(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載
●喘息死と吸入β2刺激薬
文献 | 対象
| 試験デザイン
| 結果・考案・副作用 | 評価 |
Suissaら35) 1997 |
| 吸入ステロイドは喘息死の相対危険度を有意に低下させる(0.5/カニスター/月,95% CI: 0.4-0.7, p <0.0001)。フェノテロールによる喘息死亡の相対危険度(2.7/カニスター/月, 95% CI: 0.9-7.5, p = 0.06)や,β2 刺激薬全体の影響は,喘息死亡率の変化に吸入ステロイドほど関与していない。New Zealandでかつて見られた喘息死亡率の増加は,フェノテロールの使用よりも,当時吸入ステロイドがあまり使用されていなかったことに関連している。 | IV B | |
Suissaら36) 1996 |
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| テオフィリンやβ2刺激薬の経口・ネブライザー投与は,心疾患合併,もしくはそのリスクの高い患者で処方をさけるべき。一方β2刺激薬のMDIは心脈管系の死亡率に関連しなかった。 | IV B |
Garrettら37) 1996 |
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| フェノテロールの使用者はサルタノールの使用者に較べて致死的発作の相対危険度が高かった。しかし,フェノテロールはより重症患者により高頻度に処方されており,入院回数,経口ステロイド剤の常用,以前の発作の重症度などを補正すると,フェノテロールは致死的発作の相対危険度を高めてはいなかった。 | IV C |
Suissaら38) 1994 |
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| 吸入β2刺激薬の使用が月に1.4カニスター(28mg)を超えると,喘息死の危険が急激に増加する。非喘息死と吸入β2刺激薬の使用に関連はない。吸入β2刺激薬と喘息死の関連性は,薬剤が過量投与された場合に限る。 | IV C |
Slyら39) 1994 |
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| 1988年から喘息死亡率の増加傾向が抑えられているが,この間に吸入ステロイドやクロモリン,吸入β2刺激薬の使用も増加している。U.S.A.における1988年までの喘息死亡率の増加の少なくとも一部は治療不足によるものである。 | IV C |
Mullenら40) 1993 |
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| β2刺激薬の使用と喘息死の関連は有意ではあるが,ごく弱い(r=0.055,P=0.000075)。この関連はβ2刺激薬がネブライザーで投与されたときのみ見られ,MDIや経口投与では関連が見られなかった。若年者よりも成人で,β2刺激薬の使用と喘息死の関連が高い傾向がある。 | I C |
Spitzerら41) 1992 |
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| 吸入β2刺激薬のMDIを使用している患者は喘息死の相対危険度がodds比 2.6/カニスター/月 (95% CI: 1.3.9)と有意に増加していた。フェノテロール使用患者の喘息死亡率のodds比は 5.4/カニスターと,アルブテロールの2.4/カニスターよりも高かったが,単位用量(mg)当たりの危険度はほぼ同等であった。吸入β2刺激薬,特にフェノテロールの多用は喘息死亡の危険を増加させる可能性がある。 | IV D |
Searsら42) 1990 |
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| 吸入β2刺激薬のレギュラー・ユースは大多数の患者において喘息のコントロールを悪化させる。吸入β2刺激薬のレギュラー・ユースや高用量吸入が,喘息死の重要な原因になっている可能性がある。 | II D |
Craneら43) 1989 |
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| フェノテロールのMDIを使用している患者の喘息死の相対危険度はodds比1.55(95%CI:1.04-2.33)で有意な増加であった。多数の薬剤を処方されている患者,過去の1年間に入院した患者,経口ステロイドを内服している患者ではこの危険度が増加する。過去の1年間に入院し,かつ経口ステロイドを内服している患者ではodds比が 13.29(95% CI 3.45-51.2)に達した。フェノテロール吸入は重症喘息における喘息死のリスクを高めると思われる。 | IV D |
参考文献
- Suissa S, Ernst P. Optical illusions from visual data analysis: example of the New Zealand asthma mortality epidemic. J Clin Epidemiol 1997; 50: 1079-1088. (評価 IV B)
- Suissa S, Hemmelgarn B, Blais L, et al. Bronchodilators and acute cardiac death. Am J Respir Crit Care Med 1996; 154: 1598-1602. (評価 IV B)
- Garrett JE, Lanes SF, Kolbe J, Rea HH. Risk of severe life threatening asthma and beta agonist type: an example of confounding by severity. Thorax 1996; 51: 1093-1099. (評価 IV C)
- Suissa S, Ernst P, Boivin JF, et al. A cohort analysis of excess mortality in asthma and the use of inhaled beta-agonists. Am J Respir Crit Care Med 1994; 149: 604-10. (評価 IV C)
- Sly RM. Changing asthma mortality and sales of inhaled bronchodilators and anti-asthmatic drugs. Ann Allergy 1994; 73: 439-443. (評価 IV C)
- Mullen M, Mullen B, Carey M. The association between beta-agonist use and death from asthma. A meta-analytic integration of case-control studies. JAMA 1993; 270: 1842-1845. (評価 I C)
- Spitzer WO, Suissa S, Ernst P, et al. The use of beta-agonists and the risk of death and near death from asthma. N Engl J Med 1992; 326: 501-506. (評価 IV D)
- Sears MR, Taylor DR, Print CG, et al. Regular inhaled beta-agonist treatment in bronchial asthma. Lancet 1990; 336 (8728): 1391-1396. (評価 II D)
- Crane J, Pearce N, Flatt A, et al. Prescribed fenoterol and death from asthma in New Zealand, 1981-83: case-control study. Lancet 1989; 1 (8644): 917-922. (評価 IV D)