ガイドライン

(旧版)エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン[第1版]

書誌情報
VI:外科治療

 
CQ-26 どのような十二指腸乳頭部癌に対して縮小手術は推奨されるか?

十二指腸乳頭部癌に対しては膵頭十二指腸切除術が適応であり,縮小手術は推奨できない。(推奨度C2
ただし,腺腫内癌においては縮小手術も考慮される。


乳頭部癌に対する標準術式は依然として膵頭十二指腸切除術であり,手術手技,周術期管理の向上にともなって,良好な手術成績が得られるようになっている。しかし乳頭部癌の病理組織学的検討から,Oddi筋を越えない乳頭部癌ではリンパ節転移率はきわめて低いことが明らかとなった1),2),3),4) (レベルIV)。このため近年,乳頭部癌に対する根治手術として様々な縮小手術の報告がなされている。しかし縮小手術と標準手術でRCTを行った報告はない。症例集積研究としてはKnoxら5)(レベルIV)は乳頭部切除を行い生存率はむしろ膵頭十二指腸切除術より良好であったと報告しており,Goldbergら6),Sharpら7)(レベルIV)は安全かつ膵頭十二指腸切除術と遜色のない成績の術式と述べている。しかし,膵頭十二指腸切除術に比し再発率が高いとの報告もみられ,Branumら8)(レベルIV)は26例に局所切除を施行し,癌と診断された8例中6例が再発したと報告している。本邦でも高崎ら9),竜ら10)(レベルIV)は乳頭部癌に対する,乳頭部を含めた十二指腸部分切除を行い,再発なく良好な成績を修めたと報告しているが,木下ら11),12)(レベルIV)は乳頭部切除を6例に施行し,遺残を4例に認め,3例が原病死したと報告している。報告例を詳細に検討すると,根治をめざした切除と患者側因子により選択された姑息切除が混同されており判断が困難になっている。
縮小手術の適応に関しては,Kleinら13)(レベルIV)は腺腫またはT1N0の腫瘍を局所切除の適応としており,Paramythiotisら14)(レベルIV)は現段階ではAdenoma with high-grade dysplasia,2cm以下のvillousまたはtubulovillous adenoma,tubular adenomaを適応としている。Begerら15)(レベルIV)は術前papillary adenomaと診断され,切除した症例の26%は癌であったと報告しており,適応としてはpTis,pT1,N0,M0,G1 or G2の症例で,局所のリンパ節の郭清が必要と述べている。
進展度診断のmodalityにはEUS,IDUSが有用と報告されているが,EUSは膵浸潤,十二指腸浸潤に関しての診断能は高いが,Oddi筋の描出は困難であり,またIDUSではOddi筋の描出は可能であるが,癌のOddi筋浸潤の有無に関する正診率は現段階では十分とはいえない16),17),18)(レベルIV)。このため,Oddi筋浸潤の有無を含めた正確な術前診断は困難であるといわざるを得ない。現時点では術前に癌と診断された乳頭部腫瘍に対する縮小手術のコンセンサスは得られていない。今後,乳頭部癌に対する縮小手術を広めるには,診断精度の向上と,それに基づいたRCTが必要であるが,現段階ではOddi筋浸潤の可能性の低い腺腫あるいは腺腫内癌が適応である。なお,腺腫には内視鏡的乳頭切除も試みられている19),20)


引用文献
1) 羽生富士夫,新井田達雄,今泉俊秀.十二指腸乳頭部癌の外科治療と問題点.胆と膵.1995;16:1041-5.
2) 新井田達雄.十二指腸乳頭部癌の臨床病理学的研究―予後規定因子と再発様式について―.日消外会誌.1989;22:2009-17.
3) 中尾昭公,原田明生,野浪敏明,岸本若彦,竹田伸,黒川剛,他.十二指腸乳頭部癌の外科治療成績と問題点.日外会誌.1992;93:805-10.
4) 伊藤豊,高野靖悟,河野悟,佐藤一雄,山崎猛,加茂知久,他.十二指腸乳頭部癌の臨床病理学的検討.日大医誌.1996;55:311-5.
5) Knox RA, Kibgston RD. Carcinoma of the ampulla of Vater. Br J Surg. 1986;72:72-3.
6) Goldberg M, Zamir O, Hadary A, Nissan S. Wide local excision as an alternative treatment for periampullary carcinoma. Am J Gastroenterol. 1987;82:1168-71.
7) Sharp KW, Barandes JL. Local resection of tumor of the ampulla of Vater. Am Surg. 1990;56:214-7.
8) Branum GD, Pappas TN, Meyers WC. The management of tumors of the ampulla of Vater by local resection. Ann Surg. 1996;224:621-7.
9) 高崎健,太田岳洋.十二指腸乳頭部癌に対する十二指腸下行脚部分切除.手術.2003;57:63-7.
10) 竜崇正,趙明浩,小西大,奥誠,川島太一,高山亘.十二指腸乳頭部腫瘍に対する膵温存十二指腸分節切除.胆と膵.2003;24:39-41.
11) 木下壽文,青柳成明,福田秀一.早期十二指腸乳頭部癌(乳頭部癌)の治療方針.日外科系連会誌.2001;26:1130-4.
12) 木下壽文,原雅雄,児玉孝仁,青柳成明,白水和雄.経十二指腸的乳頭切除.胆と膵.2003;24:27-31.
13) Klein P, Reingruber B, Kastl S, Dworak O, Hohenberger W. Is local excision of pT1-ampullary carcinomas justified? Eur J Surg Oncol. 1996;22:366-71.
14) Paramythiotis D, Kleeff J, Wirtz M, Friess H, Buchler MW. Still any role for transduodenal local excision in tumors of the papilla of Vater? J Hepatobiliary Pancreat Surg. 2004;11:239-44.
15) Beger HG, Treitschke F, Gansauge F, Harada N, Hiki N, Mattfeldt T. Tumor of the ampulla of Vater. Arch Surg. 1999;134:526-32.
16) 高橋邦幸,真口宏介,潟沼朗生,松永隆裕,小山内学,石渡裕俊,他.EUS/IDUSによる乳頭部癌の進展度診断.胆と膵.2004;25:475-9.
17) 大久保裕直,須山正文,窪川良廣,崔仁燠,田所洋行,越川均,他.十二指腸乳頭部癌の診断―画像診断の対比と評価―.胆と膵.2003;24:3-8.
18) 伊藤啓,藤田直孝,野田裕,小林剛,木村克巳.超音波内視鏡による乳頭部癌の進達度診断.胆と膵.2003;24:9-13.
19) Han J, Kim MH. Endoscopic papillectomy for adenomas of the major duodenal papilla (with video). Gastrointest Endosc. 2006;63:292-301.
20) Bohnacker S, Soehendra N, Maguchi H, Chung JB, Howell DA. Endoscopic resection of benign tumors of the papilla of vater. Endoscopy. 2006;38:521-5.


Clinical Question一覧へ戻る

 

書誌情報