ステートメント 9(抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡)

CQ/目次項目
ステートメント 9(抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡)
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推奨/回答

出血高危険度の消化器内視鏡において,アスピリンとワルファリンまたはダビガトラン併用の場合には,抗血栓薬の休薬が可能となるまで内視鏡の延期が好ましい.内視鏡の延期が困難な場合には,アスピリンは継続またはシロスタゾールに置換し,ワルファリンまたはダビガトランはヘパリンに置換する.

推奨の強さ

C1:科学的根拠はないが,行うよう勧められる

エビデンスの確実性

Ⅵ:患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見

各種薬剤のフローチャートにつきましては、ステートメント1の解説をご参照ください。

科学的根拠は低いレベルの根拠のみであるが,その有益性は害に勝り,臨床的に有用と考えられる.エビデンスはポリペクトミーに関するものしかなく,限定的でステートメントを十分にサポートするエビデンスと言えない.薬剤を変更することでリスクを下げることができるとするエビデンスはないと判断する.

アスピリンと抗凝固薬を併用した場合,出血高危険度の消化器内視鏡の出血性偶発症がどれくらい増加するかについての明確なエビデンスは存在しない.5,593 例の大腸ポリペクトミー症例の後ろ向き研究において,アスピリン内服者は後出血が増加しなかったが,ワルファリン内服者は後出血が有意に増加したことが報告されている.このことから類推すると,大腸ポリペクトミーは言うに及ばず,さらに出血性偶発症の頻度が高い手技(特に粘膜下層剥離術)については,ワルファリンは休薬しヘパリン置換を行うことが推奨される.
抗血小板薬と抗凝固薬を併用内服されている患者は基本的に血栓塞栓症の発症リスクが高い患者であり,抗血栓薬の休薬は極力避ける必要がある.本ステートメントでは,血栓塞栓症の発症リスクが軽減し抗血栓薬の休薬が可能となるまで内視鏡の延期を推奨したが,一般診療では癌の治療など,出血高危険度の内視鏡を血栓塞栓症のリスクを押してまで行わないといけないことがあることも事実でありその対応についても併記した.本ステートメントの内容については,今後十分な検証が必要である.

(本文,図表の引用等については,抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインの本文をご参照ください.)

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