(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載

 
5.科学的証拠文献集
喘息死亡,発作入院

文献対象
  1. 例数
  2. 年齢
  3. 対象
試験デザイン
  1. 方法
  2. 観察期間(導入+試験)
  3. その他(効果判定など)
結果・考案・副作用評価
Donahueら1)
1997
  1. 16941
  2. マサチューセッツのHMOに登録された喘息患者
  1. 喘息発作入院と喘息薬処方の関係(コホート比較研究)
  2. 喘息薬処方内容,1991〜94年の発作入院頻度
  1. 吸入ステロイドは発作入院を防止する効果をもつ。
  2. この効果は吸入β2刺激薬使用頻度の高い重症例で顕著である。
IV
A
Suissaら2)
2000
  1. 66喘息死亡例/2681コントロール
  2. Saskatche wan Health data base:1975〜1991の間に喘息治療をうけた5〜44歳の喘息患者
  1. 吸入ステロイド薬使用量と予後との関連を分析(nested case-control study)
  2. 死亡率,吸入ステロイド薬処方数
  1. 吸入ステロイド薬が1缶増えるごとに喘息死亡率は21%減少する。吸入ステロイド薬中止の3ヶ月間の喘息死亡率は継続例に比較し高かった。
IV
A

吸入ステロイド薬の軽症患者治療,初期治療

文献対象
  1. 例数
  2. 年齢
  3. 対象
試験デザイン
  1. 方法
  2. 観察期間(導入+試験)
  3. その他(効果判定など)
結果・考案・副作用評価
Ostermanら5)
1997
  1. 75
  2. 18〜68
  3. 新規診断
    軽症喘息
  1. ブデソニド400μg/日とプラセボの比較(多施設,二重盲検パラレル比較試験)
  2. 18ヶ月
  3. 症状,肺機能,気道過敏性,吸入β2刺激薬回数,血中,MPO,ECP,ECA,NCA
  1. ブデソニド400μg/日はプラセボにくらべ有意にピークフロー値,気道過敏性を改善する。
  2. 症状,炎症マーカーは差はあるが有意ではなかった。
  3. ブデソニドの中止によりその効果は長続きしなかった。
II
A
Converyら9)
2000
  1. 52
  2. 20〜50歳
  3. 新規診断
  1. フルチカゾン2,000mcg/dayとプラセボの気道過敏性におよぼす影響を評価(randomised double-blind placebo-controlled parallel group study)
  2. 6週
  3. 気道過敏性
  1. 6週間の時点でフルチカゾンはプラセボに比較して有意に気道過敏性を改善した(DD1.9)この改善は,男性で優れていた。治療の中断によりこの改善は維持されなかった。
II
A
Reedら11)
1998
  1. 747
  2. 軽症〜中等症
  1. ベグロメタゾン84μg4回/日と内服テオフィリン(至適量)との比較(多施設,二重盲検,プラセボ比較試験)
  2. 1年
  3. 症状,肺機能,気道過敏性,吸入β2刺激薬回数,受診回数,欠勤日数,欠席日数,血漿コーチゾール
  1. テオフィリンは従来の推奨濃度より低濃度で効果が認められるが,ベグロメタゾンが全ての指標で有意に改善するが,その差は少ない。
  2. 効果・副作用比からみると多くの成人喘息,小児喘息患者では吸入ステロイド薬が第一選択である。
II
A
Malmstromら12)
1999
  1. 895
  2. 15〜85
  3. 非安定慢性喘息
  1. ベグロメサゾン400μg/日,内服モンテルカスト 10mg/日,プラセボの比較(二重盲検,プラセボ,パラレル比較試験)
  2. 12週
  3. 症状,肺機能,吸入β2刺激薬回数,QOL
  1. 慢性喘息患者においてベグロメサゾンP400μg/日の効果はモンテルカストに比較し優れていたが,モンテルカストもプラセボに比較し有意に効果的である。
II
A

