(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
5.経口血糖降下薬による治療
解説
3.血糖コントロールの目標
UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)2)をはじめとする多くの疫学的解析から,血糖コントロールが良好なほど,細小血管症あるいは大血管症の発症・進展の危険性が減少することは明らかである.どの程度まで血糖コントロールを改善すれば合併症の発症が抑制できるのか明確な基準はないが,Kumamoto studyの結果からHbA1cが6.5%未満ならば細小血管症の発症・進展はほぼ抑制できると思われる9).しかし,大血管症については,食後血糖だけが高い耐糖能異常の段階から発症・進展の危険性が高いことが示されている3).したがって,経口血糖降下薬の血糖コントロールの理想的な目標は,HbA1cの正常化,かつ食後高血糖の是正である.しかし,血糖コントロールの改善とともに低血糖の頻度が増加するおそれがある.経口血糖降下薬による低血糖の頻度はインスリンに比べて低いが,遷延性の低血糖や第三者の助けを必要とする重症低血糖の危険がある.特に,高齢者や肝・腎・心機能が低下している症例に投与するときは,最大限の注意を怠ってはならない.これらのことを総合的に考えると,血糖コントロールの第一目標をHbA1c6.5%未満に置き,それが達成できたならば,低血糖が起こらないことを確認しながらHbA1c5.8%未満を目指すのが妥当と考えられる.