(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載

 

●喘息死と吸入β2刺激薬

文献対象
  1. 例数
  2. 年齢
  3. 対象
試験デザイン
  1. 方法
  2. 観察期間(導入+試験)
  3. その他(効果判定など)
結果・考案・副作用評価
Suissaら35)
1997
  1. 1976年から1991年にわたるNew Zealandでの喘息死亡率,フェノテロールの市場シェア,β2刺激薬と吸入ステロイド薬の売り上げを解析。
吸入ステロイドは喘息死の相対危険度を有意に低下させる(0.5/カニスター/月,95% CI: 0.4-0.7, p <0.0001)。フェノテロールによる喘息死亡の相対危険度(2.7/カニスター/月, 95% CI: 0.9-7.5, p = 0.06)や,β2 刺激薬全体の影響は,喘息死亡率の変化に吸入ステロイドほど関与していない。New Zealandでかつて見られた喘息死亡率の増加は,フェノテロールの使用よりも,当時吸入ステロイドがあまり使用されていなかったことに関連している。IV
B
Suissaら36)
1996
  1. 喘息死症例30名,
    対照4,080名
  2. 5〜54歳
  3. 喘息死
  1. 喘息死例とコホートから無作為に抽出した対照との背景比較試験
  2. 1978〜1987年
  3. 気管支拡張薬使用状況,心疾患合併,死亡状況 他
テオフィリンやβ2刺激薬の経口・ネブライザー投与は,心疾患合併,もしくはそのリスクの高い患者で処方をさけるべき。一方β2刺激薬のMDIは心脈管系の死亡率に関連しなかった。IV
B
Garrettら37)
1996
  1. 655名
  2. 15-55歳
  3. 喘息死またはICU搬送患者
  1. 症例対照背景比較試験(コホート研究)
  2. 86年1月〜87年12月
  3. 重症度,使用薬剤 他
フェノテロールの使用者はサルタノールの使用者に較べて致死的発作の相対危険度が高かった。しかし,フェノテロールはより重症患者により高頻度に処方されており,入院回数,経口ステロイド剤の常用,以前の発作の重症度などを補正すると,フェノテロールは致死的発作の相対危険度を高めてはいなかった。IV
C
Suissaら38)
1994
  1. 喘息患者のうち喘息死46名,喘息以外による死亡134名
  2. 5〜54歳
  3. Spitzerら41)1992 と同一のコホート
  1. 症例対照背景比較試験(コホート研究)
  2. 1980〜1987年
  3. β2刺激薬使用状況,死因,死亡率 他
吸入β2刺激薬の使用が月に1.4カニスター(28mg)を超えると,喘息死の危険が急激に増加する。非喘息死と吸入β2刺激薬の使用に関連はない。吸入β2刺激薬と喘息死の関連性は,薬剤が過量投与された場合に限る。IV
C
Slyら39)
1994
  1. アメリカ合衆国における喘息死亡率と,喘息治療薬の売り上げを解析。
  1. 時系列疫学調査
1988年から喘息死亡率の増加傾向が抑えられているが,この間に吸入ステロイドやクロモリン,吸入β2刺激薬の使用も増加している。U.S.A.における1988年までの喘息死亡率の増加の少なくとも一部は治療不足によるものである。IV
C
Mullenら40)
1993
  1. 死亡例364名,非死亡例1,388名
  2. β2刺激薬を使用していた喘息患者
  1. 症例対照試験のメタ分析
  2. β2刺激薬使用状況
β2刺激薬の使用と喘息死の関連は有意ではあるが,ごく弱い(r=0.055,P=0.000075)。この関連はβ2刺激薬がネブライザーで投与されたときのみ見られ,MDIや経口投与では関連が見られなかった。若年者よりも成人で,β2刺激薬の使用と喘息死の関連が高い傾向がある。I
C
Spitzerら41)
1992
  1. 喘息死またはnear death症例129名,対照 655名
  2. 5〜54歳
  3. 喘息死,またはnear death症例
  1. 症例対照背景比較試験
  2. 1978〜1987年
  3. β2刺激薬使用状況
吸入β2刺激薬のMDIを使用している患者は喘息死の相対危険度がodds比 2.6/カニスター/月 (95% CI: 1.3.9)と有意に増加していた。フェノテロール使用患者の喘息死亡率のodds比は 5.4/カニスターと,アルブテロールの2.4/カニスターよりも高かったが,単位用量(mg)当たりの危険度はほぼ同等であった。吸入β2刺激薬,特にフェノテロールの多用は喘息死亡の危険を増加させる可能性がある。IV
D
Searsら42)
1990
  1. 89名
  2. 15〜64歳
  3. 安定した喘息患者
  1. フェノテロールのレギュラーユースと頓用比較(二重盲検,プラセボ,クロスオーバー試験)
  2. 4+24週
  3. ピークフロー(朝・夕),喘息日記,気管支拡張剤追加投与,プレドニン短期追加投与
吸入β2刺激薬のレギュラー・ユースは大多数の患者において喘息のコントロールを悪化させる。吸入β2刺激薬のレギュラー・ユースや高用量吸入が,喘息死の重要な原因になっている可能性がある。II
D
Craneら43)
1989
  1. 死亡例117名,非死亡例は死亡例1に対し年齢・性別をマッチさせ各4名
  2. 5〜45歳
  3. 喘息死
  1. 症例対照背景比較試験
  2. 1981年8月〜1983年7月
  3. 各種薬剤使用状況
フェノテロールのMDIを使用している患者の喘息死の相対危険度はodds比1.55(95%CI:1.04-2.33)で有意な増加であった。多数の薬剤を処方されている患者,過去の1年間に入院した患者,経口ステロイドを内服している患者ではこの危険度が増加する。過去の1年間に入院し,かつ経口ステロイドを内服している患者ではodds比が 13.29(95% CI 3.45-51.2)に達した。フェノテロール吸入は重症喘息における喘息死のリスクを高めると思われる。IV
D

