンドポイントのリスク低下が認められた.非DM群では,フルバスタチン群の一次エンドポイントのリスク減少は18%(-8~34%)であった
73)MIRACL Study Investigators, 2001
RCT(サブ解析)
レベル1
18歳以上の不安定狭心症または非Q波急性心筋梗塞患者3,086人.アトルバスタチン群1,538例,プラセボ群1,538例.715人の糖尿病患者を含む アトルバスタチン80mg/dayまたはプラセボを急性冠症候群発症24~96時間後に開始.16週間追跡 一次エンドポイント(死亡または非致死性急性心筋梗塞,蘇生術を必要とする心停止,他覚的所見を伴い入院を必要とする症候性心筋虚血の再発)と脳卒中は,アトルバスタチン群で16%(p=0.02)および50%(p=0.045)の相対リスク減少
74)de Lemos JA et al, 2004
RCT
レベル1
急性冠症候群4,497人(平均年齢61歳,男性76%).DM患者を1,059人含む 急性冠症候群発症直後よりシンバスタチン40mg/日内服し,1ヵ月後からはシンバスタチン80mg/日を内服する強化療法群と急性冠症候群発症後4ヵ月はプラセボを内服し,その後シンバスタチン20mg/日を内服する通常療法群にランダム化.複合一次エンドポイント;心血管疾患死と非致死的心筋梗塞,急性冠症候群による再入院,脳卒中最低6ヵ月間,24ヵ月まで追跡 通常療法群のLDL-C値は,1ヵ月目で122mg/dL,8ヵ月目で77mg/dL.強化療法群のLDL-C値は,1ヵ月目で68mg/dL,8ヵ月目で63mg/dL.一次エンドポイントの発症のリスクは,通常療法群に比べて強化療法群で低下傾向(HR0.89;95%CI0.76~1.04).心血管死は通常療法群に比べて強化療法群で25%低下(p=0.05).それ以外の一次エンドポイントの構成要素に有意な差は認めれなかった.最初の4ヵ月における一次エンドポイントの発症には両群で有意な差は認めなかったが,4ヵ月目以降から試験終了時まででは強化療法群で有意に一次エンドポイントの発症が少なかった(0.75;0.60~0.95;p=0.02).ミオパチーの発症は,強化療法群に9例(0.4%)認められたが,通常療法群には認められなかった(p=0.02)
75)Cannon CP et al (PROVE ITTIMI 22), 2004
RCT
レベル1
急性冠症候群で入院した患者4,162人.平均年齢58歳,男性78%,白人91%,DM18% 入院後10日以内にプラバスタチン40mg/日またはアトルバスタチン80mg/日を投与.複合一次エンドポイント;総死亡,心筋梗塞,入院が必要な不安定狭心症,血行再建術,脳卒中.平均追跡期間24ヵ月 LDL-Cの中央値は,プラバスタチン群で95mg/dL,アトルバスタチン群で62mg/dL(p<0.001).一次エンドポイントは,プラバスタチン群26.3%,アトルバスタチン群22.4%,プラバスタチン群に比べてアトルバスタチン群で16%のリスク低下(p=0.005).DMの有無で層別解析すると,一次エンドポイントの発症はDM合併で,プラバスタチン群34%,アトルバスタチン群28.8%で,統計学的には有意ではなかったが,アトルバスタチン群で低下傾向(21%)が認められた
76)Pedersen TR et al (IDEAL), 2005
オープンラベル試験(PROBE法)
レベル2
心筋梗塞の既往のある80歳未満の患者8,888人.北ヨーロッパにおいて施行.DM患者を1,069人含む アトルバスタチン80mg/日vs.シンバスタチン20mg/日.一次エンドポイント;主要冠動脈イベント(冠動脈疾患死または非致死的急性心筋梗塞,心肺蘇生を必要とする心停止).平均追跡期間4.8年 LDL-Cは,シンバスタチン群104mg/dL,アトルバスタチン群81mg/dL.主要冠動脈イベントの発生は,シンバスタチン群に比べてアトルバスタチン群で11%減少(p=0.07).非致死的急性心筋梗塞はアトルバスタチン群で13%減少(p=0.02)したが,冠動脈疾患死と心停止には有意差なし.アトルバスタチン群において脳卒中は低下傾向,閉塞性動脈硬化症は有意に低下(13%).すべての冠動脈イベントの発生は,HR 0.84(0.76~0.91).非心血管疾患死と総死亡に有意な差は認められなかった.アトルバスタチン群では副作用のために治療中断者が有意に多かった;トランスアミナーゼ上昇43(1.0%)vs. 5(0.1%)
