ガイドライン

(旧版)前立腺癌診療ガイドライン 2006年版

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第5章 放射線療法

 
G.根治的放射線療法後の生化学的再発の定義
CQ2  〔照射後の生検〕照射後に生検を行う意味はあるのか? また判定方法,検査時期についてはどのようにすべきか?

推奨グレード B
治療効果の判定や至適線量の決定において治療後の前立腺再生検および組織所見の果たす役割は大きいといえるかもしれないが,その手法や時期についてのコンセンサスはない。

 背 景
限局性前立腺癌の根治療法としては,通常手術と放射線療法があげられる。ともに治療後,再発の指標としてPSAを用いるものの,実際にどの時点で再発とするかについての定説はない。放射線療法は前立腺を体内に残した上での治療であり,その治療効果の判定や至適線量の決定において,決め手となるパラメーターの確立は大変重要な意味を持つ。その判断の一つとして治療後の前立腺再生検の役割は大きいといえるかもしれないが,その手法や時期についてもコンセンサスはない。また,前立腺の照射後の生検組織では,癌の再発か否かの判断に苦慮する所見を呈するものも少なくない。

 解 説
Randomized Controlled Trial(RCT)として,M. D. Anderson Cancer Center(MDACC)で実施された研究がある1)(II)。T1-T3の前立腺癌に対する根治的外照射後2年の時点で臨床的にも生化学的にも再発なく生存していた245人中,生検を受けた168人を対象とした。2年時の生検陽性群vs.陰性群において,5年非再発生存率は60%vs84%(p=0.0002)と有意差を認めた。線量(70Gyと78GyのRCT)による非再発生存率の差は有意でなく,PSA nadirと2年時生検陽性率に相関は認められなかった。非再発生存の予後因子としては,2年時生検結果と治療前PSA値であったとしている。以上より2年時生検の陽性率は投与線量によって影響されず,強い予後因子ではあるものの早期のend pointとしては精度が低いと結論された。
Coxらは,限局性前立腺癌の治療における放射線治療後の再生検の役割を検討した2)(IV)。その結果,照射後少なくとも2.5年経ってからの前立腺再生検の検討では,陰性率は,T1,T2で62-80%であった。しかし,再生検の情報は癌根治の予測因子として有力なものとは判断されなかったとしている。したがって,系統的前立腺再生検は,癌の存在を確認することが重要な場合を除いて,通常の前立腺癌患者フォローには不要であると結論した。さらに,照射後2年以内の再生検は無意味と述べている。
Smathersらは,密封小線源永久挿入治療後,一時的なPSA上昇時に生検した4症例について報告している3)(IV)。4症例中3症例は生検にて陽性であったが,経過観察を行ったところPSAは下降したことより,密封小線源永久挿入治療後のPSA上昇時に生検し陽性所見を認めても必ずしも救済療法が必要であるわけではないと結論した。これは,密封小線源永久挿入治療の治療後にみられるbounce現象がみられた際に大変参考になる所見である。今後,さらに大規模な臨床研究が望まれる分野である。


 参考文献
1) Pollack A, Zagars GK, Antolak JA, et al. Prostate biopsy status and PSA nadir level as early surrogates for treatment failure:analysis of a prostate cancer randomized radiation dose escalation trial. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2002;54(3):677-85.
2) Cox JD, Gallagher MJ, Hammond EH, et al. Consensus statements on radiation therapy of prostate cancer:guidelines for prostate re-biopsy after radiation and for radiation therapy with rising prostate-specific antigen levels after radical prostatectomy. American Society for Therapeutic Radiology. J Clin Oncol. 1999;17(4):1155.
3) Smathers S, Wallner K, Sprouse J, et al. Temporary PSA rises and repeat prostate biopsies after brachytherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;50(5):1207-11.

 

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