参考文献
  1. Suissa S, Ernst P. Optical illusions from visual data analysis: example of the New Zealand asthma mortality epidemic. J Clin Epidemiol 1997; 50: 1079-1088. (評価 IV B)
  2. Suissa S, Hemmelgarn B, Blais L, et al. Bronchodilators and acute cardiac death. Am J Respir Crit Care Med 1996; 154: 1598-1602. (評価 IV B)
  3. Garrett JE, Lanes SF, Kolbe J, Rea HH. Risk of severe life threatening asthma and beta agonist type: an example of confounding by severity. Thorax 1996; 51: 1093-1099. (評価 IV C)
  4. Suissa S, Ernst P, Boivin JF, et al. A cohort analysis of excess mortality in asthma and the use of inhaled beta-agonists. Am J Respir Crit Care Med 1994; 149: 604-10. (評価 IV C)
  5. Sly RM. Changing asthma mortality and sales of inhaled bronchodilators and anti-asthmatic drugs. Ann Allergy 1994; 73: 439-443. (評価 IV C)
  6. Mullen M, Mullen B, Carey M. The association between beta-agonist use and death from asthma. A meta-analytic integration of case-control studies. JAMA 1993; 270: 1842-1845. (評価 I C)
  7. Spitzer WO, Suissa S, Ernst P, et al. The use of beta-agonists and the risk of death and near death from asthma. N Engl J Med 1992; 326: 501-506. (評価 IV D)
  8. Sears MR, Taylor DR, Print CG, et al. Regular inhaled beta-agonist treatment in bronchial asthma. Lancet 1990; 336 (8728): 1391-1396. (評価 II D)
  9. Crane J, Pearce N, Flatt A, et al. Prescribed fenoterol and death from asthma in New Zealand, 1981-83: case-control study. Lancet 1989; 1 (8644): 917-922. (評価 IV D)
 
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