ガイドライン

根拠と総意に基づくカンガルーケア・ガイドライン(完全版)

書誌情報
総意形成のまとめ


トピック1:全身状態が落ち着いた低出生体重児に対する「カンガルーケア」

Iガイドライン案(1回目)
全身状態がある程度落ち着いた低出生体重児には、安全面に配慮した上で、24時間継続して行うカンガルーケアを行うことが薦められる。
(以降、青字は仮推奨)

IIガイドライン案(1回目)に対する評価
スコアは1点から9点までばらつき、中央値は7であった。
評価スタッフからのコメントでは、「24時間継続して」という表現に対し、精神的・肉体的に母親に負担が強すぎるのではないか、睡眠時に安全が確保できるのか、日本の多くの施設ではハード面での制限から実施不可能ではないか・・・といった意見が多々寄せられ、この点がスコアを低くした主たる要因であった。また、「24時間継続」の意図を汲んで「できる限り長時間」「できる時間で60分以上」などとしたほうが現実的ではないかとの意見も複数寄せられた。
これらの意見を受け、ワーキンググループでは、ガイドライン案(1回目)の「24時間継続して」の表現を「できる限り長時間」に変更した。

III改訂ガイドライン案
全身状態がある程度落ち着いた低出生体重児には、安全面に配慮した上で、できる限り長時間、カンガルーケアを行うことが薦められる。

IVワークショップ
ワークショップの第一部で、マダガスカル、スウェーデンで実際に24時間カンガルーケアを実施している様子が紹介されたことで、「24時間継続」に対する具体的なイメージが伝わり、日本での実施が不可能で非現実的なものではないということが共有されたようである。
仮推奨の「24時間継続」の表現を「できる限り長時間」と言い換えるという点には賛否両論が寄せられた。言い換えに賛成の方々の意見としては、より現実的な表現である、24時間の負担感が減るといった声が大きかった。一方、言い換えに反対の方々からは、目標として24時間と掲げるほうが推奨文としてふさわしい、24時間とはすなわち「いつでも」カンガルーケアをごく当たり前、普通のこととして実践することを意図しているといった意見が寄せられた。
この議論の流れから、現実に日本の多くの施設で必要なのは「長時間継続のカンガルーケア」というよりはその前提となる「母子同室」の普及ではないかとの意見が会場から出された。この点に関しても賛否両論が出された。賛成者からは、依然として日本の多くの施設で母子が物理的に分離されている状態を改善する推奨文としての期待が寄せられた。一方、カンガルーケアの推奨文のなかに母子同室を含むのは概念が異なる、本来の意味が失われるといった反対意見も複数出された。
ワークショップで最終的に得られた推奨文は、盛りだくさんな表現となった。「両親の希望の下に」、「心理・社会的な支援が必須」という表現の追加に関しては、比較的、合意形成がスムーズであった。論点の「24時間継続」は「24時間継続、可能な限り」との表現に落ち着き、その間にもう一つの論点となった「母子同室」の語を入れる形が多数の会場参加者から支持された。

IV'ガイドライン案(2回目)
全身状態がある程度落ち着いた低出生体重児には、両親の希望の下に、安全面に配慮した上で、24時間継続して母子同室、可能な限りカンガルーケアを行うことが薦められる。この際、心理・社会的な支援が必須である。

Vガイドライン案(2回目)に対する評価
スコアは3点から9点までばらつき、中央値は8であった。
評価スタッフからのコメントでは、新しい推奨文を好意的に受け止めている意見が多かったが、論点であった「24時間継続」「母子同室」に関しては、ワークショップでの議論と同様、評価スタッフ内の意見も賛否両論であった。また実践に際しての安全性の確保に関する追加コメントも複数寄せられた。
また、同時に行われた会場参加者のアンケートでは、スコアは1点から9点までばらつき、中央値は7であった。ワークショップの議論を反映して、「24時間継続」か「可能な限り」かについてと、「母子同室」についてのコメントが非常に多くみられた。また、各々の施設で実施する場合のリソース(マンパワー、場所、環境等)の不足に関するコメントも多く寄せられた。

