ガイドライン

(旧版)エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン[第1版]

書誌情報
V:術前胆道ドレナージ

 
CQ-10 黄疸を有する患者に術前の胆道ドレナージは必要か?

胆管炎,広範肝切除予定例は術前減黄術が必要である。(推奨度B


閉塞性黄疸は古くて新しい問題であり,その病態生理についても研究は時代とともに進歩しているが十分に解明されたとはいえないのが現状である。しかし閉塞性黄疸が肝,腎,胃粘膜,血液凝固,免疫などの多臓器にわたる障害を引き起こす,あるいはその準備状態にあるとの考えから本邦ではごく自然に術前減黄処置が行われてきた経緯がある。しかし,これに対し欧米では1980年代より術前減黄処置に対する疑義が唱えられいくつかのRCTが行われた。その結果,術前減黄処置を行っても術後の合併症発生率,死亡率には差がなかったとして,術前減黄処置の危険性を考えると術前減黄処置の必要性はないと結論づけている報告が多く見受けられた1),2),3)(レベルII)。しかし,これらの報告では,対象となった手術内容はバイパス手術などの姑息的手術が大部分で,黄疸肝の肝切除術などの大手術がなく,また,PTBDそのものによる合併症の発生率が極めて高く,これらの結論をそのまま受け入れるのは問題が多かった。
本邦でも全国規模でRCTが行われようとした時期もあったが,諸般の事情から実現しなかった。しかし,これをきっかけに術前減黄術の必要性についての見直しが行われるようになり,最近では後ろ向き研究ではあるが,多数の症例を対象とした科学的意義のあるといえる結果が報告されている。これらの報告によると,胆管炎,肝機能不良などの症例を除けば,膵頭十二指腸切除のレベルの手術までは術前減黄術を必要としないとする報告が多い4),5),6),7),8)(レベルIV)9),(レベルVI)。しかし広範肝切除においては,いまだ合併症による死亡率は10%前後と高く,主たる死因として肝不全があげられる状況にあることより10)(レベルIV),現時点では特に高度黄疸症例に広範肝切除を予定した場合には術前減黄術を行うことが推奨されるが,その適応基準に関しては現在のところ明確なエビデンスがない。


引用文献
1) Hatfield AR, Tobias R, Terblanche J, Girdwood AH, Fataar S, Harries-Jones R, et al. Preoperative external biliary drainage in obstructive jaundice. A prospective controlled clinical trial. Lancet. 1982;2(8304):896-9.
2) McPherson GAD, Benjamin IS, Hodgson HJF, Bowley NB, Allison DJ, Blumgart LH. Preoperative percutaneous biliary drainage: The results of a controlled trial. Br J Surg. 1984;71:371-5.
3) Pitt HA, Gomes AS, Lois JF, Mann LL, Deutsch LS, Longmire WP Jr. Does preoperative percutaneous biliary drainage reduce risk or increase hospital cost? Ann Surg. 1985;201:545-52.
4) Povosky SP, Karpeh MS, Conlon KC, Blumbart LH, Brennan MF. Association of preoperative biliary drainage with postoperative outcome following pancreatoduodenestomy. Ann Surg. 1999;230:131-42.
5) Sewnath ME, Birjmohun RS, Rauws EA, Huibregtse K, Obertop H, Gouma DJ. The effect of preoperative biliary drainage on postoperative complications after pancreatoduodenectomy. J Am Coll Surg. 2001;192:726-34.
6) Martignoni ME, Wagner M, Krahenbuhl L, Redaelli CA, Friesss H, Buchler MW. Effect of preoperative biliary drainage on surgical outcome after pancreatoduodenectomy. Am J Surg. 2001;181:52-9.
7) Pisters PW, Hudec WA, Hess KR, Lee JE, Vauthey JN, Lahoti S, et al. Effect of preoperative biliary decompression on pancreatoduodenectomy-Associated morbidity in 300 consective patients. Ann Surg. 2001;234:47-55.
8) 三浦修,羽生富士夫,今泉俊秀,中村光司,吉川達也,中迫利明,他.術前減黄処置の効罪.胆と膵.1989;10:561-7.
9) Takada T. Is preoperative biliary drainage necessary according to evidence-based medicine? J Hepatobiliary Pancreat Surg. 2001;8:58-64.
10) Nagino M, Kamiya J, Uesaka K, Sano T, Yamamoto H, Hayakawa N, et al. Complications of Hilar Cholangiocarcinoma. World J Surg. 2001;25:1277-83.


【参照】
IV:診断 CQ-7 胆管癌診断のセカンドステップは? 2)MRCP,ERCP,PTC
V:術前胆道ドレナージ CQ-11 術前胆道ドレナージとしては何が適切か?


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