(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
7.糖尿病網膜症の治療


アブストラクトテーブル

論文コード 対象 方法 結果
1)Klein R et al, 1989
コホート研究
レベル4
米国.30歳以下で糖尿病と診断された人(インスリン治療)(996人) 4年間のフォローアップ 160/271(59%)で新たに網膜症が発症.75/713(11%)で非増殖型から増殖型に進展.全体では41%で悪化,7%で改善
2)Klein R et al, 1989
コホート研究
レベル4
米国.30歳以上で糖尿病と診断されたインスリン使用者(824人),インスリン非使用者(956人) 4年間のフォローアップ インスリン使用者73/154(47%)で新たに網膜症が発症.31/418(7%)で非増殖型から増殖型に進展.全体では34%で悪化
3)DCCT Research Group, 1993
RCT
レベル1
米国.IDDM(1,441人) 強化インスリン療法と通常インスリン療法に無作為に分類[6.5年間調査] 新たな網膜症発症は強化療法群で11.5%,通常療法群で54.1%(リスク軽減:-76%).網膜症の進展は強化療法群で17.1%,通常療法群で49.2%(リスク軽減:-54%)
4)DCCT Research Group, 1998
RCT
レベル1
米国.IDDM(1,441人) 強化インスリン療法と通常インスリン療法に無作為に分類[6.5年間調査] いずれの群でも6~12ヵ月以内に初期悪化あるが,強化療法導入群で高頻度(6ヵ月で3.8%vs1.2%,12ヵ月で3.2%vs2.5%).18ヵ月後には改善しその率は強化療法群が良好
5)Ohkubo Y et al, 1995
RCT
レベル2
日本.NIDDM(110人) 頻回インスリン治療群(MIT)と中間型インスリン治療群(CIT)に無作為に分類[6年追跡調査] 新たな網膜症発症はMITで7.7%,CITで32%.網膜症の進展はMITで19.2%,CITで44%.血糖コントロール閾値は空腹時110mg/dL以下,食後血糖180mg/dL以下,HbA1c 6.5%以下
6)UKPDS 33, 1998
RCT
レベル1
英国.2型糖尿病(3,867人) スルホニル尿素薬またはインスリンによる強化療法群と食事療法による通常療法群に無作為に分類[10年間観察] 強化療法で細小血管症のリスクは25%減少し,光凝固療法を必要とするリスクは28%減少した.一方,大血管症のリスクは変わらなかった
7)Yoshida Y et al, 2001
コホート研究
レベル3
日本.2型糖尿病で初診時に網膜症のない人(787人) 平均6.7年の観察 網膜症の発症は血圧,年齢,性別,総コレステロール値,BMIと関係なく,平均HbA1cと罹病期間に関係する.HbA1cが初診時に8.2%以上では3年以内に網膜症を発症する頻度が有意に高い.HbA1cを1%低下させることで網膜症の発症を35%抑制できる
8)Klein R et al, 1984
コホート研究
レベル4
米国.30歳以下で糖尿病と診断された人(インスリン治療)(996人) 網膜症の合併頻度を罹病期間に応じて観察 網膜症合併頻度は罹病期間5年以下では17%,15年以上では97.5%.増殖網膜症は罹病期間10年以下では1.2%,35年以上では67%.網膜症の重症度は罹病期間,HbA1c高値,蛋白尿,拡張期高血圧と関係する
9)Klein R et al, 1984
コホート研究
レベル4
米国.30歳以上で糖尿病と診断された人(1,370人) 網膜症の合併頻度を罹病期間に応じて観察 網膜症合併頻度は罹病期間5年以下では28.8%,15年以上では77.8%.増殖網膜症は罹病期間5年以下では2.0%,15年以上では15.5%.網膜症の重症度は罹病期間,若年発症,HbA1c高値,蛋白尿,収縮期高血圧,BMI低値と関係する
10)Chew EY et al, 1995
コホート研究
レベル3
米国.1型糖尿病妊婦(155人) 受胎前後から分娩後まで網膜症の発症,進展を観察 140人は増殖型網膜症なし.網膜症なしの10.3%,微少動脈瘤のみの21.1%,軽症の非増殖型の18.8%,中等度以上の非増殖型の54.8%に網膜症の増悪あり.軽症の6.3%,中等症以上の29%に増殖型に進展.HbA1c高値,血糖コントロールの急激な改善,罹病期間は網膜症増悪の危険因子
11)DCCT Research Group, 2000
サブ解析
レベル2
米国.DCCTに参加した1型糖尿病患者のうち6.5年間で妊娠した180人(妊娠数270)と妊娠しなかった女性500人 妊娠が網膜症と微量アルブミン尿に及ぼす影響を検討 妊婦は非妊婦に比して強化療法群では1.63倍,従来療法群では2.48倍に網膜症増悪のリスクが増加するが一過性であり,長期的には網膜症悪化のリスクは高くない
12)UKPDS 50, 2001
サブ解析
レベル3
英国.UKPDSに登録されたうち診断時に眼底写真を撮影されたもので以後6年間経過観察できたもの(1,919人) 網膜症の発症,進展の危険因子をサブ解析 63%は診断時に網膜症なし.6年で22%に網膜症発症.診断時に網膜症を有する29%は6年で悪化.発症は高血糖,高血圧と関連し,進展は年齢,男性,高血糖と関連した.逆に喫煙者では発症,悪化は少なかった
13)UKPDS 69, 2004
RCT
レベル1
英国.高血圧合併の2型糖尿病(1,148人) ACE阻害薬またはβ遮断薬で厳格に血圧コントロールを行なった758人と通常治療390人.7.5年間観察 厳格な血圧管理は網膜症の進展(0.75),光凝固療法の必要性(0.65),失明(0.76)のリスクを軽減する(相対的危険度).ACE阻害薬またはβ遮断薬で効果に差がない
