破砕効率と腎障害の観点からESWL の至適なパルス数は,60 発/分と思われる。
B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。
腎障害の観点から至適な治療間隔は,3 日〜2 週間と思われる。
C1:エビデンスは十分とはいえないが,日常診療で行ってもよい。
至適なパルス数 ESWL の至適なパルス数に関して,60 発/分と120 発/分を比較したRCT によると,60 発/分のほうが,有意に高い結石排石率を報告している。In vitro のボール型のセラミック結石モデルにおいても,90 発/分以上(90,120,150 発/分)と比較して,60 発/分において有意に結石破砕率の向上が示唆されている。一方,さらに遅い30 発/分と60 発/分の群の比較においての有意差は認めなかった。多い発射数で破砕効率が落ちる理由として,パルス数が上昇すると,以前の衝撃波により作り出された泡が消失せず,次の衝撃波との間で蓄積し,結石の表面で雲のような泡の層を形成し,その層が流入する衝撃波を阻害すると報告されている。また,結石表面に形成される小さな破片は,パルス回数の増加とともに残存し,それが核となり泡が形成され,結石表面で空洞化現象(cavitation)を誘導し,衝撃波の伝導を阻害する作用が示唆されている。 衝撃波の副作用について,ブタを用いた動物モデルでは(3,000 発,20 kV,Dornier HM3),100 発/分と60 発/分を比較して,100 発/分の方が24 時間後の急性組織障害性が高いことを示している。また,遅いパルス数(60~150 発/分)で治療した場合,速いパルス数(240~600発/分)で治療した群と比較して,鎮痛薬,麻酔薬の必要量が減り,皮膜下血腫の発生率においても2.5%から0.2%と有意に減少したと報告されている。 破砕効率ならびに腎障害の観点からも,60 発/分が至適パルス数として推奨される。 治療間隔 小山らは,ESWL 後の腎機能障害を検討する目的で尿中逸脱酵素の解析を行い,3 日間隔で治療を行った場合と,1 週間間隔で行った場合に,有意差をみとめないと報告している。また,腎障害の指標となる尿中逸脱酵素(NAG,LDH,γ-GTP)は,治療の3 時間後では上昇しているが,24 時間後には正常化していると報告している。つまり,ESWL 24 時間後には,腎障害がほぼ正常化を見ることを報告している。 ウサギモデルにおけるESWL の検討では,2,000 発を14 kV で48 時間間隔で治療した群と,4,000 発を同じく14 kV で1 回で治療した群との比較が行われた.4,000 発を1 日で治療した群は,被膜下および皮質部の血腫を75%にみとめ,長期的には,局所的な繊維化や障害をきたしたと報告されている。ラットモデルにおいて,2,000 発にて治療した群と,2 週間空けて2,000発を2 回治療した群で腎障害を比較した場合,腎障害に有意な差をみとめなかった。また,治療間隔を空けることは,腎障害予防のみならず,初回治療で破砕された結石破片の排石を促す意味もあるとも考えられる。よって,一期的に大量の衝撃波にて治療するよりは,複数に分けて治療するほうが,腎障害に対する安全性ならびに,初回治療の排石を確認する上でも有効である。しかし,治療間隔を比較検討した報告は限られており,十分なエビデンスがあるとは言い難い。治療間隔として,最低でも3 日程度の間隔を空けることが必要と思われる。また,2 週間以上間隔を空ける必要性は低いと思われる。 (本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
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至適なパルス数
ESWL の至適なパルス数に関して,60 発/分と120 発/分を比較したRCT によると,60 発/分のほうが,有意に高い結石排石率を報告している。In vitro のボール型のセラミック結石モデルにおいても,90 発/分以上(90,120,150 発/分)と比較して,60 発/分において有意に結石破砕率の向上が示唆されている。一方,さらに遅い30 発/分と60 発/分の群の比較においての有意差は認めなかった。多い発射数で破砕効率が落ちる理由として,パルス数が上昇すると,以前の衝撃波により作り出された泡が消失せず,次の衝撃波との間で蓄積し,結石の表面で雲のような泡の層を形成し,その層が流入する衝撃波を阻害すると報告されている。また,結石表面に形成される小さな破片は,パルス回数の増加とともに残存し,それが核となり泡が形成され,結石表面で空洞化現象(cavitation)を誘導し,衝撃波の伝導を阻害する作用が示唆されている。
衝撃波の副作用について,ブタを用いた動物モデルでは(3,000 発,20 kV,Dornier HM3),100 発/分と60 発/分を比較して,100 発/分の方が24 時間後の急性組織障害性が高いことを示している。また,遅いパルス数(60~150 発/分)で治療した場合,速いパルス数(240~600発/分)で治療した群と比較して,鎮痛薬,麻酔薬の必要量が減り,皮膜下血腫の発生率においても2.5%から0.2%と有意に減少したと報告されている。
破砕効率ならびに腎障害の観点からも,60 発/分が至適パルス数として推奨される。
治療間隔
小山らは,ESWL 後の腎機能障害を検討する目的で尿中逸脱酵素の解析を行い,3 日間隔で治療を行った場合と,1 週間間隔で行った場合に,有意差をみとめないと報告している。また,腎障害の指標となる尿中逸脱酵素(NAG,LDH,γ-GTP)は,治療の3 時間後では上昇しているが,24 時間後には正常化していると報告している。つまり,ESWL 24 時間後には,腎障害がほぼ正常化を見ることを報告している。
ウサギモデルにおけるESWL の検討では,2,000 発を14 kV で48 時間間隔で治療した群と,4,000 発を同じく14 kV で1 回で治療した群との比較が行われた.4,000 発を1 日で治療した群は,被膜下および皮質部の血腫を75%にみとめ,長期的には,局所的な繊維化や障害をきたしたと報告されている。ラットモデルにおいて,2,000 発にて治療した群と,2 週間空けて2,000発を2 回治療した群で腎障害を比較した場合,腎障害に有意な差をみとめなかった。また,治療間隔を空けることは,腎障害予防のみならず,初回治療で破砕された結石破片の排石を促す意味もあるとも考えられる。よって,一期的に大量の衝撃波にて治療するよりは,複数に分けて治療するほうが,腎障害に対する安全性ならびに,初回治療の排石を確認する上でも有効である。しかし,治療間隔を比較検討した報告は限られており,十分なエビデンスがあるとは言い難い。治療間隔として,最低でも3 日程度の間隔を空けることが必要と思われる。また,2 週間以上間隔を空ける必要性は低いと思われる。
(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)