ガイドライン

(旧版)変形性股関節症診療ガイドライン

書誌情報
第5章 関節温存手術と関節固定術


Research Question 7
変形性股関節症に対する関節鏡視下手術の治療効果は

推奨
Grade C 関節鏡視下手術は関節唇障害や関節内遊離体を合併した変形性股関節症の症状緩和に有効な術式である.


解説
股関節における関節鏡視下手術の適応として関節内遊離体や関節唇損傷などがあげられ,それぞれに対する関節鏡の有用性を示す多くの報告がある.変形性股関節症(股関節症)にいたった症例のなかにもそれらの病変を合併している場合があり,症状の主因である場合には関節鏡下手術によって症状が緩和されることが多い.進行期・末期股関節症への関節鏡視下デブリドマンの適応に関しては,除痛効果とその持続期間に関して意見の分かれるところである.


サイエンティフィックステートメント
  • 関節唇障害に対する鏡視下関節唇部分切除術は症状緩和に有用であるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).
  • 股関節内遊離体に対する関節鏡視下摘出術は症状緩和に有用であるとする中等度のエビデンスがある(EV level-IV).


エビデンス
  • 股関節症70関節に対する関節鏡視下手術の結果をFarjo and Glick分類にて評価した報告.軟骨変性を有していた39関節中,良以上の成績は11関節で,不可が28関節であった.不可の28関節中,17例は人工股関節全置換術(THA)に移行した.軟骨変性を有する股関節症に対する関節鏡視下デブリドマンは,遊離体や関節唇損傷に対するものよりも成績が不良であった(HF10753, EV level-IV).
  • 股関節鏡視下手術を行った83例86関節(平均33.6歳)の満足度評価およびTHAへの移行についての報告.全体の60%の症例で術前より症状が改善したという返答が得られた.成績良好例は,関節唇損傷とPerthes病後の症例で,それぞれ91%と89%が術前より改善したと返答した.成績不良例は,進行した股関節症と大腿骨頭壊死症であり,それぞれ改善したと答えた症例の割合は40%と44%であった.進行した股関節症の9関節のうちの2関節(22%)はTHAへ移行した.進行した股関節症への本術式の適応には慎重を要する(HF10380, EV level-IV).
  • 28例34関節の進行期および末期股関節症に対する関節鏡視下デブリドマン(平均観察期間4年2ヵ月)の有効性評価の報告.JOA hip scoreの疼痛点数は,術前7.6点が術後25点に改善した(30点:17関節,20点:14関節,10点:3関節,悪化例:0関節).成績に影響する因子は,反体側の支持脚(THAまたは健常股関節)の有無であった.疼痛点数で30点以上の占める割合は,支持脚がある場合には21関節中15関節(71.4%)であり,支持脚がない場合には13関節中2関節(15.4%)であった(HJ10359, EV level-IV).
  • 進行期および末期股関節症の34例37関節に本術式を施行した報告.JOA hip scoreは術前35点が術後63点に改善した.また満足度は,「満足」が54%(20関節),「どちらでもない」が35%(13関節),「不満」が11%(4関節)であった.進行期および末期の変形性股関節症に本術式を施行する場合,反体側に支持脚(THAまたは健常股関節)を有する例が良い適応である(HJ10771, EV level-IV).
  • CE角25°以下の臼蓋形成不全股48関節の関節内病変に対する股関節鏡視下手術の報告.全体での点数改善は27点(modified Harris hip score)であり,79%(38関節)は少なくとも10点以上の改善を示した.疼痛改善の度合いは,年齢別では若い年齢ほど大きく,診断別では骨頭靱帯断裂と関節内遊離体が大きかった.進行した股関節症が存在する場合は,疼痛の改善がもっとも小さかった.股関節鏡下手術の成績は臼蓋形成不全が存在しても,臼蓋形成不全がない場合と同等の成績であり,関節内病変の種類に依存する(HF11894, EV level-IV).
  • 13例13関節の前股関節症および初期股関節症に対する関節鏡視下手術(平均経過観察期間6年7ヵ月)の報告.関節鏡視下手術の内訳は,関節唇部分切除が8関節(前股関節症4例,初期4関節),関節内デブリドマンが4関節(全例初期),関節内遊離体摘出が1関節(初期)であった.関節唇部分切除ではJOA hip scoreは術前55点が術後90点に改善し,関節内デブリドマンでは術前48点が術後63点に改善した.関節内遊離体摘出を施行した1例は疼痛の改善がなく,骨切り術へ移行した(HJ10332, EV level-IV).


文献

1) HF10753 Walton NP, Jahromi I, Lewis PL. Chondral degeneration and therapeutic hip arthroscopy. Int Orthop. 2004;28(6):354-6. Epub 2004 Sep 10.
2) HF10380 O'leary JA, Berend K, Vail TP. The relationship between diagnosis and outcome in arthroscopy of the hip. Arthroscopy. 2001;17(2):181-8.
3) HJ10359 山本泰宏,井手隆俊,小野尚司,浜田良機.変形性股関節症に対する鏡視下デブリドマンの成績.Hip Joint. 2002;28:101-3.
4) HJ10771 山本泰宏,井手隆俊,小野尚司,小川知周,落合聡司,浜田良機.変形性股関節症に対する鏡視下デブリドマンの満足度調査.関節鏡.2003;28(1):49-52.
5) HF11894 Byrd JW, Jones KS. Hip arthroscopy in the presence of dysplasia. Arthroscopy. 2003;19(10):1055-60.
6) HJ10332 山本泰宏,井手隆俊,中村祐敬,浜田良機.前・初期変形性股関節症に対する鏡視下手術.Hip Joint. 2001;27:264-6.


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