2 診断・治療 CQ18 ESWL から他の治療法に変更を決断する時とは?
CQ/目次項目
2 診断・治療 CQ18 ESWL から他の治療法に変更を決断する時とは?
1
推奨/回答
腎結石に対する初回ESWL で破砕状況が不良の場合,他の治療法が引き続く治療としては選択されるべきである。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
2
推奨/回答
10 mm を超える尿管結石に対する初回ESWL の破砕状況が不良の場合,TUL が次の治療法として選択されるべきである(第1 選択でもよい)。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
3
推奨/回答
ESWL 後の多量の滞留するstone street や尿路感染症の発生に対しては,早期のTUL による追加治療(尿路閉塞の解除)が推奨される。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
4
推奨/回答
いずれの場合においても,開放手術は完全に否定されないが,その適応は極めて限定的である。
推奨の強さ
C1:エビデンスは十分とはいえないが,日常診療で行ってもよい。
ESWL は一部のサンゴ状腎結石,膀胱結石を除くすべての結石の第1 選択治療となりえる。しかし,固さと大きさなどの関係で1 回の治療で破砕が終了しえない症例も少なくない。そこで,複数回の連続したESWL で完全排石を目指すことのできる場合と,他の治療法への切り替えが必要なケースとの見極めが重要である。
◇腎結石の場合
多くのシスチン結石やシュウ酸カルシウム一水和物(COM)を成分とする腎結石は,ESWLを複数回行っても十分に破砕されにくいことがある。過度の衝撃波治療による腎障害を回避することや,医療経済学的見地から,他の治療に切り替えることも選択されるべきである。
初回のESWL 治療で,腎結石の1/3 程度近くが破砕されなければ,f-TUL を中心とした内視鏡手術に切り替えることが望ましい。特に大きな結石では,漫然とESWL 治療を繰り返すことは好ましくない。腎結石の長径が20 mm を超える場合などで上記のようにESWL 初回治療に抵抗する結石や,部分サンゴ状結石では,早期のPNL への切り替えやf-TUL とPNL の併用療法も検討すべきである。患者の事情(通院治療を強く希望など)によっては,十分とまではいかないまでもある程度の破砕効果が得られていれば,複数回のESWL 単独治療も選択肢としては完全には否定されない。開放手術も選択肢の一つではあるが,その適応は極めて限定的である(サンゴ状結石についてはサンゴ状結石の治療方針,CQ12 参照)。
◇尿管結石の場合
尿管結石については,部位により選択肢は異なる。
上部尿管結石
10 mm 以下の尿管結石であっても初回ESWL で破砕状況が不良の場合,次の治療としてはTUL が考慮されるべきである。
ESWL を第1 選択とした場合,初回ESWL で半分近くの結石が破砕片として排石された場合は,ESWL を繰り返し行うことも選択肢の一つである。しかし,初回ESWL により十分な破砕が得られないとき(まったく形状の変化がない場合,もしくは若干形状の変化があっても多くが排石しない場合)は,速やかにTUL に切り替えられるべきである。特に陥頓結石の場合は,複数回のESWL 治療でも十分な破砕が得られない場合が少なくない。また,初回のESWLで破砕されているにもかかわらず,尿管と結石の間に発生した炎症性ポリープ様に尿管粘膜が変化し,破砕片がその場に押しとどめられている場合がある。このような状況下の結石に対しては,TUL は有効である。
中部・下部尿管結石
初回治療としてTULを行わずESWLを第1選択として治療した場合,破砕不良の際は速やかにTUL を行うことが推奨される。中下部尿管結石に対して,破砕不良のために繰り返しのESWL 治療を行うことは,成功率の低さゆえ原則として推奨されない。
滞留する多量のstone street に対して
安易にESWLを繰り返さずに早期のTULによる追加治療(尿路閉塞の解除)が必要である。また,結石の破砕片による中等度以上の水腎症に対しても,同様の処置が必要となる場合がある。
開放手術について
いずれの結石においても開放手術は完全に排除されるべきではないが,その適応は極めて限られる。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)