77)Okazaki S et al (ESTABLISH), 2004
オープンラベル試験
レベル2
緊急冠動脈造影とPCIを施行された急性冠動脈症候群患者70人.DM 23人を含む アトルバスタチン20mg/日vs.コントロール.コントロール群はLDL-C>150mg/dLの場合コレステロール吸収阻害薬を投与.血管内視鏡でベースラインと6ヵ月後の粥腫の容積を評価 ベースライン時と6ヵ月後のLDL-C値は,アトルバスタチン群124.6mg/dL→70.0mg/dL,プラセボ群123.9mg/dL→119.4mg/dL.粥腫の容積はコントロール群(8.7%増加)に比較してアトルバスタチン群(13.1%減少)で有意に減少.粥腫の容積の減少率は,追跡期間中のLDL-C値(R=0.456,p=0.0011)およびLDL-Cの低下率(R=0.612,p<0.0001)と正相関が認められた
78)Nissen SE et al (REVERSAL), 2004
RCT
レベル1
30~75歳の冠動脈造影で20%以上の狭窄病変が1ヵ所以上認められた患者654人.男性362人,白人444人,DM 95人 アトルバスタチン80mg/日vs.プラバスタチン40mg/日.一次エンドポイント;血管内超音波検査における粥腫の容積の変化.18ヵ月間追跡 ベースライン時のLDL-Cは両群とも150.2mg/dLで,プラバスタチン群は110mg/dL,アトルバスタチン群は79mg/dLまで低下.CRPはプラバスタチン群で5.2%,アトルバスタチン群で36.4%低下.一次エンドポイントは,アトルバスタチン群で有意に低かった.粥腫の進行は,アトルバスタチン群で有意に抑制されていた(プラバスタチン群2.7%,アトルバスタチン群-2.4%).DM群における粥腫容積の変化は,プラバスタチン群3.2%,アトルバスタチン群0.7%であった(p=0.35)
79)FIELD study, 2005
RCT
レベル1
試験登録時スタチンを内服していない50~75歳の2型糖尿病患者9,795人.7,664人は心血管疾患の既往あり.脂質低下療法を受けておらず,TC値116~251mg/dLに加えてTC/HDL-C≧4.0またはTG値89~443mg/dLの範囲の患者 微粉化フェノフィブラート200mg/日(4,895人)vs.プラセボ群(4,900人).一次エンドポイント;冠動脈イベント(冠動脈疾患死または非致死的心筋梗塞).二次エンドポイント;主要心血管イベント(冠動脈イベント,脳卒中,他の心血管疾患死),総心血管疾患イベント(主要心血管イベント+冠動脈と頸動脈の血行再建術),冠動脈疾患死,総心血管疾患死,出血性および非出血性脳卒中,冠動脈と末梢動脈の血行再建術,死因別非冠動脈疾患死,総死亡.平均5年間追跡.Intention to treat解析 プラセボ群の10%,フェノフィブラート群の11%が試験薬を中止.プラセボ群の17%,フェノフィブラート群の8%が他の高脂血症治療薬(多くはスタチン)を内服.プラセボ群の5.9%(288人)とフェノフィブラート群の5.2%(256人)で冠動脈イベントが発症(0.89,0.75~1.05,p= 0.16).非致死的心筋梗塞は24%減少(HR0.76,95%CI0.62~0.94,p=0.010),冠動脈疾患死は上昇傾向(1.19,0.90~1.57,p= 0.22).総心血管イベントは11%減少(13.9%vs12.5%,HR0.89,0.80~0.99,p=0.035).冠動脈血行再建術は21%減少(0.79,0.68~0.93,p=0.003).総死亡には有意差なし(プラセボ群6.6%,フェノフィブラート群7.3%,HR 1.11,0.95~1.29,p=0.18).フェノフィブラート群ではアルブミン尿の進行と網膜光凝固術の頻度が有意に低下していた.膵炎(0.5% vs. 0.8%,p=0.031)と肺塞栓(0.7% vs. 1.1%,p=0.022)が増加
80)VA-HIT Study Group, 1999
RCT
レベル1
