(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
9.糖尿病神経障害の治療


解説

4.糖尿病神経障害の基本的治療
糖尿病神経障害の治療においても,最も重要な要素は血糖コントロールの改善である.飲酒,喫煙なども神経障害を悪化させる可能性が大きいことから,これらの習慣を止めさせることが必要である.
神経障害の最も深刻な症状は四肢末端の自発痛であるが,軽症の場合は血糖コントロールの改善と生活習慣の改善により軽快する.ただし,長期に高血糖が続いていた患者の場合,急速な血糖低下により症状が出現あるいは悪化する場合がある(治療後神経障害)ので注意が必要である.治療後神経障害は良好な血糖コントロールを維持すればやがて改善する.
アルドース還元酵素阻害薬(ARI)は糖尿病神経障害の発症機構のひとつであるポリオール代謝活性の亢進を抑制することから,糖尿病神経障害の特異的な治療薬になると期待されている.これまでに多数のARIが開発され,臨床的有効性が認められたものもあるが9),10),11),12),13),14),15),16),c),ARIが糖尿病神経障害に有効であるとするにはまだevidenceが不足している.現在わが国で市販されているエパルレスタットは臨床の場で用いられている唯一のARIである.196名の神経障害を有する日本人糖尿病患者を対象にRCTが行われ,有効性が認められたと報告されている10).エパルレスタットの臨床試験におけるサブアナリシスによれば11),12),エパルレスタットは神経障害が中等度以下,罹病期間が3年以内の症例に有効であり,重症例や罹病期間の長い症例では無効であった.また,594名の軽症神経障害を有する糖尿病患者を対象とした3年間にわたるRCTにおいて,エパルレスタットが正中神経における運動神経伝導速度の遅延およびF波最小潜時の延長を有意に抑制するとともに自覚症状を有意に改善し,血糖コントロールが良好なほど,細小血管症が軽微なほど運動神経伝導速度の遅延阻止効果が顕著であった17).したがって,エパルレスタットの使用に際しては適応を考慮して使用することが望ましい.また,小規模な研究ではあるが,エパルレスタットが自律神経機能を改善する可能性があると報告されている13)
糖尿病神経障害の発症機序として酸化ストレスの亢進が重要であり,抗酸化薬であるα-リポ酸(わが国では未承認)が神経症状と理学所見を改善することが報告されている18)

 
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