(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
1.糖尿病診断の指針


解説

4.網膜症のリスク
網膜症のリスクは血糖値とどのような関係にあるか.米国糖尿病学会の1997年の報告では,ピマ族(ネイティブアメリカン),エジプト人の集団と米国の疫学調査の3集団で,空腹時血糖値,OGTT 2時間値,HbA1cの値で各集団を10等分し,それぞれの群で網膜症の頻度を比較した.網膜症は血糖値の高い方の1〜3区分に集中し,空腹時血糖値,2時間値,HbA1c値のどれを用いても,きわめて似通った増え方を示した.そこで米国糖尿病学会では空腹時血糖値だけで糖尿病を診断する方針を打ち出した.また網膜症がはっきり増え始める区分の下限付近の血糖値(空腹時血糖値では120〜136mg/dL)を糖尿病の診断に用いるカットオフ値とした.
しかし上記のデータで網膜症が増え始める区分の血糖値の幅は広く,血糖値がその区分の下限を超えると,細小血管症の危険がただちに増加するかどうかはわからない.表1の血糖基準値は多少の安全率を見越して,この程度の高血糖があれば糖尿病とみなして治療を始めるのが望ましいであろうとの考えのもとに選んだものである.


表1 空腹時血糖値および75g糖負荷試験(OGTT)2時間値の判定基準
(静脈血漿値,mg/dL,括弧内はmmol/L)
  正常域 糖尿病域
空腹時血糖値
75g OGTT 2時間値
<110(6.1)
<140(7.8)
≧126(7.0)
≧200(11.1)
75g OGTTの判定 上記の両者を満たすものを正常型とする 上記のいずれかを満たすものを糖尿病型とする
正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型とする
随時血糖値≧200mg/dL(≧11.1mmol/L)の場合も糖尿病型とみなす.
正常型であっても,1時間値が180mg/dL(10.0mmol/L)以上の場合は,180mg/dL未満のものに比べて糖尿病に悪化する危険が高いので,境界型に準じた取り扱い(経過観察など)が必要である.
(文献4から引用)


 
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