冠動脈疾患を有し,HDL-C 40mg/dLかつLDL-C 140mg/dLの男性2,531人.糖尿病を627人含む.試験開始時の総コレステロール175mg/dL,LDL-C 111mg/dL,HDL-C 32mg/dL,TG 161mg/dL ゲムフィブロジル1,200mg/day vs.プラセボ.5.1年間(中央値)追跡 試験開始1年目のゲムフィブロジル群の脂質値:総コレステロールとTGは,プラセボ群に比べて,それぞれ,4%と31%低値,HDL-Cは,6%上昇,LDL-Cは差を認めなかった.ゲムフィブロジル群における一次エンドポイント(心筋梗塞または冠動脈疾患死)と複合エンドポイント(冠動脈疾患死,非致死性心筋梗塞,脳卒中)発症の相対リスク減少は,それぞれ,22%(p=0.006)と24%(p<0.001)であった.冠動脈血行再建術,不安定狭心症による入院,総死亡,癌には有意な差は認められなかった.糖尿病患者を対象としたサブ解析では,複合エンドポイントの発症の相対リスク減少は24%(p=0.05)であった
81)POSCH Group, 1996
RCT
レベル1
心筋梗塞の既往のある838人.1975~1983年に登録 食事療法と空腸部分吻合術vs.食事療法.平均追跡機間9.7年 5年時における,空腸部分吻合術群と食事療法群における血清脂質値は以下の通り:総コレステロール182 vs. 237mg/dL,LDL-C104 vs.166mg/dL,HDL-C42vs.40mg/dL.食事療法群に対する空腸部分吻合術群の臨床的閉塞性動脈硬化症の発症の相対リスクは,1990年7月時点で0.702(p=0.049),1994年9月時点で0.656(p=0.009)であった.5年時におけるABI<0.95の割合は,空腸吻合術群における相対リスクで0.557(p<0.01).血管造影では,2群間に有意な差はなし
82)Mohler ER 3rd et al, 2003
RCT
レベル2
閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行を呈する患者354人.白人331人,DM患者62人 アトルバスタチン10mg/日vs.アトルバスタチン80mg/日vs.プラセボ.一次エンドポイント;ベースライン時と12ヵ月後のトレッドミルでの最大歩行距離歩行距離の変化 12ヵ月後の最大歩行時間の延長は,アトルバスタチン10mg群で90秒,アトルバスタチン80mg群で90秒,プラセボ群で50秒で有意な延長は認められなかった(p=0.37).無痛歩行時間はアトルバスタチン80mg群で63%(81秒)とプラセボ群で38%(39秒)に比べて有意に改善(p=0.025),アトルバスタチン10mg群は74秒で,プラセボ群と有意差なし(p=0.130)
83)Pedersen TR et al, 1998
RCT(サブ解析)
レベル1
狭心症または心筋梗塞の既往のある血清総コレステロール213~310mg/dLの患者4,444人 シンバスタチン(2,221人)vs.プラセボ(2,223人).5.4年(中央値)追跡 プラセボ群に対するシンバスタチン群の相対危険度は,狭心症0.74(p<0.0001),間歇性跛行0.62(p=0.008),頸動脈または大腿動脈での血管雑音の聴取0.70(p=0.025),頸動脈雑音の聴取0.52(p=0.009),大腿動脈雑音の聴取0.89(p=0.59)
84)Miller ER 3rd et al, 2005
メタアナリシス
レベル1
1966年から2004年8月までに発表された19のRCT.ビタミンEのみの試験9つとビタミンEと他のビタミンまたはミネラルを併用した試験10 ビタミンEvs.プラセボまたはコントロール.ビタミンEの投与量は16.5~2000IU/日(中央値400IU/日).ビタミンE投与量と総死亡との関連について検討 高用量ビタミンE(≧400IU/日)について検討した11のトライアル中9つでは,ビタミンE群でコントロール群に比べて総死亡のリスクが増加していた.高用量ビタミンE群における総死亡のリスクの差は,39/10,000人(95%CI 3~74)であった.低用量ビタミンEに関する検討では,リスク差は-16/10,000人(-41~10)であった.用量反応解析では,ビタミンEの投与量と総死亡の間に有意な関連が認められた.150IU/日以上の投与量でリスクの増加が認められた
85)Sacco M et al (PPP), 2003
オープンラベル試験(サブ解析)
