2 診断・治療 CQ13 妊婦の尿路結石で注意すべき点は何か?

CQ/目次項目
2 診断・治療 CQ13 妊婦の尿路結石で注意すべき点は何か?
1
推奨/回答

尿路結石を疑う妊婦に対する診断法の第1 選択は腹部超音波検査である。

推奨の強さ

B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。

2
推奨/回答

疼痛管理にはアセトアミノフェン,麻薬(塩酸モルヒネ,コデイン,オキシコドンなど)を使用する。

推奨の強さ

B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。

3
推奨/回答

NSAIDs は,妊娠週齢を問わず使用禁忌である。

推奨の強さ

A:十分なエビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように強く推奨する。

4
推奨/回答

PNL とTUL は妊婦に対しても適応がある。

推奨の強さ

B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。

5
推奨/回答

ESWL は妊婦に対して禁忌である。

推奨の強さ

B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。

妊婦が症候性尿路結石に罹患する頻度は,妊娠約250~2,000 回に1 回であり,システマティックに検討された報告に乏しく,分析疫学的研究や記述研究による報告がほとんどである。
その発症は妊娠第2 期と第3 期に80~90%で,妊娠第1 期は稀である。妊娠により形態学的変化(腎盂尿管の拡張)が生じる。妊娠による生理的水腎症は妊娠第6~10 週から始まり,第20 週からはほとんどの妊婦にみられ,左右差がある(右:90%,左:67%)。

画像診断
尿路結石の画像診断は超音波検査,KUB,IVU,単純CT などによるが,妊婦に対しては胎児の放射線被曝と造影剤被曝に注意が必要である。放射線被曝により妊娠3週以内は胎児死亡,3~10 週は臓器奇形,8~15 週は精神発達遅延,妊娠後期では小児がんのリスクが生じる。胎児に対する照射が50 mGy 以下であれば,成長と先天欠損のリスクは報告されていないので,これ以下にとどめる。IVU では少量の造影剤が胎盤を通過する。ヨード造影剤に催奇性はないが,胎児の甲状腺機能が抑制される。また,MRI でのガドリニウム造影剤も胎盤を通過する。



尿路結石を疑う妊婦に対しては超音波検査が第1 選択となる。MRI は,セカンドラインとして有用かつ安全な検査である。超音波検査は水腎,水尿管の診断に有用であるが,尿管結石の診断は困難である。妊婦の生理的水腎症は腸骨動脈の高さまでであるため,それ以下の水尿管は下部尿管結石を疑う。経膣的エコーは下部尿管結石に有用である。
MRI は水腎症の診断に優れているが,妊娠による生理的水腎症と結石による水腎症の鑑別に限界がある。結石が10 mm 以下では描出困難で結石周囲の尿量にも依存する。造影剤なしで上部尿路を描出するhalf-Fourier single-shot turbo spin-eco magnetic resonance urography(HASTE MRU)も選択肢となりうる。
なお,尿管鏡検査も診断法の選択肢となりうるが,コンセンサスは得られていない。

疼痛に対する処置
疼痛に対してはアセトアミノフェン(1 回325~650 mg 内服,1 日4,000 mg まで)を使用する。アセトアミノフェンは胎盤を通過するが,鎮痛薬としてFDA(U. S. Food and Drug Administration)で容認されている。なお,胎児のリスクを最小限にするため使用可能容量範囲の低用量で使用することが望まれる。
オピオイドも妊娠には安全である。経口でコデイン,オキシコドンなどを使用する。ただし,精神的身体的依存性を有することに十分注意する。持続硬膜外麻酔は,疼痛コントロールに加え排石促進効果が期待される。
NSAIDsは羊水過少症,流産,心奇形に関与するリスクがあり妊婦に対する使用禁忌である。
medical expulsive therapy(MET)として,排石・疼痛軽減に効果があるα1 遮断薬,カルシウム拮抗薬は妊婦に禁忌薬剤であり,使用しない。

積極的治療
積極的治療が必要となる妊婦の尿路結石は20~30%であり,その適応は疼痛管理困難,敗血症,単腎あるいは両側腎の閉塞,産科合併症(分娩の早期誘発,妊娠中毒症の増悪),社会的事情などである。腎瘻カテーテルと尿管ステントは尿路閉塞に伴う敗血症時のオプションとなる。妊娠22 週前では腎瘻カテーテルが,それ以降は尿管ステントが好ましい。
TUL は尿管結石の診断・治療を同時に解決でき,妊娠全周期で適応可能である。結石の砕石にはホルミウム・ヤグレーザーが望ましく,超音波砕石機,電気水圧衝撃波は胎児の聴力障害を引き起こすリスクがある。ESWL は胎児死亡のリスクがあり禁忌である。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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