抗血栓薬休薬後の服薬開始は内視鏡的に止血が確認できた時点からとする.再開は,それまでに投与していた抗血栓薬とする.再開後に出血することもあるので,出血に対する対応は継続する.
B:科学的根拠があり,行うよう勧められる
Ⅴ:記述研究(症例報告やケースシリーズ)
各種薬剤のフローチャートにつきましては、ステートメント1の解説をご参照ください。 低いレベルの根拠のみであるが,臨床現場ではすでに定着し,その有用性が明らかである.介入臨床試験や無作為比較試験が行われにくい状況にある.それぞれの手技において,頻度の違いこそ見られるものの,後出血の報告がある. アスピリン,アスピリン以外の抗血小板薬は,内視鏡治療後止血が確認されれば,速やかに内服を開始する.抗凝固薬の再開も同様である.ヘパリン置換がされている症例では,ヘパリンを再開する.経口摂取開始と同時にワルファリン,ダビガトランの再開は可能である.ワルファリンを休薬前と同用量で再開した後,PT-INR が治療域に達したことを確認して,ヘパリンを中止する.ダビガトランの場合は,半減期も短く休薬前と同用量で再開すると同時にヘパリンを中止する. 抗血栓薬再開後に出血することもあるので,出血に対する対応は継続する.日本からの術後1 週間の抗血栓薬休薬を原則とした大腸ポリペクトミー3,138 例の後ろ向き研究では,1.2%に後出血が認められ,後出血時期は平均5.1 日(1-14 日)と報告している.日本からの術後1 週間の抗血栓薬休薬を原則とした胃粘膜下層剥離術454 例の後ろ向き研究では,後出血は5.7%で,後出血時期は中央値2 日(0-14 日)であった.胃・十二指腸粘膜下層剥離術を施行した219 例の後ろ向き研究において,後出血率は,抗血栓薬内服なし群6.6%(10/152),単剤内服・施行時中止群12.1%(4/33),2 剤以上内服・施行時中止群9.1%(1/12),単剤内服・アスピリン継続群0.0%(0/7),2 剤以上内服・アスピリン継続群46.7%(7/15)であったとの報告があり, 2 剤以上内服していた群では薬剤再開後に出血をきたす危険性が非常に高いことを考慮する必要がある. 抗血栓薬が早期に再開されている場合は,より高頻度の後出血がおこることが予想され, 2 週間以後も後出血がある可能性を認識し,十分なインフォームドコンセントの下で慎重な対応が重要である. (本文,図表の引用等については,抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインの本文をご参照ください.)
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各種薬剤のフローチャートにつきましては、ステートメント1の解説をご参照ください。
低いレベルの根拠のみであるが,臨床現場ではすでに定着し,その有用性が明らかである.介入臨床試験や無作為比較試験が行われにくい状況にある.それぞれの手技において,頻度の違いこそ見られるものの,後出血の報告がある.
アスピリン,アスピリン以外の抗血小板薬は,内視鏡治療後止血が確認されれば,速やかに内服を開始する.抗凝固薬の再開も同様である.ヘパリン置換がされている症例では,ヘパリンを再開する.経口摂取開始と同時にワルファリン,ダビガトランの再開は可能である.ワルファリンを休薬前と同用量で再開した後,PT-INR が治療域に達したことを確認して,ヘパリンを中止する.ダビガトランの場合は,半減期も短く休薬前と同用量で再開すると同時にヘパリンを中止する.
抗血栓薬再開後に出血することもあるので,出血に対する対応は継続する.日本からの術後1 週間の抗血栓薬休薬を原則とした大腸ポリペクトミー3,138 例の後ろ向き研究では,1.2%に後出血が認められ,後出血時期は平均5.1 日(1-14 日)と報告している.日本からの術後1 週間の抗血栓薬休薬を原則とした胃粘膜下層剥離術454 例の後ろ向き研究では,後出血は5.7%で,後出血時期は中央値2 日(0-14 日)であった.胃・十二指腸粘膜下層剥離術を施行した219 例の後ろ向き研究において,後出血率は,抗血栓薬内服なし群6.6%(10/152),単剤内服・施行時中止群12.1%(4/33),2 剤以上内服・施行時中止群9.1%(1/12),単剤内服・アスピリン継続群0.0%(0/7),2 剤以上内服・アスピリン継続群46.7%(7/15)であったとの報告があり, 2 剤以上内服していた群では薬剤再開後に出血をきたす危険性が非常に高いことを考慮する必要がある.
抗血栓薬が早期に再開されている場合は,より高頻度の後出血がおこることが予想され, 2 週間以後も後出血がある可能性を認識し,十分なインフォームドコンセントの下で慎重な対応が重要である.
(本文,図表の引用等については,抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインの本文をご参照ください.)