レベル2
50歳以上で1つ以上の心血管危険因子を有する心血管疾患の既往のないPrimary Prevention Project(PPP)に登録した4,784人のうち,DM合併1,031人のサブ解析 アスピリン100mg/日と合成ビタミンE300mg/日とプラセボの2×2要因計画.平均追跡期間3.7年.一次エンドポイント;主要心血管および脳血管イベント(心血管疾患死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中) PPPは,アスピリン群の治療効果の有益性が確定したために早期に試験が中止となった.DM群では,アスピリン治療により一次エンドポイント(RR 0.90;95%CI 0.50~1.62)および総心血管イベント(RR 0.89;0.62~1.26)の減少と心血管疾患死(1.23;0.69~2.19)が認められたが有意ではなかった.非DM群では,一次エンドポイントRR 0.59(95%CI 0.37~0.94),総心血管イベント0.69(0.53~0.90),心血管疾患死0.32(0.14~0.72)であった.ビタミンE投与は,DM群および非DM群のすべてのエンドポイントにおいて有意な減少なし
86)HOPE, 2002
RCT(サブ解析)
レベル1
55歳以上で心血管疾患の既往があるか糖尿病に他の心血管疾患危険因子を有する女性2,545人と男性6,996人.このうち糖尿病患者3,654人を対象に解析 天然ビタミンEvs.プラセボ.平均4.5年追跡 ビタミンEは一次エンドポイント(心筋梗塞,脳卒中,または心血管死)に影響を及ぼさなかった(RR 1.03,p=0.70).また,ビタミンEは心筋梗塞,脳卒中,心血管疾患死,総死亡,心不全による入院,不安定狭心症による入院,血行再建術,顕性腎症にも影響を及ぼさなかった
87)Daly LE et al (Framingham Study), 1983
コホート研究
レベル4
不安定狭心症または心筋梗塞のあと2年を経過した60歳未満の男性498人 13年間追跡し,喫煙群,禁煙群,非喫煙群の死亡率を比較 喫煙を続けた者では禁煙した者に比べて死亡率が有意に高かった
88)Kuller LH et al (MRFIT), 1991
コホート研究
レベル3
MRFITでスクリーニングを受けた361,662人の男性.10年間追跡 無作為化された12,866人の喫煙者 禁煙した者では冠動脈疾患の発症率が速やかに減少した
89)Al-Delaimy WK et al (Nurses' Health Study), 2002
コホート研究
レベル3
6,547人の2型糖尿病女性.20年間追跡 2型糖尿病女性における喫煙と冠動脈疾患との関連について検討 非喫煙者に比べて,過去に喫煙していた者と1日に1~14本喫煙する者,1日に15本以上喫煙する者の冠動脈疾患発症の相対危険度は,それぞれ,1.21,1.66,2.68であった.10年間禁煙している女性の冠動脈疾患発症率は非喫煙者と同等であった.1日15本以上喫煙する糖尿病女性の冠動脈疾患発症のリスクは,喫煙しない非糖尿病女性の約8倍であった
90)Holme I et al (Oslo Study), 1985
RCT
レベル1
1,232人の心血管疾患および糖尿病を有さない高リスク中年男性 5年間にわたり食事と喫煙についての助言を行う介入群と対照群 心血管イベントが介入群で47%低下
91)Hu FB et al (Nurses' Health Study), 2001
コホート研究
レベル3
DMを合併した女性看護師5,125人 DM女性において,身体活動度と心血管疾患のリスクについて検討.身体活動度は1980年に評価し,1982,1986,1988,1992年に再評価.中等度もしくは激しい運動の平均時間とmetabolic equivalent of task(MET)を算出.追跡期間14年間(31,432人年) 追跡期間中に323件の心血管疾患(冠動脈疾患225件,脳卒中98件)が発症.中等度または激しい運動平均時間(<1時間/週,1~1.9,2~3.9,4~6.9,≧7)による年齢補正相対危険度は,1.0,0.93(95%CI 0.69~1.26),0.82(0.61~1.10),0.54(0.39~0.76),0.52(0.25~1.09)であった(傾向に対するp値は<0.001).この傾向は,喫煙およびBMI,その他の心血管疾患危険因子で補正しても同じであった(1.0,1.02,0.87,0.81,0.55;p=0.001).身体活動度は冠動脈疾患と虚血性脳卒中発症には有意な負の関連が認められた.激しい運動を行っていない女性において,ウォーキングの強度と心血管疾患の発症には負の関連が認められた