14)UKPDS 38, 1998
RCT
レベル1
英国.高血圧を伴う2型糖尿病(1,148人) カプトプリル,アテノロールで目標血圧150/85mmHgの群と,ACE阻害薬,β阻害薬以外で目標血圧180/105mmHgの群に無作為に分類 9年後には厳格な血圧コントロール群で網膜症が悪化するリスクが34%減少し,視力が悪化するリスクが47%減少した.ACE阻害薬とβ遮断薬では効果に差がなかった
15)Chaturvedi N et al (EUCLID Study), 1998
RCT
レベル2
ヨーロッパ.1型糖尿病.正常血圧で腎症は微量アルブミン尿まで(354人) 正常血圧の糖尿病患者でACE阻害薬(リシノプリル)投与にて網膜症の悪化,改善を比較した リシノプリル投与にて網膜症の新規発症は有意差なかったが,網膜症の進展は有意に抑制した
16)Fong DS et al (ETDRS 24), 1999
RCT
レベル1
米国.ETDRS:軽症から重症の非増殖性網膜症または初期の増殖網膜症を有する糖尿病(3,711人) 片眼に早期に光凝固療法を施行.対側は待機的に必要時に施行 眼科的介入により視力低下を抑制
17)Ferris F(ETDRS), 1996
RCT
レベル1
米国.ETDRS:軽症から重症の非増殖性網膜症または初期の増殖網膜症を有する糖尿病(3,711人) 片眼に早期に光凝固療法を施行.対側は待機的に必要時に施行 初期に汎光凝固をすることで網膜症の進行を抑制する.1型糖尿病より2型糖尿病または40歳以上の高齢者でより効果がある
18)DRS, 1978
RCT
レベル1
米国.重症の非増殖性網膜症または増殖網膜症を有する糖尿病(1,758人) 片眼に光凝固療法施行し,対側は経過観察のみ 3年間で5/200以下の視力まで悪化した率は治療群で10%,非治療群で27%であり,光凝固療法により視力が悪化するリスクが60%減少した
19)UKPDS 52, 2001
RCT
レベル3
英国.2型糖尿病(3,709人) 光凝固療法が必要な程度の網膜症悪化の頻度を観察 9年の観察期間で初期に網膜症のない2.6%,網膜症を有する31.9%に光凝固療法が必要であった.初期の網膜症の重症度で大きくリスクが異なる
20)Chew EY et al (ETDRS follow up study), 2003
コホート研究
レベル3
米国.初回のETDRS終了時の登録者(214人) 死亡率と視力低下,糖尿病網膜症の進展を平均16.7年間観察 糖尿病網膜症を有する者は死亡率が高い.厳格な経過観察と適切な光凝固療法の施行は長期の視力維持に有効である
21)DRVS Research Group, 1990
RCT
レベル1
米国.硝子体出血による視力低下をきたした616眼 早期に硝子体手術を行う群と1年以降に待機的に手術する群に無作為に分類 重症増殖網膜症の硝子体出血では早期に硝子体手術を行うことで良好な視力を維持できる可能性がある
22)DRVS Research Group, 1988
RCT
レベル2
米国.進行した活動性の増殖性網膜症(370眼) 硝子体手術を行う群と通常治療群に無作為に分類 4年後には硝子体手術群の44%,通常治療群の28%で良好な視力を維持できた.新生血管が著明な症例では硝子体手術がより効果的であった
23)Miljanovic B et al, 2004
コホート研究
レベル3
米国.DCCT登録の1型糖尿病(1441人) 総コレステロール,LDL-C,HDL-C,中性脂肪と網膜症,黄斑浮腫の進展の関係を解析した LDL-C値,総コレステロール/HDL-C比,中性脂肪値が黄斑浮腫,硬性白斑の独立した危険因子である
24)Cohen RA et al, 1999
RCT
レベル3
米国.Sorbinil Retinopathy Trialに参加した軽症の網膜症を有するI型糖尿病患者(485人) アルドース還元酵素阻害薬のトライアルだが組み入れ時の因子で分析 網膜症の進展には血糖コントロールが最も重要だが,拡張期血圧,コレステロールも有意に影響することを示した
25)Davis MD et al (ETDRS 18), 1998
RCT
レベル1
米国.軽症から重症の非増殖性網膜症または初期の増殖網膜症を有する糖尿病(3,711人) 増殖網膜症,高度視力障害,硝子体手術に至る危険因子を解析 血糖コントロールは年齢,糖尿病の型,網膜症のすべての段階において進行を抑制する.脂質の是正,貧血の改善は網膜症の進展を抑制する
26)Gæde P et al (Steno Study), 2003
RCT
レベル2
ヨーロッパ.微量アルブミン尿の2型糖尿病(160人) 多因子にわたる積極的介入群と従来治療群で心血管と細小血管症のリスク軽減を比較(7.8年観察) 厳格な血糖コントロール,ACE阻害薬を中心とした血圧管理,血清脂質低下,心疾患合併例でアスピリン投与,ビタミンC,E投与,生活習慣改善群で50%のリスク軽減
27)Chew EY et al (ETDRS 20), 1995
RCT
レベル1
米国.軽症から重症の非増殖性網膜症または初期の増殖網膜症を有する糖尿病患者(3,711人) 3,711人をアスピリン650mg/日を投与する群とプラセボに分けて平均4.5年観察 硝子体出血,網膜前出血はアスピリン投与により改善も増悪もしなかった


 
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