HPV 検査は中咽頭癌の治療感受性,予後を予測するうえで有用である。しかしながら,治療方法の選択にはその有用性は確立していない。
C1:診療で利用・実践することを考慮してよい。
近年,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)感染が関連する中咽頭癌が増えている。 従来子宮頸癌の95%以上からHPV 遺伝子が検出されることより,HPV 感染が子宮頸癌の原因として知られていた。頭頸部癌の領域でも1980 年代からHPV の発癌への関与が報告されていたが,2000 年代に入り中咽頭癌の約50%においてHPV 遺伝子が検出されること,若い年齢層を中心に中咽頭癌が増加していることが報告され一気に注目を集めることとなった。性行為の若年化,多様化が増加の背景因子として考えられている。本邦においてもHPV 感染と中咽頭癌に関する多施設共同研究が行われ,約50%の感染率であること,HPV タイプとしてHPV16 が90%を占めることが報告されている。 癌組織におけるHPV の検出方法としてはウイルスDNA をPCR やin situ hybridization 法で同定する方法や,HPV 感染のマーカーとして知られているp16 の免疫組織化学染色法が用いられている。 HPV 陽性の中咽頭癌は側壁癌,前壁癌がほとんどであり,非喫煙者,非飲酒者にも多い。陰性の癌に比し放射線感受性,化学療法感受性が高く予後が良好であることから,HPV 感染の有無により治療強度を振り分けることができないかという臨床試験が国内外で進行中であるが,まだ治療強度の個別化に用いることができるというエビデンスは確立していない。 中咽頭癌に対する化学放射線療法は嚥下障害などによるQOL 低下も問題となることも少なくない。HPV 陽性の中咽頭癌に対する低侵襲治療のエビデンスが確立することが期待されている。 (本文,図表の引用等については,頭頸部癌診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)
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ガイドライン解説
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近年,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)感染が関連する中咽頭癌が増えている。
従来子宮頸癌の95%以上からHPV 遺伝子が検出されることより,HPV 感染が子宮頸癌の原因として知られていた。頭頸部癌の領域でも1980 年代からHPV の発癌への関与が報告されていたが,2000 年代に入り中咽頭癌の約50%においてHPV 遺伝子が検出されること,若い年齢層を中心に中咽頭癌が増加していることが報告され一気に注目を集めることとなった。性行為の若年化,多様化が増加の背景因子として考えられている。本邦においてもHPV 感染と中咽頭癌に関する多施設共同研究が行われ,約50%の感染率であること,HPV タイプとしてHPV16 が90%を占めることが報告されている。
癌組織におけるHPV の検出方法としてはウイルスDNA をPCR やin situ hybridization 法で同定する方法や,HPV 感染のマーカーとして知られているp16 の免疫組織化学染色法が用いられている。
HPV 陽性の中咽頭癌は側壁癌,前壁癌がほとんどであり,非喫煙者,非飲酒者にも多い。陰性の癌に比し放射線感受性,化学療法感受性が高く予後が良好であることから,HPV 感染の有無により治療強度を振り分けることができないかという臨床試験が国内外で進行中であるが,まだ治療強度の個別化に用いることができるというエビデンスは確立していない。
中咽頭癌に対する化学放射線療法は嚥下障害などによるQOL 低下も問題となることも少なくない。HPV 陽性の中咽頭癌に対する低侵襲治療のエビデンスが確立することが期待されている。
(本文,図表の引用等については,頭頸部癌診療ガイドライン 2013年版の本文をご参照ください。)