92)Manson JE et al, 2002
コホート研究
レベル3
50~79歳の心血管疾患のない閉経後女性73,743人 身体活動度および運動強度と冠動脈イベントおよび心血管イベントの発症率との関連について検討.平均3.2年(全体で232,971人年)追跡 身体活動度スコアは冠動脈イベントおよび心血管イベントと強い負の相関.ウォーキングと激しい運動では同程度のリスク低下.これらの関係は,人種,年齢,BMIにかかわらず認められた
93)Lee IM et al (Physicians' Health Study), 1999
コホート研究
レベル3
40~80歳で心筋梗塞,脳卒中,一過性脳虚血発作,および癌の既往のない米国の男性医師21,823人.アスピリンおよびβカロチンの心血管疾患および癌への一次予防効果をみたPhysicians' HealthStudyのコホート研究 運動と脳卒中の関連について検討.平均11.1年追跡 年齢,治療の割付,喫煙,飲酒,狭心症の既往,心筋梗塞の家族歴で補正した脳卒中の相対リスク(95%CI)は,1週間あたりの激しい運動が<1回1.00,1回0.79(0.61~1.03),2~4回0.80(0.65~0.99),5回以上0.79(0.61~1.03)と運動と脳卒中に負の関連が認められた(p=0.04).さらにBMIと高血圧,高コレステロール血症,DMを追加して補正すると脳卒中のリスクは,1.00,0.81(0.61~1.07),0.88(0.70~1.10),0.86(0.65~1.13)と運動と脳卒中に有意な負の関連は認められなくなった(p=0.25)
94)Ornish D et al, 1990
RCT
レベル2
中等度から重度の冠動脈病変を有する48人 28人が治療群(低脂肪ベジタリアン食,禁煙,ストレスコントロールトレーニング,中等度の運動),20人が対照群.1年後の冠動脈硬化症への影響を冠動脈造影で評価 治療群における平均冠動脈狭窄は,40%から37.8%に退縮した.一方,対照群では42.7%から46.1%へ悪化した.治療群の82%で平均の冠動脈狭窄が退縮した
95)Ornish D et al, 1998
RCT
レベル2
中等度から重度の冠動脈病変を有する48人.35人が5年後の定量的冠動脈造影を終了 28人がライフスタイル改善群(食事中脂肪10%のベジタリアン食,有酸素運動,禁煙,ストレスコントロールトレーニング,心理社会的サポート),20人が通常ケア群 5年間のライフスタイルの介入により,治療群で1年後よりもさらに冠動脈病変の退縮が認められた.一方,通常ケア群では,冠動脈病変の進行が認められ,5年間のフォローアップの期間中,ライフスタイル介入群の2倍の心血管イベントが発生した
96)Wallner S et al, 1999
RCT
レベル2
70歳未満で,PTCA後のオーストリア人患者60人 ライフスタイル改善の強化vs.通常療法群.一次エンドポイント;血行再建術(PTCAまたはCABG)の再施行.平均追跡期間26ヵ月 ライフスタイル強化群では,体重と血圧,LDL-Cの低下,身体活動度の増加が認められた.さらに,脂肪摂取の減少と体脂肪の低下が認められた.通常療法群の血行再建術の再施行は32人中14人,強化群では28人中3人,イベントフリー生存確率は,強化群で0.89,通常療法群で0.57,RR 0.26(95%CI 0.09~0.74)であった
97)Metz JA et al, 2000
RCT
レベル2