VIガイドライン案(3回目)
これまでの流れを受け、第3回目のガイドライン案では「前提条件」をトピック1の前に置き、各トピックの推奨には注釈をつけることとした。

カンガルーケアを行うにあたって:前提条件
カンガルーケア(直肌のだっこ)を薦める際には、どのような場面でのカンガルーケアかにかかわらず、ご家族の心理・社会的な支援を整えることも含めてケアを行ってください。また、カンガルーケアの実施に先立ち、ご家族に情報提供を十分に行い、ケア実施の希望を確認してください。
ときにご家族の考えと医療スタッフの考えがうまく一致しないことがあるかもしれませんが、「赤ちゃんが中心であるChild-centred Care」という原則をいつでも忘れずに行動しましょう。
ケアの実施にあたっては、直接のケアの時間内だけでなく、ケアの前後数時間を含めて安全面に最大限の配慮を行ってください。(過去にヒヤリハット報告がいくつか報告されています。)
これらの条件が十分に守れない時は、形だけのカンガルーケアになってしまい本来の効果を期待できない恐れがあります。
まずはカンガルーケアを行う環境づくりからはじめてみましょう。

トピック1
全身状態がある程度落ち着いた低出生体重児(※注1)には、まず母子同室を行った上で、出来る限り24時間継続した(※注2)カンガルーケアをすることが薦められる。
  • ※注1:ここでは、体重が2500g未満の児で、バイタルサイン(体温、呼吸数、脈拍数など)が安定していて、原発性の無呼吸(呼吸中枢の未熟性による無呼吸)がない、または治療済みの場合をさします。
  • ※注2:出来るだけ長時間、出来るだけ中断なく実施することが望まれます。

VIIガイドライン案(3回目)に対する評価
前提条件
前提条件は評価の対象とはしていなかったが、複数の好意的なコメントが寄せられた。一方で、ガイドラインというとあたかもその通りに実施しなければならないと思う人がいることにもう少し配慮すべきであるという意見、各トピックの推奨文・注釈で重複する内容は前提条件にもう少しまとめたほうがよいのではないかという意見も寄せられた。

トピック1
2回目と同様、スコアは3点から9点までばらつき、中央値は8であったが、3回目の方が評価スタッフ全員での賛成度は少し高い値であった。
評価スタッフからのコメントでは、新しい推奨文に注釈がついたことを好意的に受け止めている意見が多かった。論点であった「母子同室」に関しては推奨文の表現でほぼ同意が得られた。一方「24時間継続」については、24時間継続を目指すことが理想でありガイドラインの文章としては良いという意見と、無理をしてでも24時間ケアを行わなければいけないと母親や家族に思わせてしまうのではないかという意見が依然として寄せられたが、全体としては推奨文を評価するコメントが多く寄せられた。

VIIIガイドライン案 完成
この結果を受け、ガイドライン評価メンバーでの協議の結果、総意形成が得られたと判断し、推奨文の完成となった。


IXパブリックコメント募集
カンガルーケア・ガイドライン独自のウェブサイト、周産期・新生児医療関連のメーリングリスト、未熟児新生児学会会場などの場を通じて、広く多くの方々に完成した推奨文に対するご意見を募集した。

前提条件
改訂を要するようなパブリックコメントは寄せられなかった。

トピック1
「母子同室」に関して、もう少し積極的に推奨するような文面にしてはどうか等のコメントが寄せられた。

Xガイドライン 完成
前提条件に関して、表現が不正確であった部分を、作成メンバーで編集した。また、トピック1の「母子同室」に関しては、これまでにも紆余曲折があり、3回目の評価でほぼ同意がとられたものであったため、変更は行わないこととした。

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