吸入ステロイド薬の早期導入

文献対象
  1. 例数
  2. 年齢
  3. 対象
試験デザイン
  1. 方法
  2. 観察期間(導入+試験)
  3. その他(効果判定など)
結果・考案・副作用評価
Overbeekら4)
1996
  1. 76/91(phase2)
  2. 18〜60
  3. 中等症〜重症
    閉塞性気道疾患
    (喘息/COPD)
  1. 2年半先行ベグロメタゾン800μg/日群と新規開始群の比較(多施設,パラレル比較試験)
  2. 6ヶ月
  3. 肺機能,気道過敏性
  1. 新規ベグロメタゾン800μg/日開始群は2年半先行群に比較し,一秒量は同程度まで改善したが,気道過敏性は及ばなかった。
II
A
Olivieriら14)
1997
  1. 20
  2. 18〜47
  3. 非喫煙軽症喘息
  1. 気道炎症,リモデリングへのフルチカゾン500μg/日とプラセボの比較(二重盲検,プラセボ,パラレル比較試験)
  2. 6週
  3. 気道過敏性,生検組織,BAL
  1. 少量短期のフルチカゾンはプラセボに比較し,有意に基底膜を減少させる。網状層への炎症細胞浸潤をへらし,軽症喘息患者の気道リモデリングを改善させる可能性を持つ。
II
A

吸入ステロイド薬と併用薬
β2刺激薬

文献対象
  1. 例数
  2. 年齢
  3. 対象
試験デザイン
  1. 方法
  2. 観察期間(導入+試験)
  3. その他(効果判定など)
結果・考案・副作用評価
Woolcockら15)
1996
  1. 738
  2. >16
  3. BDP1,000μg/日でコントロールされない喘息患者
  1. ベクロメタゾンP1,000μg/日+サルメテロール50/100μg2回とベグロメサゾン2,000μg/日の比較(多施設,二重盲検,パラレル比較試験)
  2. 24週
  3. ピークフロー値,一秒量,症状,吸入β2刺激薬回数,発作回数,気道過敏性
  1. ベクロメタゾン2,000μg/日よりBDP1,000μg/日+サルメテロール50/100μg2回いずれもが臨床指標を改善した。
II
A
Pauwelsら16)
1997
  1. 852
  2. 18〜70
  3. 中等症喘息
  1. ブデソニド200μg/日,ブデソニド800μg/日にフォルモテロール12mcg2回/日の追加効果の検討(多施設,二重盲検,パラレル比較試験)
  2. 12ヶ月
  3. 発作頻度,症状,肺機能
  1. フォルモテロール追加はBUD 200/800μg/日にかかわらずピークフローを更に改善し,発作頻度を減らした。
II
A
Cromptonら19)
1999
  1. 112
  2. 18〜74
  3. 吸入ステロイド薬400〜2,000μg/日もしくは内服ステロイド薬<20mg/日の喘息患者
  1. 内服バンブテロール20mg1回/日とサルメテロール50mcg2回/日の比較(多施設,二重盲検,プラセボ,パラレル比較試験)
  2. 6週
  3. ピークフロー値,夜間症状,吸入β2刺激薬回数
  1. 朝のピークフロー値の改善は2群間に差はなかった。その他の指標も同様であった。
II
A