高脂血症と高血圧を有する患者183人と2型糖尿病患者119人.インスリン治療中の患者と薬物中毒,重大な健康障害の既往または合併は除外,BMI<25は除外 冠動脈疾患リスクを減らすために推奨されている栄養素を満たした食事を準備した群vs.通常食群.脂肪および糖質,蛋白の比率は,両群とも22%,58%,20%.両群ともに,0.90kg/週を超えない程度の体重減少目標とした熱量摂取を処方.52週追跡 治療食群と通常食群の体重減少は,高脂血症/高血圧群で-5.8kgvs.-1.7kg(p<0.001),2型糖尿病群で-3.0kgvs.-1.0kg(p<0.001).高脂血症/高血圧群と2型糖尿病群ともに,治療食群と通常食群の両者で血圧,総コレステロール,LDL-C,HbA1c,生活の質が有意に改善し,糖尿病食群では血糖値も減少した.高脂血症/高血圧群では,通常食群に比べて治療食群で,より総コレステロールおよびHDL-C,収縮期血圧,血糖値が改善.2型糖尿病群では,治療食群でより血糖値とHbA1cが改善
98)Eidelman RS et al, 2003
メタアナリシス
レベル1
1988年から1998年までに英文で発表されたアスピリンによる心血管疾患の一次予防に関する5つのトライアル55,580人(11,466人が女性) アスピリンvs.プラセボ.エンドポイント;心血管イベント(非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,または心血管疾患死) アスピリン群では,心筋梗塞の初発が32%(RR 0.68;95%CI 0.59~0.79),すべての心血管イベントが15%(0.85;0.79~0.93)減少.非致死的脳卒中(1.06;0.87~1.29)と虚血性脳卒中(0.97;0.77~1.22)心血管疾患死(0.98;0.85~1.12)については有意な低下なし.出血性脳卒中に関しては,増加の傾向(1.56;0.99~2.46)
99)Ridker PM et al (Women's Health Study), 2005
RCT
レベル1
45歳以上の心血管疾患および癌,その他重大な疾患の既往のない女性39,876人.平均年齢54.6歳,DM 2.6% アスピリン100mg/隔日投与vs.プラセボ.一次エンドポイント;主要心血管イベント(非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,心血管疾患死).平均追跡期間10.1年
  アスピリン プラセボ HR(95%CI)
心血管イベント 477 522 0.91(0.80~1.03)
脳卒中 221 266 0.83(0.69~0.99)
虚血性脳卒中 170 221 0.76(0.63~0.93)
心筋梗塞 198 193 1.02(0.84~1.25)
心血管疾患死 120 126 0.95(0.74~1.22)
総死亡 609 642 0.95(0.85~1.06)
すべての消化管出血 910 751 1.22(1.10~1.34)

層別解析では,DM群における心血管イベント,脳卒中,虚血性脳卒中,心筋梗塞のHR(95%CI)は,各々,0.9(0.63~1.29),0.46(0.25~0.85),0.42(0.22~0.82),1.48(0.88~2.49).年齢で層別解析すると,65歳以上で,心血管イベント,脳卒中,虚血性脳卒中,心筋梗塞がアスピリン群で有意に低下.一次予防のメタアナリシスでは,男性の心筋梗塞と脳卒中のリスクは,各々,RR 0.68(0.54~0.86),1.13(0.96~1.33).女性の心筋梗塞と脳卒中のリスクは,0.99(0.83~1.19),0.81(0.69~0.96)
100)Antithrombotic Trialists' Collaboration, 2002
メタアナリシス
レベル1
1997年9月までの287RCTのメタアナリシス.動脈硬化性疾患の年間発症率が3%以上の高リスク群について検討 大血管イベント(非致死性心筋梗塞または非致死性脳卒中,心血管死)について抗血小板療法の効果を検討 抗血小板療法により大血管イベントは約1/4減少.非致死性心筋梗塞は1/3,非致死性脳卒中は1/4,心血管死は1/6減少.アスピリンが最も広く使用された抗血小板薬で,アスピリン75~150mg/dayが最も効果が高かった
101)Yasue H et al (JAMIS), 1999
オープンラベル試験
レベル2
