2 診断・治療 CQ17 ESWL の合併症は何か?
CQ/目次項目
2 診断・治療 CQ17 ESWL の合併症は何か?
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推奨/回答
ESWL による早期合併症は,血尿,皮下出血という比較的軽症のものから,腎被膜下血腫,stone street,膵炎という,程度によっては早急な処置を要するものがある。
推奨の強さ
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
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推奨/回答
ESWL の晩期合併症としては,腎機能障害,高血圧,糖尿病の発生を認めることがある。
推奨の強さ
C1:エビデンスは十分とはいえないが,日常診療で行ってもよい。
◇早期合併症
ESWL による早期合併症には,血尿,皮下出血という比較的軽症のものから,腎被膜下血腫,stone street,膵炎という,程度によっては早急な処置を要するものがある。
腎被膜下血腫
腎被膜下血腫は無症状に経過し,後日偶然発見されるようなものもあるが,重篤な場合には患部側の強い腰痛・腹痛,嘔気・嘔吐を認める。発症は治療後数時間であり,徐々に疼痛が増強する場合,本合併症を疑って腎超音波検査,腹部CT,採血検査を行う。基本的には保存的加療で,急激な血圧低下や貧血の進行がみられる場合には,輸血療法を行い,場合により経皮的ドレナージや塞栓術が必要なこともある。高血圧,糖尿病,感染症,出血性素因,抗凝固薬や抗血小板薬の服用が原因になることがあり,予防および対処法としては,基礎疾患,出血傾向の有無,尿路感染の有無,内服薬のチェックを行うことである。そして衝撃波数およびエネルギーの抑制を心がけることである。
stone street
stone street はESWL 治療後数日で形成され,尿路閉塞による水腎症から疼痛,腎盂腎炎などの症状をきたすことがある。水腎症の程度や症状により,経過観察したりESWL の追加治療を行ったりする。水腎症が高度で腎盂腎炎を合併するような場合には,腎瘻造設やDJ ステント留置,TUL による結石除去を考慮する。腎結石の大きさが20 mm を超える大きなものでは,予防的に術前にDJ ステントを留置しておくとよい。
膵炎
膵炎は稀な早期合併症として報告がある。発生機序としては,衝撃波のcavitation による細胞傷害によるもの,ESWL 治療後の腎周囲炎症の波及が膵臓に拡がったため,また尿の腎外溢流による炎症の波及などが考えられている。治療後に腹部膨満,背部痛を認める場合には,膵炎も念頭に置いて腹部超音波検査,腹部CT,採血検査を行う。ESWL 治療後の採血には,膵酵素の検査を加えておくようにしておくとよい。予防としては,衝撃波数およびエネルギーの抑制を心がけ,尿路感染への対応や水腎症が高度な場合にはより注意深い操作が必要である。
◇晩期合併症
晩期合併症としては,腎機能障害,高血圧,糖尿病の発生が認められている。
腎機能障害
腎機能障害は,ESWL による糸球体や微小血管の損傷によるものと考えられている。腎組織障害は,組織内血腫形成など強い組織損傷では不可逆的であるが,比較的軽微な障害なら数週間で回復することが報告されている。障害の程度は,衝撃波の強度や衝撃波数に比例することが報告されていることから,予防および対処法としては,腎結石破砕において衝撃波の強度や数に注意し,治療開始には低エネルギーより徐々に上げていくことが重要である。治療間隔については明確な報告はないが,尿管に対し腎は間隔をあけて行う方がよいと考える。
高血圧,糖尿病
高血圧および糖尿病の発生に関しては,Mayo Clinic からの報告で,ESWL 群と保存的治療群の19 年間の比較において,ESWL 群が高血圧のリスクが有意に高いことを示している。糖尿病に関しても,同研究では膵臓への衝撃波のダメージを推定的原因としてESWL が発症リスクになると言及している。しかし,Sato らのESWL 治療を施行された腎結石群と尿管結石群における17年間の比較検討において,高血圧および糖尿病発生には両群に有意差を認めなかったとされている。また,糖尿病発生に関しては,Makhlouf らによる,ESWL 症例と健康調査のデータベースを基に6 年間の糖尿病の発生頻度を比較検討し,ESWL 群とコントロール群で有意差を認めないとした報告もある。ただし,Mayo Clinic とSato らの施設でのESWL 治療はESWL 使用機種の違いがあり,Mayo Clinic では第1 世代機種が使用されているのに対し,Satoらは第3 世代機種が使用されており,単純な比較は難しいものと考えられる。
高血圧の発生原因として,腎機能障害が大きく関与しているものと考えられ,予防および対策は,腎機能障害に準ずるものと考える。糖尿病発生に関しては,膵臓への衝撃波のダメージによる慢性的傷害が原因となりうることから,対処法としてより焦点サイズの小さな最新機器の選択が考えられる。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)