テオフィリン

文献対象
  1. 例数
  2. 年齢
  3. 対象
試験デザイン
  1. 方法
  2. 観察期間(導入+試験)
  3. その他(効果判定など)
結果・考案・副作用評価
Ukenaら17)
1997
  1. 133
  2. 18〜70
  3. ベクロメタゾン400μg/日でコントロールされない喘息患者
  1. ベクロメタゾン400μg/日+内服テオフィリンとベグロメタゾン800μg/日の比較(多施設,二重盲検,パラレル比較試験)
  2. 6週
  3. 肺機能,ピークフロー値,症状,β2刺激薬吸入回数
  1. ベクロメタゾン400μg/日+内服テオフィリンとベクロメタゾン800μg/日群ではほぼ同等の効果であった。
II
A
Evansら18)
1997
  1. 62
  2. 18〜67
  3. ブデソニド800〜1,000μg/日でコントロールされない喘息患者
  1. ブデソニド800μg/日+内服テオフィリンとブデソニド600μg/日(二重盲検,プラセボ比較試験)
  2. 3ヶ月
  3. ピークフロー値,肺機能,発作回数,症状,吸入β2刺激薬回数,theophylin濃度
  1. 中等症喘息患者でブデソニド800μg/日+内服テオフィリン群とブデソニド 1,600μg/日では同等の効果であった。
  2. テオフィリン濃度は推奨濃度以下で達成された。
II
A

抗ロイコトリエン薬

文献対象
  1. 例数
  2. 年齢
  3. 対象
試験デザイン
  1. 方法
  2. 観察期間(導入+試験)
  3. その他(効果判定など)
結果・考案・副作用評価
Lavioletteら21)
1999
  1. 642
  2. コントロールされていない吸入ステロイド薬使用喘息患者
  1. モンテルカスト10mg,モンテルカスト+ベクロメタゾン,ベクロメタゾン単独の比較(多施設無作為割付二重盲検パラレル比較試験)。
  2. 16週
  3. ピークフロー値,肺機能,発作回数,症状,吸入β2刺激薬回数
  1. ベクロメタゾンにモンテルカストを追加投与した群で,ベクロメタゾンのみの群と比べて有意にFEV1が改善した(5.08%vs0.72%)。また日中の喘息症状も有意に改善した。blindでベクロメタゾンを中止した群では,モンテルカストおよびプラセボ両群ともにFEV1.0,喘息症状の悪化を来したが,有意にモンテルカスト群が軽微となった。
II
A
Tamaokiら25)
1997
  1. 79
  2. >20
  3. BDP>1,500μg/日以上使用喘息患者
  1. ベクロメタゾン半量へのプランルカスト450mg/日,プラセボの効果(多施設,二重盲検,プラセボ比較試験)
  2. 6週
  3. 症状,肺機能,ピークフロー値,吸入β2刺激薬回数
  1. プラセボ群ではピークフロー値,FEV1.0がプランルカスト450mg/日に比較し有意に低下し,コントロールも悪化した。
  2. プランルカスト450mg/日群はほぼ観察期のコントロールを維持した。
II
A
Lofdahlら26)
1999
  1. 226
  2. 16〜70
  3. 高用量吸入ステロイド薬使用喘息患者
  1. モンテルカスト10mg/日とプラセボの吸入ステロイド薬減量効果の比較(多施設,二重盲検,プラセボ,パラレル比較試験)
  2. 12週
  3. 吸入ステロイド薬減量
  1. 吸入ステロイド薬減量はモンテルカスト10mg/日群47%とプラセボ群30%とでは有意にモンテルカスト群が優れていた。
II
A