発症1ヵ月以内の急性心筋梗塞患者.平均年齢65歳,男性70%,日本 アスピリン81mg/日(n=250)orトラピジル300mg/日(n=243)vs.コントロール(n=230).一次エンドポイント;心血管イベント(心血管疾患死,心筋梗塞の再発,入院を要する不安定狭心症,非致死的虚血性脳卒中).平均追跡期間475日 アスピリン群はコントロール群に比べて心筋梗塞の再発が有意に低く(OR0.271p=0.0045),心血管イベントは低下傾向(0.789,p=0.1961)が認められた.トラピジル群はコントロール群に比べて心血管イベントの発症が有意に抑制されており(p=0.0039),心筋梗塞の再発に関しては低下傾向を認めた(p=0.0810)
102)ETDRS No.20, 1995
RCT
レベル1
22センター3,711人の軽度から重度の非増殖性網膜症もしくは早期の増殖性網膜症を合併する1型または2型糖尿病患者 アスピリン(650mg/day)群vs.プラセボ群.片眼を早期光凝固術,他眼を光凝固術延期とした.追跡期間(中央値)4.5年 網膜光凝固術を延期した眼の硝子体出血または網膜前出血の発症は,プラセボ群で564人(30%),アスピリン群で585人(32%)と有意差なし(p=0.48).出血の重症度や改善にも両群で有意差なし.網膜光凝固術を延期した眼の硝子体出血または網膜前出血の発症した眼の数の累計は,アスピリン群で721眼(39%),プラセボ群で689眼(37%)と有意差なし(p=0.30)
103)Thompson PD et al, 2002
メタアナリシス
レベル2
中等度から重度の間欠性跛行患者を対象としたシロスタゾールによる8つのRCT(2,702人).治療期間は12~24週間.DM患者は658人 主要評価項目;トレッドミルによる最大歩行距離と無痛歩行距離の変化 シロスタゾール群は最大歩行距離と無痛歩行距離が50%と67%増加した.層別解析では,性別,年齢,DMの有無にかかわらず,シロスタゾール群では最大歩行距離と無痛歩行距離の延長が認められた.シロスタゾール群では頭痛と消化器症状の頻度が有意に高かった
104)Gotoh F et al, 2000
RCT
レベル1
80歳未満で脳梗塞発症後1ヵ月以上6ヵ月以内の患者1,067人.日本人 シロスタゾール200mg/日vs.プラセボ.一次エンドポイント;脳梗塞の再発.1992年4月から1996年3月まで患者を組み入れ,1997年3月まで投与.追跡期間は,シロスタゾール群889.6人年,プラセボ群986.0人年 追跡期間中に87件の一次エンドポイントが発生.一次エンドポイントの発症はシロスタゾール群で有意に低下(42.3%,p=0.0127).脳梗塞のタイプ別では,シロスタゾール群ではラクナ梗塞の発症が有意に低下(43.4%,p=0.0373)
105)Shinoda-Tagawa T et al, 2002
オープンラベル試験
レベル2
41~75歳の日本人2型DM患者89人 シロスタゾール100~200mg/日vs.コントロール.平均追跡期間3.2年.頸動脈の内膜中膜複合体厚(IMT)と頭部MRIを経時的に評価 試験前後のIMTは,コントロール群で+0.18mm(p<0.01),シロスタゾール群で-0.00mm(NS).コントロール群では,46人中2人が症候性脳梗塞を発症し,ベースライン時に頭部MRIで脳梗塞巣のなかった34人のうち10人にMRI上無症候性脳梗塞が認められた.一方,シロスタゾール群では,試験期間中に症候性および無症候性脳梗塞の発症はなかった.IMTとMRI上の梗塞巣の数およびIMTの進行と梗塞巣の進行には有意な正相関が認められた
106)Gæde P et al (Steno-2), 2003
RCT
レベル2
微量アルブミン尿を合併している2型糖尿病患者160人.平均年齢55.1歳.通常療法群80人,強化療法群80人 強化療法群vs.通常療法群.強化療法群は,行動変容,および,高血糖,高血圧,高脂血症,微量アルブミン尿をターゲットとした薬物療法を段階的に行った.平均7.8年間追跡 HbA1c,収縮期および拡張期血圧,血清コレステロールおよびトリグリセリド値,尿中アルブミン排泄率のすべてにおいて,通常療法群にくらべて強化療法群では有意な改善が認められた.強化療法群では,心血管疾患(ハザード比0.47),腎症(ハザード比0.39),網膜症(ハザード比0.42),自律神経障害(ハザード比0.37)の発症リスクが有意に低下した.末梢神経障害では有意差なし


 
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