ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第7章 待機療法

 
CQ5  臨床病期およびGleasonスコア別にみたPSA監視療法の位置づけは?

推奨グレード B
根治療法を二次治療として考える際のPSA監視療法においては臨床病期,Gleasonスコアおよび年齢の因子を十分に考慮に入れる必要がある。


1.T1aN0M0
(1)T1aN0M0,Gleasonスコア≦6
T1aの癌の多くが高分化型で前立腺に限局しており,大半がPSA監視療法以外に特に治療を必要としない1)(III)グレードをどこで区分するか難しいところであるが,近年の根治療法を二次治療としたいくつかの報告ではGleasonスコア6以下をPSA監視療法の対象として考えていることからGleasonスコア6以下を目安とした。しかし,このような集団においても患者の年齢が低くなると(50〜60歳)期待生存期間が長くなるため,治療を検討する必要がある2)(III)
(2)T1aN0M0,Gleasonスコア≧7
T1aであっても腫瘍の悪性度が高い場合には疾患特異的生存率は有意に悪くなるためより慎重な対応が必要となる。PSA監視療法は選択肢の一つであるが患者の年齢が期待余命で15年以上ある場合には根治療法を考慮してもよい。

2.T1b-2N0M0
(1)T1b-2N0M0,Gleasonスコア≦6
このカテゴリーではPSA監視療法は十分選択肢に入りうる。期待余命が10〜15年以上望める場合には二次治療として根治療法(前立腺全摘除術,放射線療法)を選ぶ傾向にある。PSA監視療法の症例の選択にあたっては臨床病期だけでなくPSA値や生検所見も考慮に入れるべきである。期待余命が10年以下の場合には二次治療として内分泌療法や放射線療法が選ばれる。
(2)T1b-2N0M0,Gleasonスコア≧7
50〜79歳の前立腺癌59,876名を対象とした大規模なstudyによるとグレード3(Gleasonスコア8-10)の限局性前立腺癌の10年疾患特異的生存率はそれぞれ,前立腺全摘除術:67%,放射線外照射:53%,保存的療法:45%であり,保存的療法では予後が不良である3)(III)。ここでの保存的療法とは手術や放射線療法を受けなかったすべての患者を含んでいるため,この結果を二次治療として根治療法を前提にしたPSA監視療法の適応に結びつけることはできない。しかしながら分化度の低い前立腺癌の予後が不良なことは明らかであるためGleasonスコア8以上の限局性前立腺癌をPSA監視療法の適当としている文献はほとんどない。
この場合最も頻度の高いGleasonスコア7をどう扱うかは議論の分かれるところである。いずれにせよGleasonスコア8以上では十分な生存を見込めないことは確かであり期待余命が10〜15年以上望める場合には根治療法を考慮した方がよい。ただし低分化型局所前立腺癌において根治療法が待機遅延内分泌療法に比べ生存率に関し有意に良好であることを示した報告はない。


 参考文献
1) Tombal B, De Visccher L, Cosyns JP, et al. Assessing the risk of unsuspected prostate cancer in patients with benign prostatic hypertrophy:a 13-year retrospective study of the incidence and natural history of T1a-T1b prostate cancers. BJU Int. 1999;84(9):1015-20.
2) Epstein JI, Paull G, Eggleston JC, et al. Prognosis of untreated stage A1 prostatic carcinoma:a study of 94 cases with extended followup. J Urol. 1986;136(4):837-9.
3) Lu-Yao GL, Yao SL. Population-based study of long-term survival in patients with clinically localized prostate cancer. Lancet. 1997;349(9056):906-10.

 

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