(旧版)「喘息ガイドライン作成に関する研究」平成11年度研究報告書/ガイドライン引用文献(2000年まで)簡易版抄録を掲載

 

2-1-3.寄与因子

寄与因子は原因因子への曝露後に喘息発症の可能性を高める因子,あるいは喘息の素因自体を増大させる可能性のある因子である。想定される各因子には呼吸器感染,屋外大気汚染,室内空気汚染,喫煙等が挙げられているが,それらの喘息発症への関与は確定的でなく,その役割は今後の研究により明らかになるであろう。

(1) ウイルス性呼吸器感染

前文

ウイルス性呼吸器感染が喘息の増悪因子であることは間違いないが,喘息発病の直接原因であることを示す証拠はない。しかしながら,喘息発症に影響を与える寄与因子である可能性は高い。

推奨:アレルギー素因を有する者は,呼吸器感染症に罹患しないよう予防措置を心がける。また,感染した場合には,重篤化・長期化しないよう早期に治療を行う。ワクチン接種を流行期に施行することは一次予防の見地からも一考の価値がある。(B)
科学的証拠

ウイルス感染と喘息でMedlineにて検索すると450の文献があり,37編の文献においてコントロール試験が行われていた。

ウイルス性呼吸器感染症で入院歴のある小児において,感染後に肺機能の低下と気道反応亢進が認められる22)。さらに小児早期の細気管支炎やクループの罹患歴は,5年後の気道過敏性亢進の予測因子になることが報告されている23)。また喘息患者においてライノウイルス16の感染がヒスタミンによる気道過敏性を亢進させ,その機序にIL-8のような炎症性サイトカインが関与していることが示唆されている24)。インフルエンザワクチンがインフルエンザの罹患を予防し喘息の発症,悪化を防ぐ可能性が示唆されている25)

(RCT)

論文コード
(年代順)
対象試験デザイン結果評価
Stenius-
Aarnialaら25)
1989
318例,17〜73歳
喘息患者
不活化インフルエンザワクチンを使用した群vs使用しなかった群(二重盲検)。
8ヶ月
ワクチン群とプラセボ群との間にはインフルエンザによる喘息の発作の頻度に差はなかった。II-B

(分析疫学的研究)

論文コード
(年代順)
対象試験デザイン結果評価
Weissら23)
1985
194例,小児5〜9歳
無作為に抽出したEast Bostonの小児
クループや気管支炎の感染があった群(22)vs感染がなかった群(77)。
5年間
クループと気管支炎の既往は気道過敏性の亢進と関係があった。皮膚テストの陽性率とは関係がなかった。IV-B

結語

ウイルス性呼吸器感染は,気道過敏性を亢進させ,喘息発生の寄与因子となる可能性がある。
しかし,ワクチンが発症予防として有効かどうかは不明である。

 
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