(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
3.食事療法
解説
5.その他の注意
合併症の発症や進展防止には血糖のみならず血圧のコントロールも重要である.食塩の過剰摂取は血圧上昇に作用し,食欲を亢進させるので,多くても10g/日とする.高血圧を合併したものでは6g/日未満,尿蛋白が1g/日以上の腎症を合併したものでは7〜8g/日未満に制限する(「8.糖尿病腎症の治療」の項参照).
また,食物繊維(1日20〜25g)は血糖コントロールの改善に有効であり,血中脂質のレベルも低下させる.野菜は1日300g以上摂取することを目標にする.炭水化物の構成などによって同じエネルギーを有する食品でも血糖の上昇度が異なることが報告され,食品のGI(glycemic index)として知られている14).GIの低い食品は血糖上昇を抑制する効果を有する5),15),血漿アディポネクチン濃度を上昇させる16)との報告があるが,現時点ではわが国における長期的な成績はなく,今後の詳細な検討が望ましい.
空腹感の強い症例には,キャベツ,海藻,コンニャク,タケノコ,キノコ類など無〜低カロリーの食品が有用であるが,食物繊維としての海藻,コンニャクなどの多食によるヨード過多や低栄養には注意を要する.
アルコールの摂取に関しては,合併症のない例や肝疾患などを有しない血糖コントロールのよい例では必ずしも禁止する必要はないが,スルホニル尿素薬を内服する例では低血糖を引き起こす危険があるばかりでなく,アルコールを多飲する例では糖尿病の治療に悪影響を及ぼすので,飲酒量を自分で制限できない例では禁止することが望ましい17).アルコールの摂取については,1日25g程度を上限の目安とし,毎日は飲酒させないこととする.
小児,妊産婦,肥満者における食事療法は各項目に譲る.高齢者の食事療法では加齢に伴う必要な栄養所要量の変化に関する研究は少ない.高齢者における栄養状態の判定には,栄養アセスメントと体重が重要である.高齢者では味覚,嗅覚の低下,咀嚼能力の低下,唾液分泌の低下,胃酸度の低下,肝腎機能の低下などが存在することが多く,筋肉が減少して栄養状態が不良になりやすい18).したがって,高齢者においては食事療法を処方する際に特に栄養不良に陥らない注意が必要である.高齢者における食事制限による栄養不良や脱水を予防するためには,同年代の高齢者が摂取する食事内容に含まれる程度の炭水化物量を処方することが望ましい.これに伴う高血糖に対しては薬物療法などを組み合わせることが勧められる.
一般に普及している健康食品やサプリメントについては,効果に関する客観的evidenceが乏しく,製品の管理が不十分なものもあり積極的には勧められない.
食事方法に関する指導は糖尿病治療の基本であり,血糖管理に有効である.食事回数は1日3回を基本とし,可能な限り規則正しく摂取時刻を守らせ,欠食させないことが重要である.また,早朝の高血糖を避けるため,夜9時以降の食事は控えることが望ましい.1日3食をなるべく均等に,よく噛んで時間をかけて摂取する.糖尿病妊婦では3回の食事量が十分でないことも多く,2〜4回の炭水化物を補食に用いて,ケトーシスを防ぐ注意が必要である.薬物療法中に昼食前あるいは夕食前に低血糖を起こす症例では,家庭での朝食,昼食に摂取する炭水化物量が極端に少ないことが原因であることもあり,薬物療法や運動量の評価に加え,食事内容の評価も同時に行うことが勧められる.また,1型糖尿病では運動中の低血糖を防ぐために,中等度の運動1時間あたり120〜180mg/体重(kg)の糖質の補給が勧められる.1型糖尿病で強化インスリン治療中の患者では,食事あるいは間食に含まれる炭水化物の量は食事ごとに皮下注射されるインスリン量の重要な決定因子であるので,食事ごとの炭水化物量とインスリンの比率を調整する必要がある.外食の際には一般に炭水化物,油脂の摂取量が多く,濃厚な味付け,野菜不足になる,偏食しやすい,などの弊害が多く,この点を考慮した摂取の工夫を指導する.冷凍食品などの加工食品も食塩・油脂の含有量が多く,成分や内容の確認が必要である.
