2 診断・治療 CQ10 尿管結石の自然排石を促進する薬剤にはどのようものがあるか?

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2 診断・治療 CQ10 尿管結石の自然排石を促進する薬剤にはどのようものがあるか?
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推奨/回答

尿管結石の自然排石を期待できる薬剤には,α1 遮断薬あるいはカルシウム拮抗薬があり,10 mm 以下の結石では自然排石率が増加することが報告されている。症状がコントロールできている患者に対しては第1 選択となり得る。ただし,尿管結石排石促進としての保険適用はない。

推奨の強さ

B:エビデンスがあり,推奨内容を日常診療で実践するように推奨する。

2
推奨/回答

ウラジロガシエキスや漢方薬(猪苓湯)などは尿管結石排石促進作用に対してよく用いられてきたが,エビデンスレベルの高い報告はない。しかし,その効果を否定するものではない。

推奨の強さ

C1:エビデンスは十分とはいえないが,日常診療で行ってもよい。

平成23年度厚生労働省社会医療診療行為別調査によると,わが国における尿路結石症関連手術費用は151 億円(ESWL:105 億円,TUL:23 億円,PNL:10 億円,その他:13 億円)に達している。薬剤による結石排石促進療法(medical expulsive therapy:MET)は医療経済の観点から非常に重要と考えられる。
過去の報告では5 mm 未満の結石の自然排石率は68%,5~10 mm の結石の自然排石率は47%とされており,AUA,EUA ともに10 mm 以下の尿管結石で,早急な結石除去の必要のない症例で,患者が同意するような場合にMET が推奨されている。使用が推奨される薬剤として,α1 遮断薬とカルシウム拮抗薬がある。

α1 遮断薬
最も多くのエビデンスがあるのがα1 遮断薬であるタムスロシン(0.4 mg)であり,メタアナリシスでもタムスロシン内服群において,10 mm 以下の結石の自然排石率が有意に高く(RR:1.54,54% vs 83%),排石までの時間も有意に短縮された(9.5 日vs 6.1 日)。また,タムスロシンはカルシウム拮抗薬であるニフェジピンとの比較試験においても,同等かそれ以上の有効性が示されている。さらに,ESWL 後の排石促進効果をみたメタアナリシスにおいても,タムスロシン群はコントロール群に比較して,15~20%の排石促進効果を認めた。ただし,これらの報告ではタムスロシン0.4 mg が使用されており,日本国内で一般使用される用量の倍であることに注意が必要である。
これらの報告には非RCT が多く含まれ,タムスロシンの排石促進効果に否定的なRCT の報告もあるために,α1 遮断薬および他のMET 薬剤の尿管結石患者に対する効果を証明するためには,さらなるRCT が必要である。日本人における有効性を示す報告はいくつかあり,それぞれにα1 遮断薬の有用性が報告されているが,小規模な研究に留まっている。

MET の留意点
MET の適応は保存的加療が適応となるすべての尿管結石である。副作用の観点からみると,降圧作用が少なく,普段から排尿障害薬として使い慣れているα1 遮断薬はカルシウム拮抗薬よりも使用しやすいが,適応外使用となるために患者への十分なインフォームドコンセントが必要となる。また,1 か月程度を目処に外科的治療の必要性を再考すべきであり,漫然と使用すべきではない。

その他の薬剤
わが国では1970 年代より,結石の排石促進目的にウラジロガシエキスや猪苓湯などの漢方薬などが使用されてきた。これらの薬剤は尿路結石症に適応があるが,その効果についてエビデンスレベルの高い報告はなく,排石促進効果の正確な評価は困難である。しかし,その効果を否定するものではなく,これらの薬剤によるMETも今まで通り施行しても良いと考えられる。

(本文,図表の引用等については,尿路結石症診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)

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