ガイドライン

(旧版)エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン[第1版]

書誌情報
IV:診断

 
CQ-9 乳頭部癌診断のセカンドステップは?

乳頭部腫瘤に対し,組織生検を行う。(推奨度B
遠隔転移やリンパ節転移の診断にCT,MRI等を行う。(推奨度B
膵や十二指腸浸潤の診断にEUSやIDUSの有用性が期待できる可能性がある。(推奨度C1


乳頭部癌は切除率が高く,局所進展により非切除1),2),3)(レベルIV)となることは少ない。腫瘍の肉眼型(内視鏡像)(図19〜21)から潰瘍型は進行癌が多く4),5)縮小手術の対象とならないため,切除可否のみの診断でよい。肝転移などの遠隔転移の診断はUS,CT,MRIなどで行われている。最近のMDCT6),7)(レベルIV)では3-D画像を作成できるので,腫瘤と胆管や血管などの位置関係(浸潤の有無)を診断できる。
乳頭部癌は黄疸,発熱,腹痛などの症状が出現するが,症状なしに内視鏡検査や検診の超音波検査で乳頭部腫瘍が疑われ,精査されることもある。腫瘤型診断のセカンドステップは,癌か否かの診断である。腫瘤型の生検材料で,腺腫と診断しても切除標本では一部に癌が存在する腺腫内癌8)も珍しくないため,腺腫も切除対象となる(レベルIV)。生検は,乳頭部切除などの縮小手術,あるいは内視鏡的乳頭切除術を行うための一助となる。内視鏡的乳頭切除術9)が行われた腫瘍の多くは腺腫であるが,腺腫内癌例の報告もあるが少数例での検討である。進行癌の縮小手術では予後は望めない(レベルIV)。
局所進展度診断について,術前と術後のstageを比較した報告は多数みられる。US,CTでは腫瘍描出が困難であり,EUSあるいはIDUSが腫瘍を描出する方法であることは一致10),11),12),13)(レベルII)している。EUSは膵への浸潤の判定にすぐれているが組織学的膵臓浸潤panc 1aは判定できていない。また,組織学的十二指腸浸潤du1も判定が困難であるとの報告が多い(表1)。IDUSは膵管あるいは胆管内への進展の診断,膵浸潤,十二指腸浸潤の診断に優れているが80〜90%の正診率である。しかし,EUSやIDUSを施行している施設は少なく今後の普及が待たれる。


図19 乳頭部癌の肉眼形
図19 乳頭部癌の肉眼形
(日本胆道外科研究会編,胆道癌取扱い規約第5版,金原出版,東京,2003年より引用)


図20 乳頭部癌の「潰瘍」の概念と,潰瘍腫瘤型,潰瘍型について
図20 乳頭部癌の「潰瘍」の概念と,潰瘍腫瘤型,潰瘍型について
(i)は潰瘍とし,(ii)は潰瘍としない。(iii)のごとく周辺が盛り上がっていても正常粘膜が潰瘍縁までほぼ追えるものは潰瘍型とし,(iv)のごとく,潰瘍縁を越えて癌浸潤がみられるものは潰瘍腫瘤型とする。
(日本胆道外科研究会編,胆道癌取扱い規約第5版,金原出版,東京,2003年より引用)


表1 乳頭部癌の組織学的深達度
(日本胆道外科研究会編,胆道癌取扱い規約第5版,金原出版,東京,2003年より引用)
  1.組織学的膵臓浸潤  
  pPanc0:癌浸潤がOddi筋内にとどまるか,十二指腸壁内にとどまるもの  
  pPanc1  
  pPanc1a:癌浸潤がOddi筋および十二指腸壁を越えるが膵実質に達していないもの  
  pPanc1b:癌浸潤が膵実質に達するが5mm未満のもの  
  pPanc2:癌浸潤が膵実質に達し,5mmから20mmにあるもの  
  pPanc3:癌浸潤が膵実質に達し,20mm以上に及ぶもの  
     
  2.組織学的十二指腸浸潤  
  pDu0:癌浸潤がOddi筋内にとどまるもの  
  pDu1:癌浸潤がOddi筋を越えるが,十二指腸固有筋層に達していないもの  
  pDu2:癌浸潤が十二指腸固有筋層に達するもの  
  pDu3:癌浸潤が十二指腸漿膜に達するか,それを越えるもの  
註:pDu0については粘膜内のものをpDu0α,Oddi筋までのものをpDu0βとする。pDu1については,癌の浸潤が大十二指腸乳頭(Ad)にとどまるものをpDu1α,それを越えたものをpDu1βとする。


図21
a.非露出腫瘤型,b.露出腫瘤型
a.非露出腫瘤型 b.露出腫瘤型
c.腫瘤潰瘍型(腫瘤優勢型),d.腫瘤潰瘍型(潰瘍優勢型)
c.腫瘤潰瘍型(腫瘤優勢型) d.腫瘤潰瘍型(潰瘍優勢型)
e.潰瘍型,f.特殊型(肉眼所見正常型)
e.潰瘍型 f.特殊型(肉眼所見正常型)
g.特殊型(ポリープ型)
g.特殊型(ポリープ型)  
(日本胆道外科研究会編,胆道癌取扱い規約第5版,金原出版,東京,2003年より引用)


引用文献
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