食事指導にあたっては,糖尿病療養指導に熟練した管理栄養士とともに行うことが望ましい.日本では食事指導に食品交換表を頻用するが,十分な理解を得られないことも多い.そのような場合は,実際の食品やフードモデルなどを用いて指導する.
また,食物繊維(1日20〜25g)は血糖コントロールの改善に有効であり,血中脂質のレベルも低下させる.野菜は1日300g以上摂取することを目標にする.炭水化物の構成などによって同じエネルギーを有する食品でも血糖の上昇度が異なることが報告され,食品のGI(glycemic index)として知られている14).GIの低い食品は血糖上昇を抑制する効果を有する5),15),血漿アディポネクチン濃度を上昇させる16)との報告があるが,現時点ではわが国における長期的な成績はなく,今後の詳細な検討が望ましい.
空腹感の強い症例には,キャベツ,海藻,コンニャク,タケノコ,キノコ類など無〜低カロリーの食品が有用であるが,食物繊維としての海藻,コンニャクなどの多食によるヨード過多や低栄養には注意を要する.
アルコールの摂取に関しては,合併症のない例や肝疾患などを有しない血糖コントロールのよい例では必ずしも禁止する必要はないが,スルホニル尿素薬を内服する例では低血糖を引き起こす危険があるばかりでなく,アルコールを多飲する例では糖尿病の治療に悪影響を及ぼすので,飲酒量を自分で制限できない例では禁止することが望ましい17).アルコールの摂取については,1日25g程度を上限の目安とし,毎日は飲酒させないこととする.
小児,妊産婦,肥満者における食事療法は各項目に譲る.高齢者の食事療法では加齢に伴う必要な栄養所要量の変化に関する研究は少ない.高齢者における栄養状態の判定には,栄養アセスメントと体重が重要である.高齢者では味覚,嗅覚の低下,咀嚼能力の低下,唾液分泌の低下,胃酸度の低下,肝腎機能の低下などが存在することが多く,筋肉が減少して栄養状態が不良になりやすい18).したがって,高齢者においては食事療法を処方する際に特に栄養不良に陥らない注意が必要である.高齢者における食事制限による栄養不良や脱水を予防するためには,同年代の高齢者が摂取する食事内容に含まれる程度の炭水化物量を処方することが望ましい.これに伴う高血糖に対しては薬物療法などを組み合わせることが勧められる.
一般に普及している健康食品やサプリメントについては,効果に関する客観的evidenceが乏しく,製品の管理が不十分なものもあり積極的には勧められない.
食事方法に関する指導は糖尿病治療の基本であり,血糖管理に有効である.食事回数は1日3回を基本とし,可能な限り規則正しく摂取時刻を守らせ,欠食させないことが重要である.また,早朝の高血糖を避けるため,夜9時以降の食事は控えることが望ましい.1日3食をなるべく均等に,よく噛んで時間をかけて摂取する.糖尿病妊婦では3回の食事量が十分でないことも多く,2〜4回の炭水化物を補食に用いて,ケトーシスを防ぐ注意が必要である.薬物療法中に昼食前あるいは夕食前に低血糖を起こす症例では,家庭での朝食,昼食に摂取する炭水化物量が極端に少ないことが原因であることもあり,薬物療法や運動量の評価に加え,食事内容の評価も同時に行うことが勧められる.また,1型糖尿病では運動中の低血糖を防ぐために,中等度の運動1時間あたり120〜180mg/体重(kg)の糖質の補給が勧められる.1型糖尿病で強化インスリン治療中の患者では,食事あるいは間食に含まれる炭水化物の量は食事ごとに皮下注射されるインスリン量の重要な決定因子であるので,食事ごとの炭水化物量とインスリンの比率を調整する必要がある.外食の際には一般に炭水化物,油脂の摂取量が多く,濃厚な味付け,野菜不足になる,偏食しやすい,などの弊害が多く,この点を考慮した摂取の工夫を指導する.冷凍食品などの加工食品も食塩・油脂の含有量が多く,成分や内容の確認が必要である.
食事指導にあたっては,糖尿病療養指導に熟練した管理栄養士とともに行うことが望ましい.日本では食事指導に食品交換表を頻用するが,十分な理解を得られないことも多い.そのような場合は,実際の食品やフードモデルなどを用いて指導する.