吸入ステロイド薬の全身的影響

文献対象
  1. 例数
  2. 年齢
  3. 対象
試験デザイン
  1. 方法
  2. 観察期間(導入+試験)
  3. その他(効果判定など)
結果・考案・副作用評価
Aaronsonら31)
1998
  1. 64
  2. 18〜65
  3. 軽症:非ステロイド依存性喘息
  1. ブデソニド800,1,600,3,200μg/日(Turbuhaler),oral PSL10mg/日,プラセボのHPA機能への評価(二重盲検,プラセボ,パラレル比較試験)
  2. 6週
  3. 血清コルチゾール,rapid ACTH試験
  1. rapid ACTH試験でのHPA抑制はブデソニド800,1,600,3,200μg/日(Turbuhaler)各群,プラセボ群でそれぞれ,13,11,27,35,.4%であった。
  2. ブデソニド3,200mcg/日群,oralPSL群でのみその低下は有意であった。
II
Liら33)
1999
  1. 124
  2. 18〜50
  3. 非喫煙喘息患者
  1. フルチカゾン176/440μg/日,トリアムシノロン800μg/日,oral PSL10 mg/日,プラセボのHPA機能抑制比較(多施設,二重盲検,プラセボ,パラレル比較試験)
  2. 4週
  3. rapid ACTH試験
  1. HPA抑制の程度はフルチカゾン176/440μg/日はプラセボと同等であり,oralPSL群に比較し有意に少なかった。
II
Hughesら35)
1999
  1. 59
  2. 25〜70
  3. 中等症〜重症
  1. フルチカゾン1,000μg/日,ブデソニド 1,600μg/日骨への影響の比較。MDI:大型スペーサー使用(オープン,パラレル比較試験)
  2. 1年
  3. 骨代謝指標(osteocalcin等),BMD,血清コルチゾール
  1. フルチカゾン1,000μg/日もしくはブデソニド1,600μg/日の大量投与によっても12ヶ月後に骨の著変は見られなかった。
  2. 血清コルチゾールの低下も見られなかった。
II
Pauwelsら36)
1998
  1. 391
  2. 中等症〜重症の成人喘息患者(BDPまたはブデソニド 800〜2,000μg/day使用)
  1. ランダム期間に,使用中の吸入ステロイドをベクロメタゾン500μg/dayまたはフルチカゾン 250μg/dayに変更した。6ヶ月後,薬剤をクロスオーバーした(a double-blind,
    multicenter, cross-over study)
  2. 1年
  3. 朝の血漿コルチゾル値,オステオカルシン値,尿中カルシウム,ヒドロキシプロリン排出,尿中クレアチニン値,肺機能(FEV1.0, FVC),朝夕のピークフローR,サルブタモールのrescue useの回数,症状点数,QOLスコア
    骨密度(BMD)
  1. ベクロメタゾン群,フルチ朝の血漿コルチゾル値,尿中ヒドロキシプロリン排出,FEV,ピークフローRに,研究期間中いずれの時点でも有意差を認めなかった。フルチカゾン群でカルシンとBMDが基礎値より改善し,BDP群と比較して,血清オステオカルシン値がより高値で,腰椎,大腿骨頸部,Ward's triangleにおけるBMDがより高値であった。
II
Mediciら37)
2000
  1. 69
  2. 平均39歳
  3. 中等症〜重症の成人喘息患者
  1. フルチカゾン400μg/day,ベクロメタゾン800μg/day,フルチカゾン750μg/day,ベクロメタゾン 1,500μg/dayの骨への影響の比較(a multicentre, double blind, randomised, parallel group study)
  2. 12ヶ月
  3. オステオカルシン,P1CP,ICTP,尿中カルシウム,リン,クレアチニン,hydroxyproline,デオキシピリジノリン,BMD
  1. 12ヶ月の研究期間中,いずれの群においても,基礎値に比べてdistal radius, tibiaの骨の喪失は認められなかった。治療6ヶ月,12ヶ月後の骨形成,骨吸収のマーカーに基礎値からの変化貫した傾向は認められなかった。
II
Eganら38)
1999
  1. 33
  2. 吸入ステロイド1,000〜2,000μg/day使用中の中等症〜重症の喘息患者
  1. フルチカゾン1,000μg/dayまたはベクロメタゾン 2,000μg/dayの骨への影響の評価(前向き二重盲検ランダム化試験)
  2. 24ヶ月
  3. 骨密度測定(bone densitometry scan)。骨マーカー(血清オステオカルシン,骨ALP, procollagen type1 carboxy terminal propeptide(P1CP),デオキシピリジノリン,C-telopeptide of type 1 collagen)
  1. フルチカゾン群では骨密度の低下の証拠は認められなかった。ベクロメタゾン群ではわずかに低下が認められた。フルチカゾン群とBDP群間で,12ヶ月(p=0.0006),24ヶ月(p=0.004)でCT定量値に有意差が認められた。
II

 
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